第二話 道に蹲る老人
カラスがカァーカァーと鳴きながら、山の寝ぐらへ帰っていく。
空は、茜色に染まり、夕日に染まった雲の隙間から、オレンジ色の光が不気味に光っている。
そんな中、細い路地裏を急ぐ、一人の女がいた。
女の名前は、ミナコ。
とある会社に務める、25歳のOLである。
真っ赤なハイヒールをカツンカツンと響かせ、仕事を終えたミナコは、家路を急いでいた。
「何だか、空が不気味な色……。」
仕事が終わる時間は、毎日、決まっている。
いつもの時間、いつもの場所のはずなのに、何故か、その日は、妙な胸騒ぎを感じていた。
そんな時って……ありますよね?
しばらく歩いていると、道の端の電柱の影で蹲る人影が見えた。
ミナコは、一瞬、ドキッとなり、足を止めたが、そこを通らなければ、家に着かない。
ミナコの家は、そこの電柱の角を曲って、すぐの所なのだ。
ミナコは、ゆっくりとした歩調で歩き始める。
街灯の少ない細い路地裏。
ミナコのハイヒールの音だけが響く。
近付くと、それは、一人の老人だった。
苦しそうに、胸を押さえ、身を丸めて、うーんうーんと声を上げている。
ハッとなったミナコは、急ぎ足で老人の元に近付き、声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
ミナコが声を掛けたが、老人は、苦しそうに唸っているだけだ。
「おじいさん……!」
そう言って、ミナコが老人の肩に手をかけると、その手をガッと掴み、老人は、顔を上げた。
その顔は、逆さまで、目が顎の所にあり、口が額の場所にあり、鼻も鼻の穴が上に向いていた。
「きゃあー!!」
悲鳴を上げ、逃げようとするミナコの手を更に強く掴み、ソレは、クククと低い声で笑う。
「お前は、優しい……。俺は、優しい子は、好きだよ〜。」
目を見開き、唇を震わせるミナコに、そう言うと、
それは、ミナコの手を掴んだまま立ち上がり、そのまま、電柱の影の中に、彼女と共に消えた。
辺りは、何事もなかったように、シーンと静まり返っている。
やがて、カチカチと音を立て、街灯に明かりが灯る。
ちょうど、夕方の18時過ぎの事だった。
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