文字を打つ軟体動物

以下は、とあるネット怪談のコピーです。



 私はその日、友人と遊びに行く約束をしていて。

 途中の道で、大量の張り紙を見つけたんです。

 そこには、知らない人の写真に有名人やら――ほら、あの……不細工なくせに人気な、あのアイドルとか。

 まぁ、私もその子推してるわけですけど。

 そういう感じの人の顔が、知らない人の写真に貼り付けられていたんですよ。


 ほら、そういうのって、やるにしても普通逆じゃないですか。

 自分の顔を、有名人とかの写真に貼り付けて、冗談やら何やらでSNSに載せたりとか、あるじゃないですか。


 それで、妙に不気味で、常軌を逸していて……怖くて、私は見るのをやめて友人との待ち合わせ場所に急ぎました。


 それで、友人とカフェ巡って美味しいスイーツ食べて、いつも通りの時間を過ごしたわけですが……途中で、その話をしたんですよ。

 そうしたら、似た噂なら知ってるよ、って。


 なんでも、自分の顔を誰かの写真に貼り付けて本人に見られると、その人になり代われるなんていう悪趣味なおまじないがあるそうで。

 それで、そのおまじないなんですけど。


 成功した話を、ひとつも聞かないんですって。

 普通なら、嘘でも成功したとかの話があるはずなのに。

 一切そんなものがないんですって。


 そんな話も終わって、また他の話を始めて。

 あんな嫌なまじないなんて忘れて、楽しく過ごして。


 それで、帰ることになって、電車でSNSを見ていると、その友人の投稿を見つけました。

『今日は(私)ちゃんと遊びました〜!楽しかった!!!』


 そこに画像が添付されていて。


 私の写真に、友人の顔が貼り付けられていました。



――この怪談の起源は、どこを辿っても見つからないそうです。





首(くび)を挿(す)げ替(か)・える

重要な役職に就いている人を入れ替える。「編集長の—・える」

なくなった首と残された身体は、どこへ?

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