第9話 男女の友情(ハグ)の確かめ合いにどっぷりハマる幼馴染
「今日も修行回だよ」
「今日の修行内容は~……えい!」
有紗が正面から抱き着いてきた。
細い腕が俺の背中に巻き付かれる。
「どう? ドキドキする?」
「あっ、確かめちゃえばいいのか?」
「どれどれ? 洋ちゃんの心臓さん元気ですか~?」
俺の胸に耳を当てる有紗。
「うぉう!? め、めちゃめちゃドキドキしてるじゃん!? 心配になるくらいドキドキしてるじゃん!」
「えっ? 私はどうなのかって?」
「んふふ~。洋ちゃんも確かめてみたら~?」
「ん~? どうしたのかな? ほれほれ。心臓はここだぞ~?」
胸の辺りに指をさしてくる。
「洋ちゃんになら別に触られてもいいんだけどな。その一線は超えてこないかぁ。誠実だなぁ洋ちゃん」
「でも全く触れてこないのは寂しいから洋ちゃんも私のこと抱きしめてよ」
「それくらいなら……いいじゃん。ねっ?」
求めるような声に導かれて、俺も有紗の背中に手を回す。
「……いざやられてみると、めちゃくちゃ照れる」
「しょ、しょうがないでしょ! 私だって男の子とギュっとするの初めてなんだから!」
「……ドキドキするけどさ。同じくらい安心する感じがする」
「相手が洋ちゃんなんだからだろうな」
「この安心する場所は有紗ちゃんだけのものだからね」
「……他の女の子をこの場所に招き入れたらドロップキックだからね」
有紗の手が俺の胸からヘソの辺りにまで滑らされる。
「昨日も思ったけど、洋ちゃん、男の子だなぁ。胸とかお腹とか固いんだ」
「ん? くすぐったい? そういえば洋ちゃんもソフトタッチフェチだもんねー。えーい」
胸の辺りを指でグルグルと回しながら触れてくる。
くすぐったくて……そして気持ち良い。
「やられっぱなしでいいのかな~? 骨抜きにされっぱなしだぞ~? どうする~?」
「きゃぁぁっ。お、お腹の辺りを触ってくるのは反則! 触るなら他の場所にしなさい!」
「ほら。胸とかどう~?」
「あはは。冗談だよ。抱き合った状態でナデナデしてほしいな」
「……ありがと。気持ち良いよ」
しばし、この状態のまま時間が過ぎる。
互いの体温に慣れ始めると段々眠気が襲ってきてしまう。
「……ん? 洋ちゃん? 手が止まっちゃったよ?」
「あっ、寝ちゃ……った?」
「むぅ……もっとナデナデして欲しかったのに」
「気持ちよさそうに寝やがってぇ」
「……私はまだドキドキしているのに、一人で落ち着いてズルいよ」
「もっと触れ合っていたいのに」
「やばい……私……ハマっちゃってる……」
「洋ちゃん……」
「もっと……触らせて……」
「綺麗な手。なんで爪こんなに綺麗なんだよぉ。ずるいぞ」
「細い眉毛。あっ、ピクッてなった。眉毛触られるの気持ち良いのかなぁ? 今度触ってね」
「腕、筋肉質だな。もしかしてちょっと鍛えてる?」
「まぶた……鼻……耳……うわ、うわぁ。私、男の子の顔全部触っちゃってるよぉ」
「唇……」
「もっと近くで見せて……」
「触らせて……もらうね」
唇に柔らかな感触が触れる。
「~~~~っ!」
「や、柔らかかった」
「わ、わわ。私、悪い子。寝ている男の子に……男の子に——!」
「き、キスしちゃったよぉぉぉ」
「はわ……はわわ……」
「こ……」
「これで勝ったと思うなよぉぉぉぉぉ!」
ドタドタと走り去る音が聞こえる。
数分後、目覚めた時に有紗の姿はそこにはなかった。
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