吸血女子高生と転校初日に襲われたぼくの恋
桜舞う。
散る花びらの一つ一つに心を奪われていた。
満開の桜の樹の下には死体が埋まっている。
そんな話を聞いたことがあるのはいつのことだったろうか。
バスから降りた通学路。
その瞬間が家と今とを分か断つ境界線のように心の底から感じる。
ああ……ぼくは今日からこの高校に通うんだ……。
それほど、力を入れて受験勉強に臨んだわけではなく、かといってどうでもいいというわけでもなく。
中途半端なまま臨んだ高校入試。
案の定うまくいくわけもなく、身内の薦めで、とある高校に入学することになった。
後悔はしていない。
どうあれ、今の現状は自分の行いの結果だ。
そこに、不満も満足も特別な感慨はない。
ただ、今がある。それだけで生きている実感があった。
見れば、緊張した面持ちで歩む男子が一人。
もしかしたら同じ中学校の出身とかかな?
嬉しそうに談笑しながら登校する大勢の女子たち。
きっと仲良く受験をした友人同士に違いない。
どの学生たちを見ても自分とは異なる存在としか認識できなかった。
それだけ、自分には、自分自身には、価値を見出すことができない自分がいたからだ。
桜の木の下で見上げる。
花びらが舞っている。
ぼくも……いつかどこかで……舞い散りたい。
今日からぼくはどんな高校生活を送っていくのかな?
不安でもなく、期待でもない。
ただただ、知ることのない未来に対しての感想だった。
「キミ……」
「……」
「聞こえてる? キミのことだよ?」
「え?……」
見上げていたこうべを垂れる。
そこには桜の根元でうずくまっていた少女がいた。
通りから反対側、声でもかけられなければ誰も気づかない。
桜色の髪、瞳。
弱々しげなその様子、まるで落ちている猫のような、保護欲をそそるほどの面持ちを少年に魅せていた。
「お願い。助けて?」
助けの声が疑問形?
悩ましげな瞳。紅潮した頬。
魔性の魅力……そんなことを少年は感じていた。
抗えない。
考える前に、桜の木の下で喘ぐ少女の上半身を支えていた。
首元に感じる痛み。脱力感。
少年はこの状況に陥る前にしっかりと二つの眼で捉えていた。
悩ましげな表情を魅せる少女。
唇からのぞかせる、舐めまわすような舌。
怪しく煌めく、鋭い二本の八重歯。
少年の首筋、赤く脈々と波打つ血管を少女の牙が刺し貫いていた。
コクンコクン……。
少女ののどが鳴る。
不思議な感覚、耳に聞こえる心地よさと脱力感。
まるで絶頂でも迎えるような……。
「はう」
吐息がもれでていた。
「おいしかった
ありがとう」
感謝の声がほんのり甘く感じる。
「い、いや……どういたしまして?」
「これでキミはわたしの眷属候補」
少女はスカートをぱたぱたと、土を払いながら立ち上がる。
「それじゃ、またね」
蠱惑的な瞳と、軽やかな足どり。
これから始まる学校生活がきっと大変なことになる。
そんな予感を感じながら、少年は後ろ姿を見送っていた。
☆一話だけです
続きを書くとしたら、男の子を中心にモンスター娘がわちゃわちゃラブコメするお話でしょうか?
それとも純愛系?
狼女、ミイラ女、つぎはぎフランケン、天狗、ぬけ首とか?
それと、陰陽師やシスターとか?
男の子は普通?それとも?
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