神狩りバイク旅 〜両目眼帯姫と異形勇者(元)の旅の果て〜

「うっひゃあああ〜〜〜〜〜!」


降り注ぐ清々しい飛沫!

七色の虹がアーチを描いてる!

そのアーチを飛沫ごと突き抜ける!

あんまり気持ちよくって叫んじゃった!


「姫! ひめヒメ姫!

なんで俺の指示を聞かないんだよ!?

俺は一度離れて立て直せって言ったろ!?」


「え〜、聞こえな〜い」


「棒読み! わかったよ!

そのまま駆けろ! 龍が上へ飛ぶぞ!

落ちないように気をつけろ!

しっかり踏みしめろ!」


飛び乗って駆ける!

とにかく駆ける!

どこかっていうと、しっぽの先から龍の背中〜〜〜!


「姫! 右にうねる! さらに右! 左に半歩!」

「もう! ちゃんと視えてるよ!」


とか言うけど、実はわたしの目は何も写していない。

両目に交差した帯状の眼帯をつけているから、視界はすべて真っ黒!

でもね、ちゃんと視えてるの!


「うわ! あっぶな!」


うっかり蹴つまずきながら、頭に向かって駆けていく!

いや、ちゃんと視えてるからね!


ついでに刃を突き立てて!

うねる龍の体を斬り裂いていく!

天高くほぼ垂直に上昇する龍の大絶叫!


「あは! ごめ〜ん! 痛い?

でもさ! もうすぐ、そんな心配いらなくなるからね!」


一気に駆け抜けて!

龍の頭を踏み台にして空に翔ぶ!


「ちょっと待って! 何するつもり!?」


「ふふ! いっくよ〜〜〜!」


「まじ!? 真下! 距離にして中間合い!

龍の顎が開いた! くるぞ!」


頂点に達したところで、急降下!

龍の顎からあふれる濁流のような炎の吐息とすれ違いざまに、長刀を閃かせる!


一閃ごとに炎が霧散していく。


わたしの数ある愛刀のうちの一振り。

備前長船長光改・昇龍。

一言でいうととんでもない長さの長刀。


ちょっと髪がジュッと焦げた!


「乙女の桃色ロングヘアになんてことしてくれるのよ!」


でも!


「あはははははははは!」


体を大の字にしてスカイダイビング!

最後はくるっと一回転してどすんと着地!

わたしのまわりに、分割された龍の体が激しく音を立てて落ちてくる!


「神狩り完了♡」


「おいこら……

そんなんじゃ命がいくつあっても足りないって!」


「いいじゃん! 倒したんだから! ね!

かゆい! 目が疲れた!」


両目に交差する帯のような眼帯の上から目をこする。


「疲れたって、目使ってないでしょ!?

目が疲れたのは俺の方!」


「あは! そだね♪」


そうなのよね。

実際、わたしの目は疲れてない。だって見えてないもん。

でも視えてる。

それは背中の彼のおかげ。

彼が見たものが、彼の眼を通してわたしの心に視える。


「姫、頭かゆい。かいて」

「しょうがないなあ。ほれ、ペシペシ」

「剣で叩かないで!? やさしく丁寧にかいて!?

俺、自分でかけないんだから!」


背中の彼が頭をぶんぶん振ってアピールしてる!

かゆいところがあっても、彼は自分の体を自分の手や足でかいたりできない。

肩から先、腰から先、本来あるべき両腕と両脚がないから。


「あとさ、鎖が食い込んで痛いんだけど、ちょっとだけ緩めない?」

「だ〜め! バトル中に解けたら大変でしょ!」

「痛いんだって!」


わたしの背中におぶされた彼は、決して離れないように鋼鉄の鎖でわたしと彼を縛ってる。


「ほんとはわたしだって緩めたいんだよ?

おっぱいに食い込んじゃうし。

最近、成長してきてるんだよね〜♪」


「目の前で胸をむにむにしないで!?

キレイなドレス姿の美少女のそんな姿、健全な男子に刺激が強いよ!?」


「元勇者が情けない声を出さないでよ〜!

ん? 美少女?

いや〜、照れちゃうな〜♪

やっぱりわたしのこと好きなの?」


「じゃかましいわ!

そんなことより龍神の玉!

龍のたまを回収してくれよ!」


「え!? 玉!? やだ! やらし〜♪」


「じゃかましい!

照れたふりしてニマニマするのやめて!?

ほら! 刀! 投げて!」


「ほ〜い」


言われた通り刀を投げる。

真上に向かって空高く。

頂点を迎えた刀が重力に逆らわずに、真っ直ぐ落ちてくる。

狙った場所はと言うと。


背中の彼の頭、正確に言うと口。


彼がばくんと口をひらげると、吸い込まれるように切先から呑み込まれていく。

ゴクリとのどを鳴らすと、龍の太い胴体を斬り裂くほどに長い刀が見事に消えていた。


「痛てて」


視ればくちびるから血が流れている。


「もっとうまく飲み込まないと、また傷だらけになっちゃうよ!」


「だったらもっとやさしく投げてくんない!?

あんなに高く投げなくてもいいよね!?」


「だって長すぎるんだからしょうがないも〜ん♪」


「可愛く言ってもダメだからね!?

もういいから龍神の玉を探して!」


「ほいほ〜い」


右眼の眼帯をずらして、目を開く。

わたしの右眼は普通と違う。

よく言えばまるで青いクリスタル。

悪く言えばひび割れたガラスの青玉。


ぶつ切りにした龍の体を近い順から凝視!

瞳はいま、不思議な輝きを発しているはず。

自分じゃわかんないけどね!


「あった!」


ずぼっと腕を肉に突っ込んでぐりぐり。


「はずれだよ〜〜〜!

こんなのいらな〜い!」


「いらなくないよ!?

ちゃんとレア龍神玉じゃん!

食費に宿に燃料代!

なんならしばらく豪遊できるやつ!」


「え〜〜〜!

別に豪遊しなくていいし〜!

塩おにぎりでもいいよ?」


湖の冷たい水で血に濡れた腕や汚れた体にバシャバシャ。


「冷たい! 気持ちい〜〜〜♪」


「ちゃんとタンパク質とって!?

野菜も食べて!?

姫の健康管理をする身にもなって!?

俺だって、おいしいごはん食べたいし!」


「あ〜! 大丈夫だよ〜!

ちゃ〜んと、あ〜んてしてあげるから!」


「うん! お願い!

俺、手も足もないからね!

そうじゃなくて!

龍神玉、投げ捨てないで!?」


「わかっ〜た〜てば!

人も集まってきたし、そろそろ行こっか!

皆さ〜ん! 龍の亡骸は自由にしてくれていいですよ〜!」


「姫!? そんなこと言ったら大騒ぎになっちゃうよ!?」


「あはは〜! ほんとだね!

みんな我先に素材に群がってるし〜♪

兵隊とかも集まってきたし?

いまのうちにずらかろ〜!」


「しょうがないなあ!

じゃあ、次は南ね!

次はあたりだといいんだけど!」


「オッケー!

じゃあ、ナイト!

あれ出して!」


「へいへい。テイィ様のいう通り」


がぱっと開いた口から吐き出される物体!

うわ! つば飛んだ!


地面にドスンと重量感のある鉄の塊!

これ、かっこいいんだよね!


「わたしの愛車! 魔導バイクのスバルちゃん!」


ひらりとシートに飛び乗って魔導エンジン始動!

クラッチちょこんとペダルをカコンとスロットル!

音がしびれるぅ〜!


「姫! 安全運転だからな!」


「わかってるって!

それじゃあ! しゅっぱ〜〜〜つ!」


いきなりウイリー!


「言ったそばからやめろ〜!」


「終わらない旅の新しいスタートだね!

神狩りレッツゴー!」


そう!

いつ終わるかわからない二人の旅はまだまだこれから!

楽しむしかないよね!



☆一話だけです♪

これ長編化したらいいかなあ?

これの元ネタ、男女の立場を逆転したパターンのダクファン?ものちほど投稿します。

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