第3話 男女の友情(唇触り合い)を確かめ合いながら妙案を思いつく

「今日の敗因はさすがに私にありました。ごめんなさい」


「で、でもね、洋ちゃんもちょっと悪いんだよ!? 何あの優しい手つき!? あんな一面があるだなんて知らなかったよ!」


「……まさか女慣れしていないでしょうね?」


「そうだよね。女の子と手を繋いだことなかったんだもんね」


「えへへ。私が一番仲良しな女の子なんだ。私以外に仲良しさんの女子はいないもんねー?」


「お~、どした? 悔しい? 悔しいかね? 悔しかったら仕返ししてきてもいいんだぞ?」


「……えっ? ちょ、な、なんか目が本気じゃない? よ、洋ちゃん?」


 目を尖らせながら近づき、そのまま有紗の頬に触る。


「どひゃあ!? 急にどこ触ってるの!?」


「ぷ、ぷにぷにホッペですってぇ!? ぷにぷにで悪かったな! さ、触るなら先に言ってよ!」


「髪よりも障り心地良いってなに!? その感想はあまり嬉しくないよ!」


 耳に掛かる髪を持ち上げて有紗のホッペに当ててみる。

 その状態で俺は有紗の頬を撫でてみるが……


「髪と頬を一緒に触ってあまり気持ちよくないな、ですってぇ!? 失礼の塊かお前は!」


「もぉ……」


「えっ? どうして触られることを拒否しないのかって?」


「だ、だって……洋ちゃん優しく触ってくれるから……気持ち良いんだもん」


「私ね。洋ちゃんに優しく触られるの……好きみたいだ」


「……」


「……」


「そこで黙るなぁ! ソフトタッチフェチで悪かったね! 洋ちゃんだってやられてみれば分かるよ!」


「この何とも言えない気持ち良さをお前にも分からせてやる!」


 妖艶な笑みを浮かべながら今度は有紗の方から近づいてくる。


「あはは。ビクッてなった! どうだー? ほっぺを優しく触られるの気持ちいいでしょ?」


「こっちも触っちゃえ。つんつん。洋ちゃんの唇やわらかーい」


「とどめは~……これだ! 秘奥義、フェザータッチなでなで!」


「ねっ!? ねっ!? なんかゾクゾクするでしょ!? 気持ちいいでしょ?」


「うふふ。顔真っ赤だ」


「えっ? 私も赤い? ……そうだよ! 自分でも分かってるよ! 真っ赤になって悪いかっ!」


「……ねぇ。そろそろ交代。また触ってよ」


 どうやらターン制なようだ。

 さっき有紗がやったように唇をなぞってみる。


「~~~~っ!!」


 一瞬で茹でダコが完成していた。

 思ったよりも刺激が強かったみたいで涙目になっている。


「(はむ)」


 唇を指でなぞっていると、その指は不意に咥えられた。

 今度は俺の方が一瞬で茹で上がる。

  

「(はむはむ)ど、どうだ~! まいった?」


「(はむはむ)むふふ。勝った」


「ぷは。なんか……なんか……いいな……いいな、こういうの」


「そだ! いいこと考えた!」


「修行だよ! 私達って今まであまり触れあってこなかったじゃない? お互い異性に耐性が無さ過ぎたんだよ!」


「だからこうやって触れ合ってさ……耐性つけちゃお? そうすればみんなの前で照れっ照れっにならないで済むんじゃないかな!?」


「みゅふふ。我ながら最高の名案だよ。待ってろよ、クラスメイト共め~! 次こそは男女の友情が存在することを証明してあげるんだから!」


「何呆れた顔してるの! どうせまた証明できないと思ってるんでしょ!? ていうかお前も修行するんだからね!? 他人事みたいな顔しないの!」


 有紗の名案により今後この部屋で異性の耐性作りを行うことが決定した。

 こうして俺と有紗との“触れ合い修行な”癒しのひとときが始まることになるのだった。

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