第6話

それから八枝の信頼を得つつ仕事をこなして、遂にパーティーの日がやって来た。


この期間にしっかり準備もして抜かりは無い。

あとはこのいろんな悪意が交差するパーティーにどのタイミングで干渉するかだ。


僕は八枝のマネージャーとして堂々と会場に入る。


豪勢な料理が並んだ立食パーティーだ。

つまりは食べ放題。

やったね。


僕は開始早々に料理を全種コンプリートした。

次は美味しかった物だけをループだな。


「これとこれとこれは八枝が好きそうなやつね」


僕は八枝が好きそうな物を取分けてあげた。


「私の好みを把握してるのね」

「マネージャーとして当然だね」

「もっと把握しとく事あると思うけど」

「大丈夫。

ちゃんと相方は探してるよ」

「だから私は漫才師目指して無いって!」

「ツッコミでピン目指すの?」

「女優って言ってるでしょうが!」

「おー」

「拍手すな!」


八枝のツッコミに笑いが起こる。


「奏多君の所為で笑われたじゃない」

「本職だからね」

「だから芸人じゃないいって言ってるでしょうが!」

「おー」

「いちいち拍手すな!」


更なる笑いが起きる。

やっぱり芸人の方が向いてると思うな。


「お久しぶりです尾崎さん。

元気そうですね」


この声は。


僕は声の方を向いた。


やっぱり義姉さんだ。

今日も美人で可愛い。

そして赤いドレスが凄く似合ってる。


「由理さん。

お久しぶりです」


あれ?

八枝って義姉さんと知り合いだったの?


「由理さん。

聞いてくださいよ。

彼は夢野 奏多君。

私の新しいマネージャーなんですけど。

夢路君に似てるんですよ」

「夢路に?」


義姉さんが僕の顔を覗き込む。


超美人で超可愛い。

すっごくいい匂いする。

ドキドキしちゃう。


僕をじっーと見ていた義姉さんが急に笑顔に

なった。


その笑顔に僕のハートは鷲掴みだよ。


「確かに夢路に雰囲気似てるわ」

「雰囲気だけじゃ無いんですよ」


そこから八枝と義姉さんが夢路って奴の話題で持ちきり。

話を聞くに2人は、今回の映画の取材で知り合ったらしい。


どうやら八枝の演じてる刑事のモデルは義姉さんらしい。


そんな事よりも、義姉さんの楽しそうに会話する姿に嫉妬しちゃう。

夢路って奴め。

義姉さんの話題になるなんてズルイぞ。


……ん?

夢路って僕じゃん。

って事は八枝も夢路だった時の僕と会った事あるって事?


いつだろう?

う〜ん……

……

……

……

……

……

……


「どうしたの奏多君?

そんなコロコロ考えるポーズ変えて」

「クスッ。

確かに夢路にそっくりかも」


あっ、クスッと笑う義妹さん可愛い。

その可愛さにどうでも良くなっちゃた。



義姉さんはなんかイケメンに呼ばれたから別れた。

どうやらあのイケメンも警察官みたいだ。

警察官はなんとも言えない独特の雰囲気があるから分かるんだ。


それにしても義姉さん綺麗だったな〜

もう目的も果たしたし帰ろうかな?


「監督。

お世話になりました」


八枝が二人組のおじさんに挨拶していた。


「これは尾崎君。

君はNG無しだったから撮影が順調で助かったよ。

また私の作品に出てもらえるか?」

「是非お願いします」

「頼むよ。

今回の映画では君の演技力を活かし切れて無いからね。

リベンジさせて欲しい」

「監督は今回の出来に満足して無いんですか?」

「出来る事は全部出し切ったつもりさ。

だが、どうしてもナイトメアの描写が納得出来なくてな」


そうだ。

偽者君だ。

義姉さんのドレス姿が素敵過ぎて忘れてたよ。

危ない危ない。


ふと会場の電気が消えて、前方のステージだけ点灯する。


ステージ上にはガラスケースに入ったブローチとおっさんが出て来た。


「今日はお忙しい中参加していただきありがとうございます。

私は主催者の猿金です」


そうおっさんが挨拶を始めた。

それが長い長い。


みんなは注目してるけど、僕は興味無いから料理を堪能する事にした。


しばらくしておっさんがはけるとまたさっきまでの様な喧騒が帰ってくる。

それと同時に追加の料理が運ばれて来た。


やったー。

僕はまだまだ食べれるよ。


その後、変わる変わるステージに人が上がって行く。

そんなの無視して僕は料理を頂く。


そして、なんだかんだでデザートが出て来た。

もちろん全種制覇したね。


また八枝の好きそうな物だけ精査して……

あれ?

八枝はどこに行ったんだろう?


いつの間にか八枝の姿が無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る