その呪いを抱きしめて
@Cyan_theReaper
第1話 灰
炎が燃え盛る。
死臭が立ち込める。
熱と死臭、出血で意識が朦朧とする中、俺はただひたすら泣き続けた。
「…っ」
目が覚めると部屋で寝ていた。 夢か…
どうやら泣いていたらしく、頬に乾きかけの涙が付いていた。
外はもう明るくなっており、スマホを見ると既に7:00近い。
「はぁ…新学期からなんだよ…気分悪」
最悪な目覚めに毒づきながら、水を飲みに立ち上がった。
「ふぅ」
コップで水を飲み、リビングの席について朝ごはんのシリアルを食べていると、母親に連れられて妹の魅夏が起きてきた。
「お兄ちゃんおはよう」
「うん、おはよう」
魅夏は俺と違って本当にいい子だ。9才も下なのに、とてもお利口さんだ。
本当に、あの親から生まれたとは思えないほどだ。
マンデーブルーが少し癒された気がする。助かった。
朝は本当に時間がない。
朝ごはんを食べたらすぐに着替えて歯を磨いて家を出る。
最寄り駅まで父親に車で送ってもらい、電車に乗って学校へ向かう。
これが俺の朝。
学校の最寄り駅から10分ほど歩くと、学校に着く。
正門を抜けるとそれなりにキツい坂があり、生徒たちは毎日そこを登って校舎に入る。そのため無駄に肺活量と足の筋肉が鍛えられるのだ。
俺、東雲龍起は、今日からこの谷ヶ丘高校の2年生となった。
この学校は中高一貫の共学で、それなりに高い偏差値から世間では進学校と呼ばれるが、無駄に多い課題など自称進学校の気質も持ち合わせている。
新クラスの発表は既に一斉のメールでされており、俺は2年3組の21番らしい。
教室に着いて、俺は席を探す。するとなんと俺は3列目の一番後ろだった。
「ラッキー!!」と俺は心の中で喜びつつも、まず肌着を着替える。俺は季節に関係なく外にいるだけで汗が無限に噴き出るからだ。
ビニール袋に入れてきた新しい肌着を出し、汚れた肌着を袋に入れ密封する。
それと同時に汗拭きシートで体を拭く。汗をかくと、自分でも分かるくらい汗臭くなることがあるから堪らない。
教室に着いて2、3分して、ようやく俺は落ち着けるのだ。
そして体を拭く時は上裸になる関係で、俺はいつも朝早くに学校に行かなければならない。
俺はクラスでも目立たない方だから、人が多いところで上裸になる勇気はないのだ。
本当に困ったものだ。
あぁ本当に、この燃費の悪い体には辟易する。
まったく俺は、両親のろくでもない所しか受け継いでいない。ゲームで言ったら個体値がカスだ。
俺は早めに着いたおかげで時間があったので、学校配布のノートPCを取り出し、ゲームを起動する。
本来制限がかかっていてゲームは出来ないのだが、友達が制限の突破方法を見つけてくれたおかげで学年全員がその利益を享受している。
さて、俺がやっているのは「ポラリス」という名前のオープンワールドサバイバルゲームだ。
ユニークな生物を手懐けてサバイバルをするのがとても楽しい。
包み隠さず言うと、俺は来る日も来る日もポラリスに呆けている。
そんな様子を見て人は俺を愚かだと言うだろうが、俺はゲームをしないと生きていけないのだ。
俺はゲーム依存症だ。
発症したのは…やはり去年の春頃か。
去年の春頃、俺は友達に学タブでPCゲームができるクラウドゲーミングサービス「Clap Up!」の存在を教わった。
そして見事にどっぷりハマってしまったわけだ。
そのせいで成績がガクンと落ち、親に家のWi-Fiへの接続を制限されてしまった。
そんなことをしたら余計に依存が深まるだけなのに、俺の親はそれで万事解決だと信じ込んでいる。愚の骨頂だ。
…いや、愚の骨頂は俺も同じか。
ゲーム依存症の症状はキツい。
まず何をしていてもやる気が起きない。ゲームをしていないと落ち着かないし、他に何もしたくなくなるのだ。
その狂おしいほどの渇きを潤せるのはゲームのみ。
そしてゲームをするほどその渇きは深くなる…
まさに生き地獄、煉獄もいいところだ。
そうしてどうしようもない生きづらさを抱えるわけだ。
そんなわけで、俺は親を死ぬほど恨んでいる。
当然だろ。今俺が抱えている劣等感も生きづらさも、全部全部親から来てるんだから。
こう言うと「人のせいにするな」だの「他責思考だからお前はダメなんだ」だの言われるが、そう言う奴は知らねぇんだよ。
周りに常に自分の上位互換がいて、自分は常に誰かの代わりでしかないっていうこの嘆きを、絶望を。
親に子を産む権利があるなら、子は親を恨む権利くらいあるよな
なぁ、神様。
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