第2話 前回の反省を活かし、もう一度クラスメイトの前で男女の友情(頭ナデナデ)を見せつける

 //se:バタンと扉を開け、ドタドタと入ってくる。


「反省会をします!」


「なにが『惜しかったよな』だよ! 全然惜しくないよ! 完全敗北だよ! 全部洋ちゃんのせいだよ!」


「わ、私は照れてなんてないし!? 洋ちゃんと、て、手を、つ、繋いだくらいで動揺したりしないもん!」


 声が震えている。


「えっ? そもそも女子と手を繋いだことなかったの?」


「あっ、だから私相手でもドキドキしちゃったんだ」


「ふぅん。そ、そうなんだ。うん、そっか。そっかそっか」


 なぜか嬉しそうに頬を緩める。


「えい!」


「…………」


「無表情じゃんか!」


「慣れた? 慣れたってなに!?」


「その余裕をさっき教室で見せてほしかったよ!」


 有紗はボソッと『耐性付くの早くない?』となぜかちょっと残念そうに呟く。


「それより! 明日行うリベンジについての作戦なんだけど!」


「『まだやるんだ』みたいな顔しないの!」


「ふふーん。次の作戦はこれだよ! 題して『頭なでなで大作戦』!」


「手つなぎすらできなかった私達にはハードル高いと思っているんでしょ~。それが大丈夫なんだな。有紗ちゃんその辺ちゃんと考えてあるもん」


「洋ちゃんはすぐ顔を真っ赤にさせちゃうから、今回無表情で耐え抜くのは有紗ちゃんにお任せあれ! 今回洋ちゃんは撫でる係をお願いね」


//SE:小さな胸をドンっと叩く有紗。


「……今、小さな胸を叩いても揺れねーなって思わなかった?」


「洋ちゃんは考えていること顔に出過ぎなんだよ! ちっぱいで悪かったな!」







 翌日の放課後。

 俺と有紗は再び教壇の前に並び立つ。


「えー、こほん! 昨日はちょっと調子が悪かっただけなんだから! 今から二人の『友情』を証明するよ!」


 口上するとクラスメイト達は俺たちの前に群がってくる。

 昨日と同様になにか微笑ましいものを見るかのような暖かな目だった。


「親友男女はこんなことをやっても照れたりなんかしないんだから! さっ、洋ちゃん! やって頂戴!」


 指示通り、俺は有紗の頭に手を置いた。

 そのままゆっくりと左右に動かす。


「~~~~っっ!」


 目を見開いて声にならない悲鳴を上げる有紗。

 一瞬で顔が真っ赤に染め上がる。


「や、やば……っ! これ思ったより、やばっ。洋ちゃん。どうしてそんなに優しく撫でてくるんだよぉ」


「(ど、ドキドキする。洋ちゃんの右手から目が離せない)」

 

「……ねぇ、私の髪、どうかな? 結構ケアには気を使っているんだけど……」


「って、こらぁ! 嗅ぐな!」


「もぅ……」


「わ、私の髪、そんなにいい香りする?」


 コクンと首を縦に振る。


「私の髪……サラサラで手触り良い?」


 大きく首を縦に振る。


「そ、そうなんだ……ありがとう……」


 名残惜しいがそろそろ恥ずかしくなったのでゆっくりを手を離す。


「ぁ……」


 名残惜しいのは有紗も同じだったようで、俺が頭から手を離した瞬間、悲しそうに瞳を潤ませた。


    ポンッ


 もう一度有紗の頭に手を置いて左右に動かした。


「……えへへ」


「よくできました。私がしてほしいことすぐに察してくれるところ好き」


「はぅぅ。幸せ……」


「……ね? これ。毎日やってもらうのって……駄目かな?」


「洋ちゃんの優しいナデナデ、癖になっちゃったよ」


「……駄目?」


「私もちゃんとお返しするからぁ」


「……いいの? ありがとう! 1日1回以上がノルマだからね」


「毎日の楽しみが増えちゃったっ」


「…………」


「……って!? うわぁ!? みんな見てるんだった!?」


「なんでみんな黙っているのさ! こ、声くらい掛けなさいよ! って、こらぁ! 生暖かい目で見るな! そこの男子! うんうんって満足げに首を振っているんじゃなぁぁい!」


「こ、これは違う! 有紗ちゃん全然気持ち良くなってたりなんかしてない! してないんだから!」


「ぅぅっ! ナデナデおねだりするとこ……み、見られちゃったよぉ~! 恥ずかしい~!」


「って、洋ちゃん! なんでお前も笑っているんだ!?」


「もぉぉぉっ! これで勝ったと思うなよぉぉぉぉぉぉ!!」

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