第4話

また後日には、王宮内を王女が歩いているところに、世子に出くわす。


世子の方が先に気付き、王女に声をかけてきた。


「姉上!」


王女も世子に気付き近付こうとしたが、王女より後ろにいたはずのタンが王女の前に出て防御したのだ。


「ちょっと、タン!?一体何してるの?」


「王女様をお守りしております」


タンは、世子の顔を見つめながらそう言った。


「コ武官!邪魔をするでない!」


「申し訳ございません、世子様。王女様をお守りするのが、私の役目なので……」


「私は王女様の弟だぞ!?そこをどくのだ!」


世子に付き従う武官も、警戒して構える。


するとそこで、王女がタンに声をかける。


「タン、そこをどきなさい」


王女の命令に、タンは躊躇いながらも従った。


王女に忠実なタンは、王女の後ろの立ち位置へと戻ったのだ。


その後、楽しそうに話す姉と弟を、タンが不服そうな顔で眺めていたのを、二人は知らない。


王女の居室に戻ると、ユ尚宮が不在だったこともあり、王女はタンに聞いてみた。


「ねぇ、タン。なぜ世子様と会う時に邪魔をするの?」


「それは……王様以外、男は私の敵だからです」


「何言ってるの。世子様はあなたの敵じゃないわ。私の血を分けた弟なのよ?敵視なんてしないで」


王女に忠実なタンは、異を唱えることなく「承知しました」と言って引き下がる。


王女としては、タンが世子を前にしてあのような態度を取る本当の理由が分からない。


最近の彼は、特に変だと感じる王女だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る