15.黒魔術師ウォーロック

1.パーティー追放 (4000文字)

●タイトル

卑怯ひきょうくろ魔術まじゅつウォーロックwarlockだとしてパーティーparty追放ついほうされたけど、ユニークuniqueスキルskill範囲はんい魔法まほうソロsolo余裕よゆうでした。今更いまさらもどってこいとわれても、もうおそ


●あらすじ

 ルークLukeくろ魔術まじゅつウォーロックwarlockだった。この世界せかいではウォーロックwarlock安全あんぜん後方こうほうから単体たんたい魔法まほう攻撃こうげきするだけの「卑怯者ひきょうもの」という烙印らくいんされている。

 それを承知しょうちうえパーティーpartyれていたはずなのに、あるパーティーpartyから追放ついほうされてしまう。

 ルークLukeソロsolo魔術まじゅつになったが必殺ひっさつわざがあった。それは「範囲はんい攻撃こうげき魔法まほう」だった。周囲しゅうい味方みかたがいると使つかいづらいから封印ふういんしていたが、ソロsoloなら余裕よゆうだ。

 大量たいりょう魔物まもの一度いちどほふつづけ、最強さいきょうソロsolo魔術まじゅつになろうとした。

 しかしエンチャンターenchanterエルフelf彼女かのじょい、最強さいきょうコンビcombinationむことになる。


●1.パーティーparty追放ついほう


 おれくろ魔術まじゅつウォーロックwarlockだ。

 けんのようなからだうごかかすのは、どちらかといえば苦手にがてだった。

 だからすすんでこのみちえらんだわけだが、この世界せかいウォーロックwarlockは、安全あんぜん後方こうほうから単体たんたい魔法まほう攻撃こうげきするだけの、卑怯者ひきょうものという烙印らくいんされ、さげすまされていた。

 くろふくくろローブrobeんで、あやしいつえアクセサリーaccessory装備そうびする姿すがたも、どちらかといえば、気味きみわる格好かっこうえる。

 かっているひとからすれば、とんだ風評ふうひょう被害ひがい勘違かんちがいのたぐいだが、一般いっぱんじんきびしかった。


 十二じゅうにさいころ、それを承知しょうちうえおれパーティーparty加入かにゅうさせ、ダメージdamageディーラーdealer任命にんめいしたのは、ほかならぬリーダーleaderドルボDorboのやつだった。


 それからねんあま経過けいか

 おれたちはAランクrankパーティーpartyにまでのぼめた。

 ギルドguild依頼いらいクエストquest農村のうそんったかえりにったまちだった。

 すこ高級こうきゅう宿屋やどやまろうとしたところ、主人しゅじん文句もんくわれたのだ。


「わりいな。卑怯者ひきょうものウォーロックwarlock一行いっこうさま宿やどめるわけには、いかん。ていってくれ」


 おれクラスclassてた主人しゅじんするどい。

 このかた田舎いなかではAランクrankだなんてらないのだろう。

 Aランクrankっている都会とかい高級こうきゅう宿やどではおれたちを贔屓ひいきしてくれているのにたいして、あつかいがせい反対はんたいだった。


 そしてリーダーleader擁護ようごしてくれるどころか、こうはなった。


「もういい。いちいちあしる。ルークLuke、おまえはクビだ。パーティーpartyから追放ついほうだ。さっさとどっかへいっちまえ。宿屋やどや主人しゅじん、これでいいだろ?」

「ぐぅ」


 おれなにえない。ぐうのないとはうが、ぐうのしかなかった。

 それにつづ言葉ことばおれらない。

 はなせないわけではないが、はなすのは苦手にがてだ。

 誤解ごかいなく正確せいかくに、相手あいて自分じぶん意見いけん理解りかいしてもらうのはむずかしいのだ。おれはそれをよく理解りかいしているから、こういうときには、なにえなくなる。


「ほら、どこへでも行け」


 宿屋やどやからほうされ、おれ一人ひとりる。

 いま十六じゅうろくさいになった。

 ドルボDorboとは固定こていパーティーpartyまえからのねんいになる。それを宿屋やどや主人しゅじんのたった一言ひとことで、すべての信頼しんらい関係かんけいかえった。


 おれはもっと治安ちあんわるそうなうら路地ろじかい、わけアリでも適当てきとうめてくれそうな安宿やすやどはいる。


「すまん。おとこ一人ひとり今晩こんばんめてくれ。さきばらいでいい」

「あいよ」


 愛想あいそわる受付うけつけのおっさんに銀貨ぎんかにぎらせると、かぎをもらう。


 むかしドルボDorboとよくこういう宿やどにお世話せわになっていた。

 それはもちろんウォーロックwarlockだったからもあるし、かねがないという意味いみでもある。


 パーティーparty共有きょうゆう財産ざいさんのほとんどはドルボDorbo管理かんり保有ほゆうしているので、おれすくない個人こじん資産しさんしかあるいていなかった。

 もちろん冒険ぼうけんしゃギルドguildけば、すずめなみだのような貯金ちょきんはあるが、しろられるのは必至ひっしだ。


 本来ほんらいパーティーparty資産しさん四分よんぶんいちおれもらえるはずなのだが、そんなことも関係かんけいなく、一方的いっぽうてき追放ついほうされたのだ。


 おれはどちらかといえば感情かんじょうとぼしい。

 いつも第三者だいさんしゃてき視点してんで、自分じぶん俯瞰ふかんしている。


 こういうとき本来ほんらいならおこるのがすじなのだろうとは、理解りかいしているが、そんな感情かんじょう欠片かけらかない。

 あきらめているともいえるし、達観たっかんしているともいえるだろう。


 さいわいなことに、さき夕食ゆうしょく酒場さかばべていた。

 宿やどではるだけだ。


 やるせない気持きもちも皆無かいむではないが、なつかしい安宿やすやどほこりっぽい空気くうきつつまれて、おれねむった。




 翌朝よくあさ、さっそく活動かつどう開始かいしだ。

 ドルボDorboたちとくわすと微妙びみょう気分きぶんになるので、あさはやきたのがよかった。


 天候てんこうれ。

 おれあらたな旅立たびだちを歓迎かんげいしているかのような、すがすがしい天気てんきだった。


ソロsoloか。ひさしぶりだな……」


 まともなソロsolo十二じゅうにさい以来いらいだ。

 リーダーleader剣士けんしドルボDorboドルボDorbo彼女かのじょヒーラーhealerリーリアLiliaリーリアLiliaいもうとシーフthiefソシリアSocilia

 おれたち四人よにんなかのよいバランスbalanceれたパーティーpartyだった。

 ただしいもうとソシリアSociliaあね同様どうようドルボDorboのほうに好意こういせていて、おれはお邪魔じゃまむしあつかいされていた。


 もとから他人たにんあいされるようながらではないのは、承知しょうちしている。


 いまごろ三人さんにんでにゃんにゃんしているかとおもうと、へんわらいがてしまいそうだ。


「くくくっ」


 おもわずくちすと、とおりがかりの子供こどもへんひとで、おれけていく。

 いつものこととはいえ、くろ魔術まじゅつスタイルstyleわるい。


 適当てきとう露店ろてん朝食ちょうしょくませて、一人ひとりまちる。


 かうさきちかくの遺跡いせきパルーデルParudelはい墓地ぼち』というフィールドfieldだった。

 ここではアンデッドundeadけいゴーストghostがうじゃうじゃる。


 普段ふだんなにもないようにえて、ぽつぽつゴーストghost平和へいわあるいているだけにえる。

 しかしひとたび敵対的てきたいてき行為こういをすると、えていなかったゴーストghost大量たいりょういてて、おそかってくるのだ。

 冒険ぼうけんしゃギルドguild認定にんてい難易度なんいどランクrankB+だったとおもう。


「さあ、幽霊ゆうれいたちおどろうか。その姿すがたせたまえ」


 おれくろ禍々まがまがしいつえかかげて、まえゴーストghostける。


イノセントinnocentファイアfire


 無垢むく純真じゅんしんほのおは、くろ魔術まじゅつ使つかくせに、せい属性ぞくせいがある。

 ゴーストghostほのおつつまれて炎上えんじょうし、きて、あとには一粒ひとつぶドロップdropアイテムitemだけがのこった。


 ゴーストghost欠片かけら


 そうよばばれている。冒険ぼうけんしゃギルドguild高値たかねれる。

 さっといそいでひろう。

 しかしこれをにすることは、なかパーティーpartyであれば全滅ぜんめつ覚悟かくごする程度ていどの、戦闘せんとうになることを意味いみしている。


 まわりにゴーストghostが、次々つぎつぎいてくる。

 そのかず最低さいていでも十二じゅうにたいだろうか。


イノセントinnocentエリアareaファイアfire


 おれ固有こゆう魔法まほうエリアareaシリーズseries発動はつどうさせると、おれ中心ちゅうしんまわぜん方向ほうこうほのおつつまれた。

 かこんでいたゴーストghostは、次々つぎつぎ炎上えんじょうしていく。


 ぼと、ぼと、ぼと。


 地面じめんにはゴーストghost欠片かけら次々つぎつぎちていく。

 そして、またそれをきっかけに、ゴーストghostく。


イノセントinnocentエリアareaファイアfire


 おれ感情かんじょうもなにもなく、ただ作業さぎょうのように魔法まほうとなえる。

 パーティーpartyであれば自分じぶん中心ちゅうしん範囲はんい魔法まほうなどはつことができない。

 しかしソロsoloでは、一切いっさい遠慮えんりょなしに、魔法まほう放題ほうだいとなるのだ。


 おれ固有こゆうエリアarea魔法まほうは、ソロsolo使つかうことに最適化さいてきかされていて、鍛錬たんれんかさねた現在げんざい戦闘力せんとうりょくは、一線いっせんえている。

 十二じゅうにさい当時とうじは、まだ魔法まほう威力いりょく全体ぜんたいてきとぼしく、範囲はんい魔法まほうもほとんど使つかものにならなかったが、いまちがう。


 何回なんかい何回なんかいいてきたゴーストghostも、さすがに全滅ぜんめつしたようで、ついにてこなくなった。

 足元あしもとには大量たいりょうゴーストghost欠片かけらちているので、それをすべてひろってあるいた。


 普通ふつう皮袋かわぶくろ一杯いっぱいになった。

 それを魔法袋まほうぶくろれる。


 この魔法袋まほうぶくろおれもとパーティーpartyメンバーmember全員ぜんいん装備そうびしている。

 容量ようりょう荷馬車にばしゃ一台いちだいぶんぐらいだが、ないよりはずっと快適かいてきなので、そういう装備そうび分配ぶんぱいには感謝かんしゃしておいてやろう。

 そこそこのお値段ねだんがする。冒険ぼうけんしゃ自己じこへの投資とうし必須ひっすだ。


 そのあしでささくさとつぎまちへとかう。

 もとまちではまだドルボDorboたちが活動かつどうしているかもしれない。

 ドルボDorboたちかう王都おうととは逆方向ぎゃくほうこうへとすすんだ。


 一人ひとりあるくとドルボDorboたちよりばいはやい。

 まえときよりも、あっというに、クエステンQuestenまち到着とうちゃくしてしまった。

 国内こくないうえからかぞえてはち番目ばんめぐらいにおおきいまちだろう。


 冒険ぼうけんしゃギルドguildく。


 自分じぶん受付うけつけじょうはなしかけるのはけたいが、かといってだれかをつかまえるにはだれかにはなしかける必要ひつようがある。


 ギルドguildまえ露店ろてんつつ様子ようする。


 するとギルドguildからちょっとはなれたれてなさそうな露店ろてんみょうになった。

 店主てんしゅエルフelf金髪きんぱつ女性じょせい美少女びしょうじょっていいだろう。

 しかしふくがボロい。茶色ちゃいろいシャレッけのないクソやすミニminiワンピースone pieceだ。

 そのくせっているのは、くろ魔術まじゅつ使つか呪具じゅぐ一種いっしゅくろ水晶すいしょうアクセサリーaccessoryだった。


「おきゃくさん、ねえ、おきゃくさん」

「ん?」


 おれことらしい。たしかにおれくろ魔術まじゅつだから、こののものにくわしい。

 付近ふきん人物じんぶつおれ以外いがいきゃくだろう人物じんぶつえない。


くろ水晶すいしょうですよ? どうですか」

ってる。あ、ん?」


 しかしおれ見張みはる。

 くそボロい格好かっこう似合にあわない、かなりの高水準こうすいじゅんくろ水晶すいしょうなのだ。

 なのに値段ねだんがバカみたいにやすい。


 いや、店主てんしゅはバカだろう。どうても専門店せんもんてんならばい以上いじょう値段ねだんはする。


「おじょうさん、バカだろう」

「ひゃい?」


 エルフelf美少女びしょうじょは、びっくりしたのだろうまるくする。


「これ、やすすぎる。どうかんがえてもやすい。おかしい」

「え、そ、そうなんですか? はうぅ、すみません、よくからなくて」


 かおあかくして、およがすその表情ひょうじょうは、どこかあいらしい。

 正直じょうじきおれはびっくりした。おれはそれをかわいいとおもってしまったのだ。

 第三者だいさんしゃてき視点してんわすれていた。


「たとえやすすぎても、おきゃくさんがよろこんでくれれば、わたしもうれしいから、べつにいいんです……」


 そうって、微笑ほほえ美少女びしょうじょ


 おれは、ひとでこの少女しょうじょった。

 も、性格せいかくも――。


 いいなのだろう。近年きんねんめったにない、その邪気じゃきのない笑顔えがおはとてもまぶしくえる。


「ああ、おじょうさん、名前なまえは?」

「えっ、その、ラティアLatia、です」

ラティアLatiaじょう、いいか? これをって冒険ぼうけんしゃギルドguildって換金かんきんしてきてほしい」

「はい? なんでわたしが……ってこれ、ゴーストghost欠片かけら、こんなにたくさん」

「そうだ。おれたおしてきた。こまかいことはくな、お使つかクエストquestだ。成功せいこうしたら一割いちわりやろう」

「いちわり、えっそんなにたくさん、いただけません」

「いや、いいんだ」


 おれゴーストghost欠片かけらふくろげ、ラティアLatiaじょうける。

 そのままり、彼女かのじょはなんとかって、ふらふらギルドguildなかはいっていく。


 もしまんいち、このまま金貨きんかまたはゴーストghost欠片かけらげされたら、それまでだが、おれがなかったことをうらむだけだ。

 おれすこ少女しょうじょ正直しょうじきさをためすようなことをさせて、罪悪感ざいあくかんかんじている。


 十数分じゅうすうふん任務にんむ無事ぶじ完遂かんすいしたのか、満面まんめんみでギルドguildからてきてスキップskipしておれいてくる。


「ちょっ」

「はいはい、おつかいクエストquestできました~」

くな、いいにおいがする!」

「いいにおいならいいじゃないですか」

「よくない、はなれろ」


 彼女かのじょがやっとはなれると、ふくろはいっている金貨きんかやませてくれる。

 そしておれ適当てきとうかぞえて、一割いちわり彼女かのじょわたす。


「えっ、ええっ、本当ほんとうにこれをわたしに? あたまだい丈夫じょうぶですか?」

失礼しつれいな。約束やくそくしただろ。わすれたのか?」

約束やくそく……たしかにしましたけど、でも、あんなの。でもでも、ありがとうございます~」

「おい」

「すごく、うれしいです」


 エルフelfなのに尻尾しっぽをぶんぶんいぬ獣人じゅうじんかとおもった。

 こんなところも、かわいくおもう。

 おれもどうかしている。


 彼女かのじょいわく、これがラティアLatiaおれとの運命的うんめいてき出逢であいだった、らしい。

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