17.僕は異世界の警察犬

第1話 犬転移 (2000文字)

●タイトル

ぼく異世界いせかい警察犬けいさつけん


だい1 いぬ転移てんい


 日本にほん中学生ちゅうがくせいだったぼく

 しかし、不幸ふこう事故じこいもうダメだとおもった瞬間しゅんかん魔法陣まほうじんまれた。

 そしていたら異世界いせかいファンタジーの世界せかい

 異世界いせかい転移てんいなのだろうか、しかし転移てんい失敗しっぱいしたのかわからないけどぼくからだは「いぬ」になっていたのだ。


「わうぅん」

「おぉよしよし、ブル、いいこいいこ」


 ぬしのマリーちゃんにからだでられてとても気持きもちがいい。

 ぼくいまいぬをやっている。

 いぬのコスプレの格好かっこうをしているとかいぬ獣人じゅうじんだとかいうわけではない。

 普通ふつういぬ

 しろいシベリアンハスキーのような犬種けんしゅで、いぬなかではおおきいほうだろう。

 名前なまえは「ブルベイグ・ダルリアハント」通称つうしょう「ブル」。

 地球ちきゅうでいうなら血統書けっとうしょきの由緒ゆいしょただしいおいぬさまなのだ。


 ぬしはマリー・アイアンバウアーちゃん十二じゅうにさい

 金髪きんぱつのクルクルヘアーがかわいらしい。まだあそびたいさかりなのか、よく中庭なかにわあそんでくれる。

 今日きょうもおりのピンクのワンピースをぼくはしまわった。

 マリーちゃんのいえ中級ちゅうきゅう貴族きぞくというものでたし伯爵はくしゃくだったとおもう。

 地方ちほう土地とちっていなくてくにつかえている法衣ほうい貴族きぞくという種類しゅるいだった。

 地球ちきゅうでいうところの国家こっか公務員こうむいん該当がいとうする。


「ブルはかしこいね!」

「わうぅうん」


 マリーちゃんにからだをこすりつけるとよろこんでくれるので、いつもぐりぐりしている。

 そりゃかしこいよね、なんせ前世ぜんせ人間にんげん中学生ちゅうがくせいだったんだから。

 計算けいさん地球ちきゅう歴史れきし政治せいじ、なんでもござれ。

 ただしいまいぬをしているので、披露ひろうできないのは残念ざんねんだ。


 いぬなのでみみはなもいい。わるくはない。

 とくはな一級いっきゅうひんだ。

 そのかわりご貴族きぞくさまがコロンをつけてきたりするとそのにおいは強烈きょうれつで、ちょっとまいってしまう。

 ご婦人方ふじんがたのお茶会ちゃかいがあるとそれはもう、みんなのにおいがざって大変たいへんだ。

 そういうときはお茶会ちゃかい会場かいじょう前庭まえにわではなく裏庭うらにわげて大人おとなしくしている。

 いえはさんでいるのであまりにおわなくなる。


「それ、ブル。一回転いっかいてん!」

「わぅうううん!」


 くるっとぼく一回転いっかいてんめる。

 いぬ運動うんどう神経しんけいしんじられないほどこう性能せいのうで、前世ぜんせとはくらものにならない。

 身長しんちょう何倍なんばいもジャンプできるし、ダッシュもはやい。


「すごいすごい、さすがわたしのブル」


 はなたかい。マリーちゃんにめられてとてもうれしい。


「わうぅんわうん」


 本当ほんとう人間にんげんだったらよかったな、とおもったこともある。

 そうしたらぼくはマリーちゃんと毎日まいにちあそんで、そうして恋人こいびとになったりして……。

 マリーちゃんは一休ひとやすみをするために中庭なかにわのベンチにすわった。

 ぼく偵察ていさつだ。中庭なかにわまわりにへんものがないか、よくよく調しらべる。

 とくにおいをいで注意深ちゅういぶかく、へんなものがないかさがす。


 ん。このにおい。


「わんわん、わんわんわん」


 ぼく中庭なかにわから隣家りんかとのさかいはしっていく。

 いた。くさむらのした


「ぐるるるる」

「わっ、ブルっ、ちょっと、ごめん、ごめんって」

「わんわん!」


 ぼく獲物えものえてくさむらから中庭なかにわほうへとてる。

 もちろんみついたりんだりはしない。

 ただえて鼻先はなさきけて、マリーちゃんのほうへ誘導ゆうどうする。


 マリーちゃんもぼく行動こうどう異変いへん気付きづいたのだろうすでにがってこしてている。

 いわゆる仁王立におうだちだ。この世界せかいには仁王におうさまはいないけど。


「ちょっとマーク、またのぞいてたの?」

「ち、ちがうんだよ。これはその、なんというか」

わけしない!」

「ごめんなさい。のぞいてました」

堂々どうどう正面しょうめんからあそびにればいいでしょ。もうちいさいじゃないんだから」

「だって……」


 ちょっとっぺをあかくするマリーちゃん。

 マークくんはぽりぽりとほおいてからそっぽをいて誤魔化ごまかそうとする。

 そうなのだ。こいつ。マーク・マドリシアンぼっちゃまはおな十二じゅうにさい

 マドリシアン伯爵はくしゃく次男坊じなんぼうだった。

 マリーちゃんとおなどしであり、まえはよくあそびにていた。

 最近さいきん思春期ししゅんきになったのかあそびにるのがずかしくなってしまったみたいで、こうしてにわさかいにあるかべをよじのぼって越境えっきょうしてきて、にわかくれてマリーちゃんをながめていたのだ。

 つまりのぞきだ。


 ぼく目下もっかのところのてきである。

 マリーちゃんはあまりこうやってのぞかれることはきじゃないのだ。

 もうすでによんかい。しかしこころやさしいマリーちゃんは怒鳴どなったりはせずにマークくんゆるしていた。

 マリーちゃんもそろそろ婚約こんやくはなしてもいいとしになった。

 マリーちゃんもマークくんもおたが相手あいて婚約こんやく対象たいしょうとしてるようになっていたのだ。


「マーク。どうせ婚約者こんやくしゃじゃないのにおんないえあそびにくなんて、とかわれたんでしょ」

「うん。ベーグとドーマにわれた」

「まあそうよね。でもわたしたちは、まだまってないけど『婚約者こんやくしゃみたいなもの』なんだし、いいじゃない。堂々どうどうとしてれば」

「うん。でも、ずかしいし」

「まったく軟弱なんじゃくなんだから」

「ごめん」


 まったく微笑ほほえましいかぎりなことで。

 なかなかなかがいいらしく、二人ふたりして微笑ほほえっている。

 さきにマリーちゃんの友達ともだちになったぼくがもし人間にんげんだったら、マリーちゃんの婚約者こんやくしゃぼくだったのだろうな。

 でもいいんだ。ぼくいまいぬだし。


「ブル、おいで」

「わうぅううん」

「えらいわよ。ほーら、よしよしよし」

「わうわうん」

侵入者しんにゅうしゃ無事ぶじ発見はっけん怪我けがもなくれてこれたわね」

「わうーん」

「まったくかしこいのよね」


 マリーちゃんにまたでてほめてもらう。

 ちょっとだけマークくんぼく苦手にがてそうだ。

 まえはそうでもなかったけど、四かいにわいかけられれば、わからないでもない。


「こののこの能力のうりょくなにかに役立やくだてないかしら」


 このマリーちゃんの発案はつあんが、今後こんごぼく行方ゆくえめるきっかけとなった。

 つまり地球ちきゅうでいう「警察犬けいさつけん」のだい一歩いっぽだったのだ。


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