20.lambに乱舞  (1800文字)

■lambに乱舞らんぶ


 エイント山脈さんみゃくでブラックドラゴンと戦闘せんとうし、山脈さんみゃくえてこちらのヒルエリア高原こうげんけてきた。

 ぱからっぱからっとここまでうまけた。


「マルクもちょっとって」

「なんだエイダ、おつかれか」

「そうよ。クーシェも苦笑にがわらいじゃないの」

「そ、そうか」


 そろそろ休憩きゅうけい必要ひつようか。

 おれ、マルクは戦士せんし自分じぶんでいうのははばかられるがクシリナーダ王国おうこく認定にんてい勇者ゆうしゃだ。

 いま国境こっきょう山脈さんみゃくえて隣国りんこくであるヒルエリア王国おうこくはいってしばらくした位置いちにいる。

 エイダは魔法使まほうつかい、クーシェは聖女せいじょだった。


 王国おうこく精鋭せいえい騎士きしだん随伴ずいはんしてきていたのだが、ドラゴンせん苦戦くせん何人なんにん被害ひがいしたので、素材そざいってくにかえることになったのだ。

 ここからさきおれたち勇者ゆうしゃパーティーのみですすむことになる。

 マジックバッグはあるものの、毎日まいにち食事しょくじをすれば中身なかみっていく。


つぎまちはどこかしら」


 エイダがくびかしげて質問しつもんしてくる。


首都しゅとヒンバイはずっと西にしらしいな」

「そのまえまちがあればいいけど」

「どうだか、遊牧民ゆうぼくみんだからなぁ」


 そうなのだ。首都しゅとでこそ定住ていじゅうしているが、おおくの国民こくみんうまれて遊牧ゆうぼく生活せいかつをしている。

 そのため定住ていじゅうするまちがあまりない。

 おれたちは補給ほきゅうがしたかった。


 そんなヒルエリア高原こうげん何日なんにちすすんだところで、テントむら発見はっけんした。

 ありがたい。ここで補給ほきゅうができるだろう。


「こんにちは」

「おやまぁ、みなみくにひとですかなあ」

「そうです、そうです」

「あるものしかありませんが、ゆっくりしていきなされ」


 村長そんちょう面会めんかいしてテントのなかへと案内あんないされる。

 囲炉裏いろりまえあつまり、馬乳ばにゅうわれた。


「どうぞ、おみください」

「あ、ありがとう」


 なんだろう。美味うまいとも不味まずいともがたいが、素朴そぼくあじだ。

 エイダもクーシェもへんかおをしていて、どこかおかしいので、ぎゃくおれわらった。


にくさかな、それから野菜やさいけていただきたいのですが」

「それなら新鮮しんせんほうがいいでしょうな」


 はなしってくれるようだ。

 こちらとしては金貨きんか用意よういがあった。

 金貨きんか国境こっきょうえたこちらがわでも使用しようできた。


けん魔法まほう使つかえるようにお見受みうけします。一緒いっしょにlambをりましょうか」


 lambとは一般的いっぱんてきにはラムと魔物まものだ。大羊おおひつじ幼体ようたいで、この地方ちほうではなまっていて「ランブ」にちか発音はつおんをする。

 くろにクルクルしたつの特徴とくちょうなのだけど、かみなり魔法まほう攻撃こうげきしてくる。


かりました」


 自分じぶんたちでれということだ。

 武装ぶそうした村人むらびと一緒いっしょむらる。


 しばらくすすむと高原こうげんくろてんがいくつかえた。


「ラムだ、いるぞーー」

「「おおおお!!」」

「いけいけいけぇ」


 うまった村人むらびと次々つぎつぎ突撃とつげきしていく。

 おれたちも自分じぶんうままたがってすすんだ。


「ファイア・ボール」

「アイス・ボール」


 村人むらびとはな属性ぞくせい魔法まほうばれるみずかぜなどをつかさど精霊せいれい魔法まほうがいくつもラムにむかってんでいく。

 村人むらびとたちは右側みぎがわのラムをターゲットにえらんだようだ。

 おれたちもそれにつづく。


「エイダ、クーシェ、いくぞ!」

「もちろんよ」

「やりますわよ」


 てきはもうまえまでせまっていた。

 村人むらびと攻撃こうげきでいくらかよわっているもののまだまだ健在けんざいだ。


「フレーム・ボンバー」

「セイント・パウダースノウ」


 エイダの紅蓮ぐれんほのおとクーシェのせいなる粉雪こなゆきがラムにおそいかかる。

 村人むらびと攻撃こうげき魔法まほうより強力きょうりょくだった。


「メゥエェェ!」


 ラムが一鳴ひとなきしてうごきをめた。

 いまだ。


「おりゃああああああ」


 あいけん、シルビック・ソードを上段じょうだんるう。

 ラムをいていく。


「てやああああ」


 かえがたなでもうひと太刀たちる。


 その一瞬いっしゅん静寂せいじゃくおとずれたあとおおきなラムがドスンとたおれた。


「やったぞぉ!!」

みなみくにひとたおした!」

おれたちの勝利しょうりだ」


 はぁはぁはぁとあらいきく。

 勝負しょうぶ一瞬いっしゅんだったが、そのためには魔力まりょくあつりあげ、放出ほうしゅつするという魔力まりょく制御せいぎょ必要ひつようであり、それが身体しんたい強化きょうか魔法まほうであった。

 おれ得意とくいとしているもののひとつだ。


 ラムはそのでいくつかにけられテントのあるむらまではこんでいく。


 そしてねんためまわりの偵察ていさつをしてむらもどるとすでにうたげはじまっていた。

 鮮度せんどたかいうちにべるものをなべにしている。

 村人むらびとはどこかからんださけ乾杯かんぱいもしている。


乾杯かんぱい!」

「「「乾杯かんぱい」」」


 おれたちはいつでも戦闘せんとうできるようにさけひかえている。

 それでもなべるわれてみんなで舌鼓したつづみつ。


「うまいな、これ。よかったな」

「マルクもたたかったものね」

「マルクさまはおつよいのですわ」


 ちびちびと色々いろいろ料理りょうりにもけた。

 村人むらびとたちがのこっているラムをかこみながらおどりだす。


「lambに乱舞らんぶ、なんちって」


 こうして今日きょうよるはふけていく。

 勇者ゆうしゃたびはまだまだはじまったばかりだ。


(了)

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