19.ワイバーン食う (2000文字)


■ワイバーン


 Sランクパーティー「シルビア」。


「おい、ガルド、そっちいったぞ」

「まかせろ」


 おれがガルド・スタインシュット。シルビアのリーダーだった。

 てきであるワイバーンは、うんがいいことに単騎たんきだ。

 ワイバーンはりゅうであり、小型こがたりゅうしゅだ。

 通常つうじょうれる性質せいしつがあるため、あまり単独行動たんどくこうどうはしない。


 おれたちは、うんがよかったのだ。


「サンダーボルト!!」


 かみなりそらけ、ワイバーンにダメージをあたえる。

 致命傷ちめいしょうだったのか、そらからちてくる。


「やったか?」


 楽観的らっかんてきなのは、サブリーダーのマイトンだ。


「まだよ、いきがある」

「そうだな、うりょああああ」


 おれけんかかげて突撃とつげきしていく。

 けんがワイバーンにふかさり、心臓しんぞう貫通かんつうした。


「やったぞ、みんな」

「た、たおしたのね」

「おつかれさん」


 ひめ騎士きしのシェリーにつづいて、マイトンがこえげた。

 さてこれからが本番ほんばんだとってもいい。

 まず、まわりにさらにつよ魔物まものがいないか索敵さくてきをする。

 とくおれのレーダーには反応はんのうしない。よかった。


 ワイバーンのかわをはぐ。

 丈夫じょうぶなのだがやわらかくしなやかだ。

 様々さまざま製品せいひん利用りようされるので、たかれる。


 そうしてあらわれたのがにくだ。


美味おいしいそうね」


 シェリーがペロっとしたしてわらう。


「ああ、ってろ」


 おれはまっさきにつばさ根本ねもと背中せなかにくっていく。


準備じゅんびは?」

「もうできてるわ」

たすかる、シェリー」

わたしべたいもの」


 あらかじめ用意よういしてあったくしにくして、まわりにならべていく。

 さてにくっているあいだ解体かいたいすすめてしまう。


美味おいしそう」

「もうちょっとだな」


 仕上しあげににくしおコショウを少々しょうしょうりかけておく。

 あかにく徐々じょじょ茶色ちゃいろになり、けていく。

 すこがついたあたりで、そろそろいいだろうか。


「「「いただきます」」」


 にくにかぶりつく。

 うまい!

 ほどよくやわらかいがこたえのある弾力だんりょくのある肉質にくしつ

 赤身肉あかみにくだが、しっかりとした旨味うまみがあり、あふれる肉汁にくじゅうはこれでもかと、存在そんざい主張しゅちょうしている。


「うまいな」

美味おいしいわ」

最高さいこうだ!」


 おれ、シェリー、マイトンと三人さんにんともが感涙かんるいこえげた。

 それほどまでにいままでべてきたどのにくよりうまい。


 このばんは、すこはなれた場所ばしょでキャンプをする。

 にくをたらふくべたせいか、ひさしぶりにぐっすりとねむることができた。


「おはよう、二人ふたりとも」

「おはようございます。ガルドさん」

「おはよう、ガルド」


 二人ふたりあさから元気げんきがあるようだ。

 ワイバーンのにくには疲労ひろう回復かいふく効果こうかでもあるのだろう。

 がりなりにもワイバーンもドラゴンだという事実じじつだ。


「ドランゴンハンターとかあこがれるよな」

「まあな、ただドラゴンとワイバーンじゃな」

ちがいねえ、あはは」


 マイトンがわらった。

 いいんだ。いつかなってやるさ、ドラゴンハンターにな。


 やまから一日いちにちふもと一番いちばんちかいラミールむらへと到着とうちゃくした。


「おおおい、おかえり、シルビアさんたち」

「ただいま~」

「どうだった。ワイバーンは?」

たおしてきたぜ」

「うぉおおおお」

「おおおお」

「やったあああ」


 村人むらびとたちはだい歓喜かんきだ。

 それはそうだろう。

 むらちかくにワイバーンが一匹いっぴきくようになってしまい、被害ひがいていないものの、いつだれ犠牲ぎせいになるかからなかったのだ。


 むら広場ひろば調理場ちょうりばもうけられた。

 そこに大鍋おおなべならべられて、なかにワイバーンにくむられた新鮮しんせん野菜やさいれていく。

 調味料ちょうみりょうしおばかりだ。

 使つかにくやわらかいはら部分ぶぶんだ。

 ワイバーンはうしよりもおおきく、にくもたくさんれた。

 マジックバッグに収納しゅうのうしてあるので、王都おうとんでもくさることもない。

 のこりのにく王宮おうきゅう主催しゅさいのパーティーなどでわれるだろう。


 すでに村人むらびと広場ひろば酒盛さかもりをはじめていた。


「ワインそう、ワイン」

「だーさけさけ

むべぇ」


 酒盛さかもりをしているあいだなべはぐつぐつと半日はんにちほど煮込にこまれた。


「シチューが出来できたよ、みんな」

「「「おおおおお」」」


 ここからだい二回にかいせん開始かいしされた。

 ワイバーンシチューはそれはもう野菜やさいにく旨味うまみだっぷりで、なかなか美味おいしいい。


「うまいっ」

「おいしいっ」

「こんなの、はじめてべたよぉ」



「「「かいぱい!」」」


 おれたちも笑顔えがおでそれにざっていた。

 ひめのシェリー、それから従者じゅうしゃであるマイトンとともに、さけみ、シチューをべる。


「これで、お父様とうさま結婚けっこんもうみを……」

「そうだな、シェリー」


 ひめ父親ちちおや。すなわち国王こくおうさまだ。

 第三だいさんとはいえ、直系ちょっけい権力けんりょくはそれなりだ。


結婚けっこんしてくれ、シェリー。一生いっしょう大切たいせつにする」

「はい、もちろんです。ともにしましょう。ガルド」


「ひゅーひゅー」

「よっ、おあつい」


 おれたちのちかいの言葉ことば、プロポーズをけて、村人むらびとたちがどんちゃんさわぎをする。

 ただの男爵だんしゃく次男じなんから冒険者ぼうけんしゃをはじめて、Sきゅうまでのぼめてきた。

 おれはただただ、つよくなりたいとおさなよわ自分じぶんたたかってきたのだ。


「シェリー……」

「ガルド……」


 そんなおりひめ冒険ぼうけんれていってほしいと国王こくおう懇願こんがんされた。

 邪魔じゃまだと最初さいしょおもったさ。

 しかし、いまではいないとこまるパートナーになっていたのだ。

 これからは二人ふたり仲良なかよ生活せいかつしていきたい。


 王都おうとったら、国王こくおう討伐とうばつけん結婚けっこんけん報告ほうこくしなければならないな。

 おれたちの冒険ぼうけんつづく。


(終)

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