第10話

僕がのびている偽者君の方を見る。

すると、偽者君はのびたそのままの格好のまま真っ直ぐ起き上がった。


「ケケケケケ!」


奇妙な笑い声を上げながら帽子と仮面を投げ捨てると同時に姿を変える。

その姿は両腕には巨大で鋭いカマを備えるカマキリ人間へと変わった。


「未確認生命体!?」


義姉さんは驚きの声ー上げ、会場は悲鳴が飛び交い逃げる人々でパニックになる。


本当にこの世界から離れてる間に面白い事になってる。

異世界で見たホムンクルスとかなり似ているな。

でもこっちはかなり機械寄りだね。


「確かお前達はトロイノと言うらしいな」

「ケケケ。

まさかあのナイトメアに知って頂けるとはな。

てっきり死んだと思っていたぜ」

「死んださ。

だが消えてはいなかった。

ただそれだけだ」

「今度こそ消えてしまえ。

オレが変わりにナイトメアになってやる」


偽者君が迫る。

僕は魔力で生成した刀で両腕の鎌を順番に弾き、ガラ空きになった体を2回切り付ける。


特撮物みたいに火花が散るのが凄く新鮮で楽しい。


再び迫る鎌も弾いてまた切り付ける。

それでも諦めず切り付けてくる鎌を回転して避けて背中合わせになる。


振り向きざまに振られた鎌は、魔力で生成したジャベリンを床に真っ直ぐ突き刺して妨げる。

動きが止まった所その背中を縦一文字に真っ直ぐに切った。


背中から火花を散らしながら足取り怪しく離れていく偽者君。

結構ダメージは入っているみたいだね。


「見たまえ田中君!

これはいい画が撮れるぞ!

一瞬たりとも逃さず撮るんだ!」

「もちろんですよ監督!

こんなのをノンフィクションで撮れるなんて一生に一度あるか無いかです!」


人々が逃げ惑う中、監督とカメラマンはこっちを凝視している。


こいつらプロ魂通り越してイカれてやがるな。

僕はそう言うの好きだよ。


「どうした偽りの悪夢よ。

大した事無いでは無いか」

「ケケケ。

流石は悪のカリスマ、ナイトメア。

本物は違うねー。

あのお方がお前を警戒して計画を遅らせただけの事はある。

だが!」


偽者君はこっちを向いて両手を広げる。


「ここからが本当のたた――」


僕はリボルバーを生成して撃ち込む。


「な!?

お前!?」


もう一発撃つ。


「これからオレ――」


もう一発。


「ちょっと待て!

これから――」


もう一発。


「おい!

オレは結構需要な事を言っ――」


興味無いからもう一発。


「ちょっ――」


一発。


「待っ――」


一発。


「おい!?」


一発。


「お約束って――」


一発。


「辞め――」


一発。


「もう――」


止めに魔力を込めた一発。

それが直撃すると、偽者君はそのままバタンと倒れて爆発した。


こう言う所まで特撮っぽいね。


「偽りの悪夢は終わった。

これから本当の悪夢を見る事になる」


僕はガラスケースをぶち破って、中のブローチを掴む。


「悪夢はいつも忘れた頃に見るものだ。

だが、それは今では無い。

これは偽りの悪夢を見せたお詫びだ」


僕はブローチをパーティー会場の天井の真ん中目がえて投げる。

それにリボルバーを向けた。


「グッド・ナイト・今宵は良い夢を」


リボルバーから発射された魔力弾はブローチを粉々に砕いた。

一緒に弾けた魔力弾が会場内にオーロラを出す。


その神秘的な空間にみんな目を奪われていた。


その隙に僕は会場から逃げ出した。

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