5.5【話努力する意味って?】

 互いの剣と剣が混じりあい、辺りには火花が飛び散る。やはり彼女は私が想像している以上に実力を有している。私の攻撃は易々と防がれ、受け流されてしまう。


つまるところ私の方が劣勢だ。そして何回も剣と剣がぶつかるため私の剣は削られてしまう。このままでは剣が折れてしまい、彼女に命を刈り取られる。そうする訳にはいかんと私は魔法を唱えた。


(hardening(硬化)flame(炎))

 

これは付与魔法、エンチャントだ。エンチャント魔法は道具や防具のみに付与出来る。付与した私の剣は鉄よりも硬い鋼になり、炎を纏った魔剣へとなった。

 

「ふん、あなたやりますね。今まで私と剣技で対等に交えたのはあなたくらいですわ。アリエス教授」

 

「それはどうも。あなたの剣技もかなりレベル高いですよ。長年培った努力だと分かります。迷わない剣筋、俊敏な動き。そして高い身体能力。さすが勇者の娘と言われただけありますね」

 

私はそう言った。その間にも彼女は隙を狙って私の懐に入り攻撃を繰り出してくる。その攻撃を受けまいと、私は攻撃地点を予測して剣で防いでいる。何度も何度も辺りには金属と金属が擦れ合う音が響く。彼女は1度後退した。私はその意図が掴めなく、あっけにとられてしまった。が、彼女はその隙を見逃さず、魔法を唱えた。

「ファイヤーボール!」

 

 そう言った瞬間1メートルくらいの炎の球体が現れ、私めがけて放ってきた。

(彼女の狙いは視線がファイヤボールにいき、剣で切ってる間にできる隙だ。その間に背後に周り切りつける)

 私はそれを加味して冷静にファイヤーボールの炎系魔法と対となる水系魔法を唱えた。

(ウォーターボール)

 

 彼女と同じ1メートルくらいの水の球体を、炎の球体めがけて放った。直後、炎と水の球体はぶつかり、私の目の前には水蒸気が蔓延しており、彼女の姿はみえない。マナで気配を探るに、彼女は俊敏な動きで私の背後へと向かっている。予想通りの動きをしていた。後ろを振り返ると大きく上から剣を振りかざそうとしている彼女がいる。その攻撃は甘く、勝ちを確信しているかのような動きだったため、私はその甘い攻撃を左側に避けて回避した。避けた瞬間に彼女と目があった気がする。そして思いっきり振った彼女の剣は地面にささった。こうして彼女は攻撃をやめ甲高い声で笑った。

 

「ふ、ふはは、ふははは!まさかあのフェイントに引っ掛からないとは。さすが星座契約者のアリエス教授。あなたの勝ちですよ!」

 

 そういい私が勝ってしまった。私は何が起きたかわからず戸惑っていた。が、彼女が続けていった。

 

「あなたは自ら星座契約者とおっしゃいましたよね?」

「はい、星座と契約してるのは本当なので」


「正直私は信じられませんでした。今まで何人のもの人が星座契約者と名乗っているのを見てきたので。先ほど数時間前の授業で体内のマナを除いた際に水晶玉が光らないのでマナがない人かと思いました。

 その時の私は呆れてものも言えませんでした。しかしその後教授は契約星座を顕現しましたね?あれはトリックを使ったと疑い信じきれず今回襲いました。」

 

 彼女はにこやかに笑いながら優しく言った。そして立て続けに。

 

「教授、あなたは本当に星座契約者なんだと剣をかわして確信しました。無詠唱、即席の魔法、鋭い剣筋。どれをとってもここにいる教授たちよりも数等は上をいっています」

 

 私は彼女の発言に安堵した。この学園で唯一星座契約者ということを信じてくれたのだから。しかしながら心の自分は泣いている。ここにくるまでさまざまな扱いを受けてきたのだから。

 

 まだ始まって3日だというのに精神はボロボロだ。やはり認めてくれる存在がいるというのは今までの努力した甲斐があったと実感させてくれる。私は泣きそうになるのを抑えながら、格好つけて

 

「それはどうも。あなたもわりかし強かったよ。その剣筋はかなりの努力を積んだとわかる重い攻撃だった。魔法は私の方が上だけれども剣技はあなたの方が何等も上だわ」


 と言った。彼女は抑えきれないのか私のところに来て突然泣き始めてしまった。私はそんな彼女を慰めるため、背中をさすりながら。

「頑張ったね、えらいよ」

っと私はポツリポツリと数適の涙を流しながらその言葉を送るのだった。




私は天才としてこの世に生まれてきた。父は賢者のアリアフォルス。母は有名な勇者アリア・フォルティスだった。そんな2人の血が混ざっているわたしは、剣技、魔法どちらにも優れた才能を発揮した。

 

私が5歳の時、星と契約することができた。私はそれが嬉しくさらに魔法を学んだ。

 

「お父様!見てください!出来ました」

 私は初めて使う魔法を興奮しながらお父様に披露した。が、お父様の反応は冷たいものだった。

 

「ふん、俺の娘なんだからできてあたりまえだ」

 幼少期の私はさっきまで興奮したいたが、お父様の反応は冷たく、半泣きになってしまった。しかし幼き私はめげず父親に褒めてもらおうとさらに術式が難しい魔法をお父様の愛情を貰うために作戦を変えた。所詮は子供だ。何日もかけて術式を理解しようと研究した。そして気が付いたら1か月の月日が経過した。私は研究した成果を父親に見

せるため父親の元へ向かった。

 

 「お父様!今度はこの間よりも難しいのを覚えて来ました!1ヶ月も掛かったんです!」

 私は今度こそ褒められると思い、自信満々に言った。しかしお父様はまたも冷たいものだった。

 

 「妹をみてみろ。こんな魔法の唱えるのに2日もかからなかったぞ。もっと努力しろ。しかもこんな魔法に1ヶ月もかかっただって?やはりお前は出来損ないだ」

 

 父親は私の努力を否定し妹と比較してきた。今までの努力はなんだったんだろうと思えてきた。実は私には2つ下の妹がいる。そんな妹は本物の天才だ。3歳の時に、星と契約し、魔法は術式を1.2回見ただけで詠唱することが、剣技も見ただけでほぼ完璧に真似できる。


 親はそんな天才の妹のことを溺愛し、私と比較してくる。そんな天才な妹がいるからだろうか、親は私のことを冷遇した。そんなの普段見ていたからなのか、歳をとるにつれ、妹は私のことをよく見下したりしてきた。

 

 「こんな出来損ないが私の姉だなんて……私恥ずかしいです。本当我が家の恥さらしですわ」

 そのことを言われ続けた私は努力する意味を見失ってしまった。いくら努力しても天才には追い付くことができと実感させられてしまったからだ。私は偽物の天才として周りを見下すようになった。そうすることで優越感に浸ることができ、自分を天才として認めさせることが出来る。


しかしどうしても物足りなかった。天才だからできて当たり前。天才ならできるよね。そんな圧力が欲しいんじゃなかった。頑張ったね、偉いね。など励ましてくれる存在が欲しかった。そして私はこの学園に入学した。最初は期待と希望で胸がいっぱいだった。

 

 しかし実態を見てみると、とても腐っているものだ。お金を積んで入学してくるもの、コネで入学してくるもの、そんなのが4割をしめていた。もちろんそんなもの達は魔法などろくに使えやしない。そんな中で私は天才として崇められるようになった。「さすが天才!」などと言われる学校生活は退屈なものだった。


教授たちなら認めてくれるだろうと思い、襲ったりした。だが教授たちは私の才能を恐怖してか呪いの子まで呼ぶようになった。何しても天才で済まされる。努力してもを見てくれる人なんていなかった。


 もう生きる希望がなくなってしまい明日くらいには死のうと考えていた。が、アリエス教授はちがった。あの人なら私を見てくれるかもしれない。そんな薄い一筋の光を与えてくれると思った。そして私はアリエス教授を襲った。こんくらいの攻撃で死ぬことはないだろうと思い。



 

 そして私の剣と教授の剣が交わる。あたりには火花が飛びちった。剣は交わる。あたりには金属がぶつかる音が響いた。

 

 (水晶で見た時はマナがなかったが、目の前で見たらマナはある。この人、人の目でしか測れないようにしているのかもしれない。目的がわからない。さっきも私を見つけるときにマナを使って気配を探っていた。底がしれない。)

 

 私は魔法や剣技を巧みに使い、教授を倒そうと必死になった。今のところ私が優勢だ。教授の攻撃は爪が甘く受け流しやすい。私はこのままだと勝てると踏んでいた。更に教授の剣にはヒビが入っており後数回剣と交えたら折れてもおかしくはない。このままなら勝てる!。そう思っていたが教授は魔法を唱えていた

 

(無詠唱で二つ同時に唱えるだと?しかもエンチャント魔法)

 教授は剣技もそれなりに上手いが私ほどではない。それをわかったのかその差を魔法で埋めてきた。私は最初未熟者とか思っていたが、教授の実力を認めるしかない。

 

「ふん、あなたやりますね。今まで私と剣技で対等に交えたのはあなたくらいですわ。アリエス教授」

「それはどうも。あなたの剣技もかなりレベル高いですよ。長年培った努力だと分かります。迷わない剣筋、俊敏な動き。そして高い身体能力。さすが勇者の娘と言われただけありますね」


 私はその言葉に惑わされずに、言っている途中にも懐に入り込んで攻撃をする。しかし、その攻撃は難なく防がらてしまった。

 (このままでは私の体力がなくなってしまう)

 

 埒が開かないため、わたしは一つの作戦を思いついた。それはファイヤボールを教授目掛けてはなつ。そうすると教授は確実にファイヤボールを剣で切るか、対となる水系を唱えるはずなのでその背中をねらう。そんな作戦だ。

わたしは一瞬で後退し、瞬時に魔法を唱えた

「ファイヤーボール!」

 

その炎の球体は教授目掛けて飛んで行こうとした。教授は水系魔法のウォーターボールを放ち、炎の球体を相殺しようとしていた。わたしは自分の作戦がうまくいったとおもい、ファイヤーボールとウォーターボールがぶつかった瞬間、俊敏な動きで教授の背中をし、剣を大きく上から振った。

 

(教授、わたしの勝ちです)

そんなことを心の中で言ったが、教授はすぐさま振り返り、難なく右側に避けて攻撃を回避した。私は思わず笑ってしまい負けを認めた。

 

「ふ、ふはは、ふははは!まさかあのフェイントに引っ掛からないとは。さすが星座契約者のアリエス教授。あなたの勝ちですよ!」

 

 教授は困惑した顔をしていたが私は構わず言った。

「あなたは自ら星座契約者とおっしゃいましたよね?」

「はい、星座と契約してるのは本当なので」

 

「教授、あなたは本当に星座契約者なんだと剣をかわして確信しました。無詠唱、即時魔法、鋭い剣筋。エンチャント魔法どれをとってもここにいる教授たちよりも数等も上をいっています」

 

 私は教授に思っていることを話した。

「正直最初耳にした時は信じられませんでした。今まで何人のもの人が星座契約者と名乗っているのを見てきたので。それに先ほど数時間前の授業で体内のマナを除いた際に水晶玉が光らないのでマナがない人かと思いました。その時の私は呆れてものも言えませんでした。しかしその後教授は契約星座を顕現しましたね?それでもあれはトリックを使ったとわたしの中では信じきれず今回襲いました。」

 

「教授、あなたは本当に星座契約者なんだと剣をかわして確信しました。無詠唱、即時魔法、鋭い剣筋。エンチャント魔法どれをとってもここにいる教授たちよりも数等も上をいっています」

 

 それを聞いた教授はゆっくり、微笑みながら優しい口調で。

「それはどうも。あなたもわりかし強かったよ。その剣筋はかなりの努力を積んだとわかる重い攻撃だった。魔法は私の方が上だけれども剣技はあなたの方が何等も上だわ」

 

っと。教授のまんまるい月な光が流れ込んできており、とても綺麗だった。教授はわたしの中の一等星みたく輝いている。その言葉にわたしは我慢できず、気がつけば目から一滴の滴が落ちていた。その後は教授の元で泣いていた。


 そんなわたしを察したのか教授は背中をさすってくれ、励ましの言葉をくれた。

 

「頑張ったね、偉いよ」

 っと。わたしはこれ以上ないくらい泣いた。いつも天才、天才と済まされてきたが、わたしの目に狂いはなくアリエス教授はわたしの努力を認めてくれた。

 わたしはこれ以降、一生アリエス教授について行くことを決意したのだった。

 

 

 

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