第11話 毒蛇
燃え盛る短剣とメイスを消滅させ、俺はツヴェルと向かい合う。
「了解、マスター。ドウスレバ良イデショウカ」
「それは宿題だ。今日は好きに狩りをしていいから、明日の朝までに答えを出すこと。出来るか?」
「了解、マスター」
「よし、良い子だ。もし朝まで分からなくても、その時は気にせずに聞きに来ていいからな。でも、考えるのを止めるのはダメだ。いいか?」
「ハイ、マスター」
ツヴェルは頷くと、結界の外に飛んでいった。
「……さて、どうだった? ティアマト」
『ゴーレムを子供かなんかのように扱っておるのは気になるが……まぁ、こだわっただけあって言われたことをものに出来る学習能力はあるんじゃないかの。取り敢えず、自分の体質を活かした戦い方も覚えるべきだと思うがの』
確かに、体が流動する金属のようなもので出来ているツヴェルは斬られても叩かれても大したダメージは無い。直径10センチ程度のコアだけを守れば良いのだ。
しかも、そのコアですら特殊な素材でコーティングしてあるのだから並大抵のことでは壊れないのである。
「……地面に潜って、地中から攻撃するとか?」
『中々に外道な戦法じゃな……確かに、アースゴーレムのコアを使っておる以上、可能かも知れんが』
「後は、予め刃に土を付着させといて発射した後はアースゴーレムコアの能力で土を巻き戻して後ろから戻ってきた刃で串刺し、とかどうだ?」
『ふむ、名案じゃが、それならかなり勢いを抑えて撃たねばならんぞ? 地面に潜る程度なら兎も角じゃが、アースゴーレムの能力で土を動かせる力はそこまで強力ではない。元々は自分の体を修復するために土を搔き集めるだけの機能じゃからの』
確かにそうか……あ、そうだ。
「スライム状態で這って近付きながら地中から触手を伸ばすってのはどうだ? 最初っから地中に潜ってるよりも不意は突けるだろ?」
『おぉ、それも名案じゃの。皮膚の色を変えるなりして人型に擬態できれば更に意表を突きやすいんでは無いか?』
「あー、それもそうだな。ただ突っ立って鞭みたいに振り回してると思いきや──」
『そうじゃそうじゃ! 何? 地面から赤い刃が?! ぐわー、と──』
あれから、ツヴェルの調整も終わり、森の中で筋トレ兼レベル上げをしていると、何やらティアマトが話し出した。
『のぅ、アマトよ。新しく解放された権能は使わんのか?』
「新しく解放された権能……? あ、忘れてたわ」
そういえば、ツヴェルの素材集めでレベルが21、
「
権能を使うと、俺の体内に何かが溜まったのが分かった。その体内に溜まった何かは、爪と歯に通じているような感覚がある。
「これは……こうか?」
何となく理解していたやり方で、爪からその溜まったものを垂らした。それは、緑色の粘性が強い液体で、地面に触れるとシュワシュワと音を立てて消えていった。
「んー、なんだっけこれ。毒だったのは覚えてるんだけど」
『お、お主、不用意に垂らすでないわッ! それは見た目よりも遥かに危険なのじゃぞ?!』
ティアマトに言われてみると、膝ほどの高さがある草が生い茂っていた地面はドロドロに溶け、液状になっていた。
「うわッ! なんだよこれッ! 流石に、やべえだろ……」
スプーン一杯程の毒液を垂らしただけで半径五メートルくらいの範囲で地面がドロドロになってしまっている。幸い、使用者である俺には影響がないようだ。
「これ、普通に使う機会は無いやつじゃないのか?」
『うむ。そのままでは使えた代物では無いな。敵の体内に流し込むのが良いのだろうが、このままでは流石に周囲にも影響が出てしまう。……ということで、妾の権能を使って中和するのじゃ』
そういえば、こいつの権能は水を操るやつだったな。スキルレベル3になったお陰で、最初のカスみたいな水の球を出すだけの能力からはかなり変わっている。
「お前の権能と言えば……ほら、結構使えるようになったぞ」
そう言って俺が指先をその辺の木に向けると、水のレーザーのようなものが発射され、そこそこ太い木を容易く貫いた。
「んで、これをこうすると……」
そのままレーザーを左右に動かすと、木は切断され、大きな音を立てて俺の方に倒れてきた。
『アマト、危ないぞッ!』
「はぁ、大丈夫だって」
心配性なティアマトに溜息を吐きながら俺は手の平を倒れ行く木に向けた。すると、手の平全体から水流が噴射され、凄まじい勢いのそれは簡単に木を吹き飛ばした。
「な?」
『…………なんか、うざいのぉ』
うざいって何だよ、うざいって。
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