第2話前髪を切るとイケメンになる主人公はありふれている

 さて主人公、退院したら髪を切れ。そして服に、爪に、靴に……


「あぁもうなんだよ!?さっきから指示ばっかり!」


 まぁまぁ落ち着け主人公。ここは個室じゃないんだ。また隣の人に怒られるぞ?


「今は検査だからいねぇよ」


 なぁに、その言い方。不貞腐れてるの?隣の人に怒られて不貞腐れちゃったの?かわいそうにねぇ!?


「ウザッ!と言うか、この前も言った気がするけど、名前で呼べよ。」


 いやー、それは厳しいっ……唐突に病室の扉が開く


「急にどうした?、、って!?」


 扉の前に立っていたのは、神谷恋だった。


「貝木君、事故にあったって聞いてきたけど、大丈夫だった」

「神谷さん!?だっ大丈夫だよ。うまく受け身をとれたみたいで、頭が切れたのと軽い捻挫くらいで済んだから。いやー骨折しなくてよかった。」


 それって結構重症じゃね?


「そっそれはよかったね……それにしても、すごいね。」

「えっ?」

「だって小さい子を庇ってケガをしちゃったんでしょ?本当にすごいよ」

「ぐへっぐへへ」


 ちょっと好きな子に褒められたぐらいで、そんな照れるな。童貞臭いぞ……


「っ!どっ童」

「あっ!そういえば、何日くらいで退院できるの?」

「今日検査終わったら、帰れる予定だけど……」

「んじゃぁ、検査が始まるまで一緒に待ってようか」

「ええぇ!?」


 あんま大きな声を出すな!それと、ここからは俺に返事をしなくていい、とにかく検査までに好感度を稼げ、主人公。一応俺は協力者だ。会話に詰まってたら、助けてやるから。頑張って話せ。


「そういえば、さっきまで話し声が聞こえてたけど電話でもしてたの?」

「まぁそんな感じかな……」


 おい、主人公そこで会話を止めるな!例えば、「親とか友人からかかってきた」って嘘ついて会話を広げるとか……


「誰からかかってきたの」

「えーと……友達からかな?」


 ナイス、ヒロイン!愛してる!主人公、どんな会話をしたかとか話していいけ!

……ん?ヒロインの顔が赤いぞ、そこらへんも交えながら、話していくぞ!


※※※


 なんとか乗り切ったな。もしかして主人公、コミュ障か?いやコミュ障か……


「うるせぇ!!と言うか指示しすぎなんだよ!」


 そんなこと言ってぇ。途中でアドバイス止めたら、話せなくなって、静寂にに耐えられなくなって、話そうとした結果、あのざまとは……ぷぷっ!


「やめろぉ!!」


 まぁまぁ落ち着け、無事退院で来たんだから。よしここから、例の計画を始めるか。


「ん?」


 なんだよその「ん?」は、今日言っただろ。もしや、忘れたとはいわないよな?


「いっいや、覚えて……るぞ?」


 はぁ、わかった。もう一回説明してやる。神谷恋を落とす方法を……今度はしっかり覚えとけよ。

 まず、その長ったらしい髪を切って、そして服……は制服があるし大丈夫か。そしてぼろぼろの靴を買い替えて、告白すれば、お前は無事、神谷恋と結ばれる。


「こんなのでいいのか?というかお前、いちいち余計なことを言うな」


 こんなのでいいんだよ。ぶっちゃけ言うと神谷恋はお前に惚れてる。けどその恰好で告白されると絵にならないからな。それと、余計なことではない事実だ。


「惚れてるならお金の無駄だし、このまま告白していいんじゃないの?」


 付き合うってのは、告白して終わりじゃないんだ。惚れてるって言っても、お相手はあの陽キャ女子、神谷恋だ。世間体を考えて告白を断られる可能性もあるし、OKもらっても、仲間から「恋、あんなのと付き合ってるの」って……


「もうやめてくれぇぇ!!わかった。わかったから。」


 わかったならいいんだ。それじゃあ、美容院にいくぞ。


「病院の後に美容院か……っぷ!」


 ん?ダジャレか?つまらないぞ?


「ウザッ!」


※※※


 ついたな。よし入れ!!


「そういえば今金欠で……」


 お前が好きなゲームソフトを買うために貯金してたのは知ってるぞ。早くは入れ!


「ビヨウイン、コワイ」


 怖くねぇよ。ただ髪切ってもらうだけだって。ん?誰か近づいてきたな。


「んー君ウチんとこの客?」

「あっ!はい!!」

「んじゃ入ろうか」

「おっ押さないでください」


 コイツか……まぁここで働いてたしな……というか相変わらず押しが強いな。


「どうした?というか助けて……」


 逝ってこい!


「今、行くの漢字が違う気がしたんだが!?」


 ソンナコトナイヨ……


「なんか独り言激しいけど、さっさと座ってくれない?」

「はっはい」

「どんな感じがいい」

「どんなって……」


 こういうときは、とりあえず「おすすめで」って言うんだよ


「おすすめで!」

「……わかった」


※※※


「これが俺?」

「……君のこと気に入った。これあげる」

「なんですか?これ?」

「……ウチの名刺、次もウチがカットしてあげる」

「ありがとうございます!」


 知ってはいたが、本当にイケメンになるとは。


「だろう、だろう、。イケメンだろう?」

「さっきもウチ、思ったんだけど。独り言はやめた方がいいよ」

「あっはい」


※※※


あとがき

 多分明日も投稿するので、その作品も読んでくれると嬉しいです。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

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