16.甘夏みたいな恋をしたい

第1話 新幹線に乗って (2000文字)

●タイトル

甘夏あまなつみたいなこいをしたい


だい1 新幹線しんかんせんって


生成せいせいAIの未来みらい創造そうぞう?」

「うん」

「なんかかっこつけ」

「うぐう」


 かっている。なんかカッコよさげなタイトルをつけたかった。

 ぼく遠藤えんどう秀介しゅうすけ、16さい高校こうこう一年生いちねんせい

 でもってこっちは向日葵ひまわり明日香あすかおなどし。というか幼馴染おさななじみ


「でさ、あのねAIにえとかわかるかってはなし

「なにそれ、あぁもうらないわよ」

「だよな」


 おれ幼馴染おさななじみ世間せけんではっていることになっているが、じつっていない。

 たしかに毎日まいにち一緒いっしょ登校とうこうして一緒いっしょ下校げこうして、一緒いっしょ勉強べんきょうしたりしている。

 でもそれは便利べんりだからだ。そのほうが生活せいかつらくなのだ。

 おれはAIとか科学かがくきで、彼女かのじょ自然しぜん崇拝すうはい感情かんじょう

 意見いけんわけもなく、趣味しゅみわけでもない。

 おれ海外かいがいSF映画えいがたいのに、彼女かのじょ邦題ほうだい恋愛れんあいのべたあまいのがおきとまあ、そりゃりはわない。


「それで?」

「あぁ、この夏休なつやすみのおぼん実家じっかのじいちゃんちへかえるんだが、じいちゃんが『わしがまえ明日香あすかれてこい。もうたん』ってうるさくて」

「おじいちゃんね、むかし一緒いっしょによくったもんね」

「じいちゃん。まだおれたちが結婚けっこんするとおもってんだよ」

「だろなぁ。むかしラブラブだったもんね、わたしたち」

「あぁ、くっそ、そうだったよな」


 二人ふたりしてとおくをつめる。

 おれたちはもうとっくに相手あいてめてしまっていた。

 なんだろう、明日香あすかりの美少女びしょうじょだけど、もう見飽みあきた。

 内面ないめん普通ふつうわるくはないが、いまさらドキドキもしない。

 彼女かのじょだってこんな底辺ていへんってるおれ好意こういなんかってないだろうし。


「さてどうしたもんか」

一緒いっしょったほうがいいよね。さすがにんじゃったら……」

「だよな。まあれてったら満足まんぞくするだろうし」


 というようなはなしをして、夏休なつやすみ。

 さっそく新幹線しんかんせん移動いどうだ。


 予約よやくした新幹線しんかんせん二人ふたりせきのシートにすわる。


「カフェオレでいいか?」

「あ、ってきてくれてたんだ。さんきゅ」

「ああ」


 明日香あすかあまいカフェオレがきだ。

 おれはジンジャーエール。

 あらかじめ時間じかんもなかったのでコンビニでっておいた。


「こういっちゃなんだけど、つべきはなんでもってる幼馴染おさななじみだよね」

「だな」

彼氏かれしとかもう、幻想げんそうだし」

「まあ、そうわれるとムカつくけどな」

「だよね。ごめんぴょ。カフェオレ……ありがと」

「おお」


 べつおこってはない。あははとわらってごす。


 新幹線しんかんせん混雑こんざつしているが冷房れいぼういている。

 しろなつワンピースの明日香あすかかたていて、こういうのなんていんだっけ、オープンショルダーだったか。


「なに、なんかついてる?」

幽霊ゆうれいとかか?」

「え?」

「え?」

こわい」

「いや、なんもついてないよ」

「なんだ、もう」


 明日香あすかくちびるとがらせてアヒルにする。

 なんだかこういう子供こどもっぽいかおをするのはひさしぶりながする。

 学校がっこうじゃあいいところのお嬢様じょうさまだとおもわれてるからな。学校一がっこういち美少女びしょうじょとかもてはやされて。

 たいするおれはモブ1で、だれからも相手あいてにされない。

 いや、明日香あすか相手あいてしてくれるが、おとこおんなってこない。

 それでってるとおもわれてるわけだ。

 んで風当かぜあたりが非常ひじょうつよいと。


『なんで、あいつ「なんか」が明日香あすかさんのよこに』

似合にあわねえんだよ、底辺ていへんがさぁ』


 悪口わるくちはいろいろわれる。もちろん直接ちょくせつってくることはない。

 あと明日香あすかまえうこともない。なぜなら過去かこ明日香あすかがそれでキレたことがあるからだ。

 それで余計よけいおれたちのなかふかいということになったわけだけども。

 いや、あれ以降いこう目立めだった場所ばしょではわれなくはなった。

 ただのモブとして確立かくりつしたのだ。


「アイスとかべたかったよね?」

「あのかたやつか?」

「うん」

二人ふたりあいでラブラブしてかす、とかだよな、勘弁かんべん

「そうだっけ、えへへ」


 たまにちょっと天然てんねんなところもある明日香あすかはペロっとしたして誤魔化ごまかす。

 そのひとつひとつがかわいいからな、おれはもうってしまっているが、初見しょけんでこれだったら「一発いっぱつちてる」自信じしんがある。


「またスマホ?」

「ああ、新作しんさくかないとな」

小説しょうせつ? きないの?」

「おう、毎回まいかいちがうのいてるからな、たりまえだけど」

「そうなんだ。せてもらってもいい?」

「だめ」

「けち」

明日香あすか、これたら、興奮こうふんしてねむれないぞ」

「えっそんなのいてるの?」

「どんな想像そうぞうしてんだよ」

「ひっ、せないで」

「まあいい」


 ちなみに男女だんじょ恋愛れんあい小説しょうせつだが普通ふつう健全けんぜんものだ。

 ただ、な、あ、うん。

 ヒロインが明日香あすかそっくりなんだ。

 おれなかではヒロイン、イコール明日香あすかとインプリンティングされている。

 もうこれはおれ常識じょうしき性癖せいへきなのだろう。

 だが現実げんじつ理想りそうことなる。

 でもんだら100%自分じぶんがネタだってかるだろう。

 そんなもの……ませられるわけがない。


 とまあ予約席よやくせきだったので普通ふつう目的もくてきえき到着とうちゃくした。

 さてじいちゃんがむかえにるはずだが……。



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