第7話 男女の友情(筋肉触れられ)を確かめられていたらおかしな雰囲気になった

「とりあえず脱ぎなさい」


「上だけでいいの! 股間を両手で抑えるな!」


「よーし脱いだね」


「…………」

 

「(普通に考えて命令して男の人を脱がすのって大胆過ぎない!? し、しかも、意外と筋肉質だしコイツ)」


「(平常心平常心)」


「……よし。そのまま後ろを向きなさい」


 有紗の指示通り後ろを向く。半裸のまま。

 やがて、背骨をなぞるような感触が奔った。


「ツーっと。ぬふふ。どう? くすぐったい? ね? 照れた?」


「ま、照れてもやめないんだけどな! これ罰だし!」


「えーい!」


 今度は両手の指が俺の脇腹辺りをなぞってきた。


「雨の日の犬かってくらいブルブル震えたね。くすぐったいんだ~」


「じゃ、次は~」


 有紗が背中から抱き着いてきて俺の腹筋辺りを指でグルグル回す。

 同時に俺の背中に顔を埋めてきた。


「……洋ちゃんの匂い……男の人の匂い……こんなに近くで嗅いじゃった」


「それに……上半身を余すことなく……触っちゃってる」


「洋ちゃんの心臓は……この辺かな?」


「……うん。小気味よいビートを奏でてますな」


「ん? どうしたの? 腕がブルブルしてるけど」


「胸の辺り触られて痙攣しちゃったのか」


「……男の人もここ触られると緊張するんだね」


「じゃ、胸の辺りは触るのは勘弁してあげよう」


「——なーんて! 油断したな!? うりゃうりゃ! ガンガンさわっちゃる! これ罰だってこと忘れてたな?」


「あらら。横に倒れちゃったな。ちょっとダメージ大きすぎたか」


「本当の本当にこれくらいで勘弁してあげよう」


「にゅふふ~。有紗ちゃん完全勝利~!」


「どうかね? 敗北者くん。今のお気持ちをどうぞ!」


「おっ? 急に立ち上がってどしたの?」


「よ、洋ちゃん?」


「ちょ、引っ張るな……って、うわぁ!」


 有紗をベットの上に押し倒し、俺はその上に四つん這いで覆いかぶさった。

 俺が半裸ということもあり、傍からみるとかなり危ない光景だろう。


「よ、よよよよよよ、洋ちゃん!?」


「さ、ささささささ、さすがにこの体勢は……その……」


「そんなに真っすぐ見つめられると……えっ!? えっ!? ど、どうして顔を近づけてくるの!?」


「(ダメダメダメダメ。い、いくらなんでもこの体勢はアウト過ぎる!)」


「(で、でも、に、逃げられそうにない)」


「(か、覚悟を……決めなくちゃ……)」

 

「……んぅ~」


 有紗は目を閉じて唇を尖らせている。

 有紗の唇に……俺はそっと触れた。


「……ぁっ。洋ちゃんの唇って意外と固——ん?」


「…………」


「……(バキッ!)」


 『2本の指』に痛みが奔り、再びその場に蹲る俺。

 有紗は身体全体をプルプル震わせながら、涙目で怒り狂った視線を俺に向けてきた。

 

「洋ちゃんの……洋ちゃんの……」


「馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

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