第2話 風
そうしてポラリスをしていると、あっという間にホームルームの時間がやってきた。
担任の木島先生が教室に入ってきた。
ラッキーなことに、木島先生は中学校からの持ち上がりで、教えるのがとても上手い。科目は数学だ。
この木島先生のおかげで、俺の中学の数学はなんとか一通り頭に入ったと言っても過言ではない。
教師としても、人としても100点満点の人だ。
言うまでもなく、担任ガチャは大当たりだった。
「はい、おはようございます!」
木島先生のよく通る声が教室に響く。
「はい今年1年担任を持たせていただきます、よろしくお願いします!」
「「「よろしくお願いします!!」」」
クラス一同が力強い声で返す。
担任ガチャが大当たりだったおかげか、心なしかみんな表情が明るい。
「そして、出席を取る前に、ここで一つお知らせがあります」
「今日からこのクラスに新しい仲間が加わります!」
木島先生の言葉を聞いた途端、沸き立つクラスメイト達。
「え、マジで?」
「どんなヤツだろ」
「イケメンだったりして!」
俺も騒ぎはしなかったものの、それなりに気になった。どんな奴が来るんだろうか。
その時、木島先生が手を叩いて
「はいはい、静かに!とりあえず落ち着いて下さい」
とみんなを諌めた。
「若松さん、入ってきて」
木島先生が促すと、一人の女子が教室に入ってきた。
髪はショートで身長は標準的、整った顔立ちですらっとした綺麗な子だ。
「それじゃ、自己紹介お願いします」
木島先生がそう言うと、その子は話し始めた。
「みなさん初めまして、富山県から来ました、若松葵っていいます。
漫画とかアニメとかゲームとか、楽しい事ならなんでも好きです。
みなさんとたくさん話したいです。いつでも話しかけて下さい。
今日からよろしくお願いします。」
と、スラスラハキハキと話してみせた。
そしてクラス一同から大きな拍手が起こった。俺もそれに続いて拍手をする。
俺はこんな大勢の前であんな堂々と自己紹介をやってのける若松さんに大いに感心した。俺ならとてもできない。コミュ強っていいなぁ…
「はい、若松さんありがとう!あの一番奥の席座ってね、視力とか大丈夫?」
「あ、全然大丈夫です〜」
「OKOK」
そしてチャイムが鳴った。
「はい、1限の準備しっかりするように!終わります!」
そう言って木島先生は教室を出て行った。
まぁ当然と言うべきか、木島先生に1限の準備をしろと言われた直後にも関わらず、若松さんの席では転校生名物、最初の質問攻めが催され、人だかりができていた。
所謂クラスの陽キャの石田や矢澤が相手でも憶せず笑顔で話せるのは本当にすごいと思った。
あれは間違いなくクラスの一軍に上がるな。
そんな事を考えながら俺が1限の英語の授業の準備をしていると突然、
「龍起〜良かったじゃん?転校生女の子だぜ?しかも可愛い」
と肩を掴みながら話しかけられた。
そこに立っていたのは裕希だった。
「バッカお前、小学生じゃねぇんだから」
と俺は軽口を返す。
「冷てぇの〜内心結構気になってるくせに」
「まぁそりゃ多少はな、みんなそうだろ」
「それもそっか!今年もよろしくな!」
「おうこちらこそ。それはいいけど1限の準備しろよ、春休みの課題回収だぞ。ちゃんとやったか?」
「そんなんやってるわけないんだよな〜!そんなことより俺も若松さんと話して来よ〜っと」
そう言って裕希は若松さんの席に行ってしまった。
相変わらず嵐のような奴だ。
あいつの名前は筧裕希。小学生からの友達で、コミュ強であり顔が広い。なのに陰キャの俺によく絡んでくるから不思議なものだ。悪い気はしないから良いけども。
本当に、俺にはもったいないくらい良いヤツだ。
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