4.身体的接触による強化 (4800文字)

●4.身体的しんたいてき接触せっしょくによる強化きょうか


 宿屋やどや一室いっしつ

 おれエルフelf美少女びしょうじょラティアLatiaじょうは、おな部屋へやにいた。


「じゃあつぎは、わたしルークLukeさまをおきしますね」


 これだから無垢むくこまる。


「つまりだな」

「はい?」

おとこからだおんなくのをな『ソープsoap』ってうんだ。ソープsoapいたことないか?」

ソープsoap。えっ、やぁん。わたしったら、はしたないわ」


 きゅうかおにして、そっぽをいたとおもったら、かおおおってしまった。

 よほどずかしかったらしい。


 ソープsoap売春ばいしゅん戯曲ぎきょく表現ひょうげんとして、非常ひじょうによく使つかわれる。

 本来ほんらいの「男性だんせいからだ隅々すみずみまで女性じょせいからだ使つかって綺麗きれいにする」という意味いみっている少女しょうじょすくないが、エッチなことをするという意味いみっているのだろう。


「ち、ちがいます。誤解ごかいです。せ、背中せなかだけ」

「ああ、だろうとおもった」

「もう、かってるなら、茶化ちゃかさないでください」

わるわるい」


 おれ上半身じょうはんしんはだかになると、おけれたあたらしいおラティアLatiaじょうにおねがいする。

 おれ背中せなかラティアLatiaじょうタオルtowelいていく。

 たまにすべすべの素手すででもペタペタ[onomatopoeia]さわってくる。

 非常ひじょうにイケないことをしているがしてくる。


「なんかラティアLatiaじょう魔力まりょくかんじる」

かりますか、それがエンチャンターenchanter能力のうりょくです」

「ああ、あたたかい魔力まりょくだ。美味おいしそうだ」

わたし魔力まりょく美味おいしそうですか? ふふ、よかったです」


 魔力まりょくにはなんとなく、あじにおいやあたたかみなどがある。

 もちろん不味まずかんじたり、不快ふかいかんじる魔力まりょく存在そんざいする。


 とく本当ほんとう禍々まがまがしい魔族まぞく魔力まりょくとか、がしそうなほど不味まずい。


 そのてんラティアLatiaじょうは、イメージimageそのものの清純せいじゅんそうな魔力まりょくだ。

 とてもんでいて素直すなおで、よい感情かんじょうつたわってくる。

 一番いちばんちかいのは聖水せいすいふくまれる魔力まりょくだろうか。


 そう、神聖しんせい気配けはいかんじる。


 これは確実かくじつ処女しょじょなのだろう。でなければここまでよどみがまったくないのは、奇跡きせきちかい。


「かゆいところとかないですか?」

べつにない」

「じゃあ、かるかたみますね」


 今度こんど彼女かのじょが、ちからとそれから魔力まりょくすこ注入ちゅうにゅうして、かたをほぐしてくれる。

 なんか、ぽかぽかとしてくるし、めちゃくちゃ気持きもちがいい。


 いまはどこにいるかからないが、おれいもうとも、エンチャンターenchanter素質そしつすこしあったので、ちいさいころ一緒いっしょ戦闘せんとうをしたことがある。

 いもうと魔力まりょくっていて、とても綺麗きれいだった。

 あれにとてもている。


 基本きほんてきちいさいころのほうが魔力まりょく不純物ふじゅんぶつすくなく、だんだんにごってよごれていく。

 そのため魔力まりょく効率こうりつ年齢ねんれいともがっていくとわれている。


 ラティアLatiaじょうはこの年齢ねんれい少女しょうじょにしては、異常いじょうなほどよごれをこれっぽちもかんじない。

 どんな生活せいかつをしていたら、こんな綺麗きれいができるのか、思議しぎにすらおもう。


 おれ一見いっけん邪悪じゃあく黒魔術くろまじゅつだが、使つか魔力まりょくぎゃくんでいる綺麗きれい魔力まりょく必要ひつようとしている。

 矛盾むじゅんしているようだが黒魔術くろまじゅつは、くろ水晶すいしょうやドクロなどを装備そうびして「じゃはらっている」のだ。

 これは暗黒あんこくめんちた禍々まがまがしい魔力まりょく使つか魔族まぞくとは決定的けっていてきちがう。

 ほとんどすべての一般人いっぱんじんはそのへん誤解ごかいしているようだが。


 黒魔術くろまじゅつは、静謐せいひつきよらかな魔力まりょくって、その役務えきむをこなす。




 いたらあさだった。

 マッサージmassage途中とちゅうてしまったようだ。

 からだこすと、すでにきていたらしいラティアLatiaじょう満面まんめん笑顔えがおむかえてくれる。


「おはようございます。今日きょうもいいあさですね」

「ああ」


 おれはなんだか釈然しゃくぜんとしないが、ラティアLatiaじょうかお非常ひじょうにかわいい。

 なんか、このかおさえれるなら、ほかことはどうでもいいかもしれない。


結局けっきょく昨日きのうてしまったか。すまない。ベッドbedかせてくれたんだろ?」

「はい。おもったよりおおきくて、大変たいへんでした」


 愚息ぐそくのことではないのだろう。おれ体型たいけいはなしだ。

 まぎらわしいかたしないでほしい。


「それで、あの、男性だんせいってあさのご奉仕ほうししないとくるしいっていたんです。しないと、いけませんよね?」

「どこのどいつだ。あさのご奉仕ほうしとかホラんだのは」

うそなんですか? えっええっ」


 ラティアLatiaじょうあさからかおにしてくびる。

 ハレンチな自覚じかく当然とうぜんあるのだろう。


「いや、貴族きぞくなどでならご奉仕ほうしうそではないが、べつくるしいわけではない。かまわなくていい」

「よ、よかったです。ちょっとまだ覚悟かくごが……」

「ああ、すまんな」

「いえ、はやとちりしたわたしわるかったです」


 とてもいたたまれない。

 およいでいる。おたがつぎ言葉ことばない。



「あのな、ひと誤解ごかいきたい」

「なんでしょう?」


 ったきよらかなあおひとみで、おれつめてくる。

 そのひとみまれそうだ。

 おれ彼女かのじょチャームcharm魔術まじゅつかっているのでは、とうたがいたくなるほど綺麗きれいだ。


「ご、ごほん。黒魔術くろまじゅつは、清涼せいりょう魔力まりょく大量たいりょう必要ひつようとしている。たりまえだが、処女しょじょ童貞どうてい優先ゆうせんされるべき重要じゅうよう要素ようそだ」

「えっ、そうなんですか?」

「そうだ。だからおれは、ラティアLatiaじょうに、なにもしない」

「そうなんですね。ホッとしました。でもなんだか残念ざんねんです」

「できれば、おれパートナーpartnerになってくれるなら、処女しょじょきよらかなからだでいてほしい。もちろんこころもだ」

「はっはい。が、頑張がんばらせていただきます」

頑張がんばるというか、なにもしないでくれ、へんなことは」

「はいっ」


 笑顔えがおふたたせてくれる。

 なんだか、よくからない信頼しんらいたようだ。


「それでは、あさはんべようか」

「おなかすきました~」


 おなかをさする彼女かのじょはなんだかむかしいもうとみたいでかわいい。





 朝食ちょうしょくをそのへん屋台やたいませた。

 冒険ぼうけんしゃギルドguild依頼いらいばんによれば、ゴブリンgoblin繁殖はんしょくしているという情報じょうほうっていた。

 おれたちはまちて、そのちかくのもりへとかう。


ゴブリンgoblinなんですよね」

「そうだな」

わたし、その、戦闘せんとうしょくではないので、こういうのはじめてなんですけど」

だい丈夫じょうぶだ。おれ何回なんかい経験けいけんがある」

危険きけんランクrankは?」

冒険ぼうけんしゃギルドguild認定にんてい難易なんいランクrankCだな。パーティーpartyランクrankCであれば苦労くろうするがたおせるレベルlevelだ」

わたしたちはペアpairですし、わたしたたかえないので、実質じっしつソロsoloですよね」

「そうだな」


 とにかく早足はやあしで、現場げんばかった。

 日帰ひがえりでかえりたい。なるべく余裕よゆうって。


 野営やえいなにからなにまで、面倒めんどうくさいのだ。

 とくメンバーmemberすくないと、夜警やけいまわせないのでこまる。


「えっとソロsoloランクrankBだと、パーティーpartyランクrankいくつ相当そうとうなんですか?」

状況じょうきょうによってことなるので、なにともえない」

てき今回こんかい多数たすうですね。個々ここ脅威きょういランクrankEですけど、かずおおいです」

「そうだ。おれたちきだ」

てきおおいのに?」

っただろ、おれ範囲はんい魔法まほう一網打尽いちもうだじんにできる」


 こうして現場げんば付近ふきん到着とうちゃくした。

 すでにかすかだが、ゴブリンgoblin悪臭あくしゅうがする。

 実際じっさい悪臭あくしゅうと、邪悪じゃあく魔力まりょくにおいの両方りょうほうかんじる。


 目標もくひょう発見はっけん

 おれたちはゴブリンgoblin集落しゅうらく目前もくぜんに、木陰こかげかくれている。


作戦さくせんどおりでたのむ」

「といっても、背中せなかからはなれるな、ですよね」

「そうだ。いくぞ」

「はいっ」


 おれはしる。

 すぐうしろをラティアLatiaじょうがついてくる。

 身体しんたい能力のうりょくおれおなじくらいか、むしろエルフelfである彼女かのじょのほうが身軽みがるだ。

 エルフelf筋力きんりょくはそうでもないが全体ぜんたいてき素早すばやい。


 ラティアLatiaじょう気休きやすめではあるがゆみ装備そうびして背負せおっている。

 クラスclass自己じこ申告しんこくせいというか、自分じぶん名乗なのるものなので、アーチャーarcherクラスclassでなくてももちろんゆみ使つかってもいい。

 ただそれが一番いちばん得意とくいではないという認識にんしきなのだ。


 ゴブリンgoblin集落しゅうらくのどなかまで、一気いっきはしってきた。


「さあ、ゴブリンgoblinども、どこからでもい」


『ゴブゴブ、ゴブゴッ』

『ゴブゴブ、ゴブッ』

『ゴブ。ゴブッ、ギャギャ』


 ゴブリンgoblinたちがさわぎだして、だんだんあつまってくる。


「もっとだ。もっとあつまっていいぞ」


 すでにラティアLatiaじょう緊張きんちょうしてかたまっておれ背中せなかいている。

 背中せなかあたたかい。

 それだけじゃない。すごくやわらかいものが左右さゆうならんでふたけられている。

 さらに「はぁはぁ」という息遣いきづかいが至近しきん距離きょりでする。


 こしまわされていて、まるで恋人こいびと同士どうしがじゃれてきついているみたいになっていた。


 なんだか劣情れつじょうもよおすが、それどころではないので、邪心じゃしんはらう。


はじめるぞ、ラティアLatia

「は、はいっ」


 背中せなかけられた体全体からだぜんたいから、ラティアLatiaじょう魔力まりょくながんでくる。

 さらにおれなか魔力まりょくざって、制御せいぎょされているのをかんじる。


 エンチャンターenchanter効果こうかだ。


イノセントinnocentエリアareaファイアfire


 ボワッと周囲しゅういがる。


『ギョエエエ』

『グギャアア』

『ギャアアア』


 こう範囲はんいゴブリンgoblinたちが悲鳴ひめいげて、だるまになっていく。

 いつもの範囲はんいばいはある。威力いりょくもこのまえより格段かくだんたかかった。


 ほのお業火ごうかは、すべてをくして、あとにははい魔石ませきだけがのこされる。


「すげえな」

「そうですね……すごいです」


 おれラティアLatiaじょうエンチャンターenchanter能力のうりょくをほめたのだが、彼女かのじょほのお範囲はんい魔法まほうをすごいとっているようだ。

 これはおれちからじゃない、彼女かのじょあってのちからだということは、おれ一番いちばんっている。


「よし、このままつづけるぞ」

「はいっ」


 余計よけいにギュッと背中せなかにくっついてくる感触かんしょくがある。

 背中せなかにはやわらかいものがさえつけられていた。

 その感触かんしょくがたまらない。


プラチナplatinumエリアareaアイスiceブリーズbreeze


 おれはこのさいなので、ちが魔法まほうためしてみる。

 こおり魔法まほうだ。凝結ぎょうけつ魔法まほうともいう。

 ゴーストghostにはかないが、もりなかふねうえなどうつりそうなときには、重宝ちょうほうする。

 あとは耐性たいせいがあるファイアfireドレイクdrakeなどを相手あいてにするときとか。


 ゴブリンgoblinどもはこおりけにされて、うごかなくなる。

 そしてこおりれる。中身なかみごと粉々こなごなくだけたのだ。

 もちろんゴブリンgoblinこなつぶになって、全滅ぜんめつした。


 あとには魔石ませきのこるのみだ。


「すごい」

「ああ、そうだな」


 のこりのゴブリンgoblinたちは、それをいかくるって余計よけいあつまってくる。

 頃合ころあいを撤退てったいという思考しこうはないのだろうか。


 おれたちはこの作業さぎょうつづけて、ゴブリンgoblin集落しゅうらくは、すぐに全滅ぜんめつした。

 いまちている魔石ませきひろあつめている。


簡単かんたんでしたね」

「ああ」


 ラティアLatiaじょうすこはなれている。

 のこりがいるかもしれないので、警戒けいかいおこたらないが、それでも戦闘せんとうちゅうほどではない。


「あの、わたし、すごいドキドキ[onomatopoeia]しました」

「そっか」

「はい。とてもつよくて、たよりになって、素敵すてきだなって」

れちゃったか?」

「はいっ」

「おいおい」

冗談じょうだんですよーだ」

「そうか」


 おれがそっけない態度たいどしめすと、ぷいぷいほほふくらませて不満ふまんがおになった。

 そう表情ひょうじょうもするんだな、なんだかかわいい。


 一応いちおうこれはおこっているのかな。


 おれたちは依頼いらい完遂かんすいして、冒険ぼうけんしゃギルドguildもどった。

 もちろんギルドguildにはラティアLatiaじょうってもらう。

 もどってきた彼女かのじょはやはり金貨きんかふくろっていたが、ちょっとあせっている。


「あ、あの、ルークLukeさま

「どうした」

「なんでも『ウォーロックwarlockルークLukeというひとドルボDorboというひとさがしている』そうでメッセージmessageは『至急しきゅうパーティーparty復帰ふっきしてほしい』だそうです。おたずものになってました」

「あいつ……」

「どうするんです?」

今更いまさら復帰ふっきなんてするわけないだろ、アホか」

「そうですよね。わかぎわ台詞せりふなんて、ひどかったのおぼえてます」

「だろ。今更いまさらもどれとわれても、もうおそいんだよ」


 ラティアLatiaじょうはなしによると『勝手かってパーティーpartyけたルークLuke』のわりにドルボDorbo凄腕すごうでランサーlancerめてみたものの、そいつはおれのようにうまくまわれず、すでに散々さんざんっているとか。

 それでなんとしてもおれ復帰ふっきしてほしいようで、周辺しゅうへんまちにおたずものウォンテッドwanted依頼いらいかねけて早馬はやうましているらしい。

 さすがにAランクrankパーティーpartyのお家騒動いえそうどうは、冒険ぼうけんしゃたちの格好かっこう噂話うわさばなしらしく、ギルドguildないはなしているひと何人なんにんもいたのをみみてていてきたようだ。


おれソロsoloいや、ペアpairのほうがきだからな」

きっていました? わたしのことですか? そうですよね?」

ラティアLatiaじょう能力のうりょくきだとったんだ」

「それってわたしきってこととおなじですよね、もう一回いっかいってください。ラティアLatiaきって」

「いいだろべつに」

「よくないです。むふぅ」


 ラティアLatiaじょうのことは、ぶっちゃけきだ。

 それも一目惚ひとめぼれだ。彼女かのじょ神秘的しんぴてき聖女せいじょのようでとてもかわいい。

 それからエンチャンターenchanterとしても、こんないい人材じんざいはいない。

 公私こうしともに仲良なかよくしていきたい所存しょぞんである。


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