第四章 いつも遊んでいた あの子



「リカちゃーん!もう帰るわよー!」

公園の入口で、母親が呼んでいる。


その声に、ブランコで遊んでいたリカは、ブランコから飛び降りて、母親の元に駆けて行こうとして、足を止め、振り向くと、にっこりと微笑んだ。


「じゃあ、ヨシコちゃん、また明日ね〜!」


キィキィと音を立て、揺れるブランコに向かって、手を振ると、リカは、タタタと、母親の元に走って行った。


側に駆けて来たリカに、母親は言う。


「誰と遊んでいたの?」


「ヨシコちゃん。ほら、ブランコに居るでしょ?」


ブランコの方を指して、リカは、言った。

母親は、そちらを見ると、眉を寄せる。

誰も居ないブランコがキィキィと、揺れてるだけだった。


「誰も居ないじゃない。」


「えっ?居るよ!ほら、こっちに向かって、手を振ってるじゃない。」


「……もう、気持ち悪い事、言わないで。さぁ、帰りましょ。」


「でも、ママ。いつも遊んでいるんだよ、ヨシコちゃん。」


呆れた顔で、リカを見ていたが母親は、口元に笑みを浮かべ、リカの手を繋いで自宅へと戻る。


小さい頃には、よくある事である。

居もしない子を居るとか言う事。

ストレスでも、溜まってるのかしら?

母親は、少し心配な面持ちをしたが自宅に着き、リカと一緒に、中に入った。




夜になり、父親が帰ってきて、一緒に夕飯を食べながら、母親は、今日の事を話す。


「今日、公園に迎えに行ったら、誰も居ないのに、手を振ったり、毎日、遊んでいるなんて言うのよ。」


母親の言葉を父親は、黙って聞きながら、夕飯を食べている。


「子供の頃って、そういう時があるって言うじゃない?リカ、ストレスでも溜まってるのかな?」


母親がそこまで言うと、父親は、箸を止め、真剣な面持ちで、こう言った。


「ところで……リカって、誰だい?」


「えっ……?何を言ってるの、あなた?リカは……。」


母親が言い終わる前に、父親は、隣で夕飯を食べている子供の頭を優しく撫でた。


「おかしな、ママだねー。なぁ、ヨシコ。」


ヨシコと呼ばれた、その子供は、上目遣いで母親の方を見ると、ニヤリと笑った。

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