第11話 男女の友情(大人のキス)はもはや友情を超えていることに気づく

 その夜。


「ちゅーしちゃった。ちゅーしちゃった。ちゅーしちゃった!」


 ベッドの中で悶えるように足をバタつかせる。


「こ、これがキスなのか。気持ち良すぎだよぉ!」


「頭撫でられるのより気持ち良いことあるだなんて思わなかった」


「触れただけのキスだったけど……」


「もっと大人のキス、やっちゃったら私どうなっちゃうんだろ」


「って、駄目駄目! さすがにそれはもっと深い関係にならないと駄目!」


「……あっ、でも私と洋ちゃんって……」


「……付き合ってないんだった」


「ていうか二人は友達であることを証明するために修行していたんだっけ」


「私、忘れてた」


「……そっか……私、洋ちゃんと大人のキスできないんだ」


「いつか……私以外の誰かとしちゃうんだ……」


「……ぐすっ」


 スマホを取り出し、通話モードにする。

 相手はもちろん洋ちゃん。


「……もしもし? 急にごめんね」


「こんな夜中にどうしたのかって? そ、そうだよね。非常識だよね私」


「あの……洋ちゃんの声が急に聴きたくなって……」


「迷惑だったよね」


「えっ? 全然大丈夫?」


「ほんと?」


「……嬉しい」


「優しいなぁ。洋ちゃんは」


「ね、今日さ。その、中々過激な修行しちゃったね」


「まだ唇に温もりが残っているみたい」


「や、やばかったよね、アレ」


「よ、洋ちゃん的には、どうだった?」


「ん、そかそか。ドキドキしたか」


「ちなみに~だよ? キスには……さ。もっと先があるわけじゃない?」


「えっ? 先って何かって? 先は……ほら……先だよ」


「ハードなやつっていうかさ。わかるでしょ!?」


「えっ? 本気で分からないって? わ、私にそれを教えろっていうの!?」


「だ、だから……さ。舌を合わせたり……とか? 口の中を舐めたり……とか?」


「あー! 分かってて言わせたでしょ! 洋ちゃんのエッチ!」


「で、でさ。その先系のキスとか……洋ちゃん興味あったりするのかなーって」


「い、いや、その、今後の修行の方針っていうか? ちょっと興味本位で聞いてみただけだよ!? 他意はないよ!?」


「……あ、そっか。そうだよね。そういうことは恋人がやること……だよね」


「あー、うん。実は私も同じ風に考えていたよ」


「そういうことをしたければ……恋人を作れって話だよね」


「じゃ、じゃあどっちが先に恋人を見つけて大人のキスをするか勝負だな!」


「絶対私が勝つんだからね! いつも負けてばかりの私じゃないよ!」


「……まー、でもさ。んと……引き分けとかもたまには良いと思うんだ」


「引き分けの条件って? そりゃあ……お互いずーっと恋人が見つけられなかったりさ……」


「も、もしくは私達が恋人になった……り?」


「な、なーんてね!!」


「お互い、早く恋人見つけようね」


「……ん。それじゃ……バイバイ」


 通話を切る。


「…………」


「……バカ」


「バカバカ!」


「何が勝負だよ……私のバカ」


「こんなの……私に勝ち目があるわけないじゃん」


「でも負けじゃないもん」


「引き分け狙いなんだもん」


「だから……」


「絶対勝ち逃げしちゃだめなんだからね! バカ洋ちゃん!」

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