第7話 新たな力
俺が目を覚ますと、俺の周りを炎が檻のように囲んでいた。近づいても熱くはないそれにそっと手を触れると炎は霧散した。
『漸く起きたか、寝坊助め。ウガルルムの奴が居なければとっくに食われていたぞ』
「そんなの知って……食われる?」
ターミネート・アサシンに人を食う性質など無かったはずだ。
『あの黒いローブの奴ではない。この森に蔓延る魔物に食われると言っておるのだ』
「は? そりゃ、こんな森で寝転がってれば食われるかも知らんが……」
と、そこまで言って気付いた。
「……そういうことか」
『うむ。あの炎はお前の傷を塞ぐためだけでは無い。お前を守る砦でもあったのじゃ。全く、最初に呼び出したのが面倒見の良いウガルルムで良かったの』
ウガルルム、めっちゃええ奴やん……。
「ウガさん。神だなぁ……」
『……ウガさん? あと神は妾じゃからな。そこ、履き違えんように』
……やっぱ、ティアマトとは器が違うわ。
「そう言えば、何で召喚能力をあの土壇場で教えたんだ?」
最初っから教えてくれてても別にいいだろう。そうでなくとも、あの黒猪と戦う時とか。
『…………妾の計画が上手くいきそうになくなったからじゃ。これ以上は、契約者といえど言うつもりはないぞ』
「……そうか。まぁ、後々な」
話すつもりは無い、か。どうせ良くない企みだろうが、無理やり聞き出すことはどうせ出来ないのだ。ならば今は放っておくのが最良だろう。
「おし、これからどうすっかな」
『妾のオススメは島の主を倒してから帰ることじゃな。ある程度の力があったから森に入ったと言えば言い訳にはなるが、ターミネート・アサシンを倒したなぞ言っても伝わらんじゃろう。有名な魔物では無い故な』
有名じゃないのか。ターミネート・アサシン。あんなに強いのに。
「まぁ、たしかにそうだな。……いや、ウガさんを出してみたらどうだ?」
『お主の魔力が足りないことが露呈するだけじゃな。逃げ場の無い森の中で僅かな間しか出せないのは致命的じゃからの』
確かに、そうだな。しかもそんなことでウガさんを呼び出すのは失礼だ。
「けど、俺が島の主に勝てるか?」
主人公の島と同じなら、この島のボスはジャイアント・アースゴーレムだ。一対一ならターミネート・アサシンの方が厄介だが、あのボスは体力が高く、ウガさんでも俺が気絶するまでには削り切れないだろう。
『お主がどんな化け物を想像しておるかしらんが、この島の主はジャイアント・アースゴーレムじゃ。ちょっと面倒じゃが、それだけじゃの』
「お、お前、ジャイアント・アースゴーレムが化け物じゃなかったらなんなんだよ!」
少なくとも、俺はゲーム内でかなり苦戦したぞ。具体的には、三敗。
『……お主はターミネート・アサシンを倒したのじゃぞ? ……面倒じゃからステータスを自分で見ろ』
ステータス……?
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Race:
Job:
Name:
■スキル
【
[
[
[
【剣術:SLv.4】
【短剣術:SLv.3】
【槌矛術:SLv.3】
【火魔術:SLv.2】
【水魔術:SLv.3】
【風魔術:SLv.1】
【気配察知:SLv.3】
【気配遮断:SLv.2】
【魔力操作:SLv.5】
【HP自動回復:SLv.3】
【MP自動回復:SLv.4】
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……レベル、めっちゃ上がってるじゃん。
そうだ、忘れてたわ。あいつそこそこ経験値うまいんだった。それに、新しい権能も解放されてるな。
「
別に声に出す必要は無いが、発声した方が楽ではある。そして、
文字通り
原作ではこれを使えば行動回数が増えるという仕様だった。戦ってるボスの行動回数がいきなり増えるのは正直クソホラーだった。
「スラッシュ、ってな」
ザバリ、と通りすがりのブラックボアの首が斬られた。
スラッシュとは、ゲームでは剣術スキルの中に内包されていて、魔力を纏わせて攻撃力を上げ、その剣で敵を斬るだけの技だった。
現実では普通に魔力を纏わせることができるので、剣術スキルはいらないかと思われそうだが、剣術スキルがある時のスラッシュと無かった時のスラッシュでは威力が明らかに違うので、剣術スキルは単純に威力を強化してくれていると見るべきだろう。
因みに、今の斬撃は別に魔力を纏わせていないため、なにもスラッシュでは無い。
『……やはり、中々強力じゃな』
「だな。これは強いし、しかも使いやすい」
ウガルルムのメイスと短剣を出すのもそうだが、いつでも楽に使えるスキルは良い。やはり、汎用性は大事である。
「でも、結構魔力食うなこれ。そこそこMP増えたってのにこれか」
ステータスに記載が無いのにMP量が分かる理由は普通に魔力操作で体内の魔力を探っているだけである。体内で操れる魔力の量がイコールでMPになる。
因みに、龍者はMPが圧倒的に多いジョブなので、レベルアップ時のMP上昇量は多いが、その分沢山のMPを消費するジョブでもある。
『まぁ、その調子なら30分くらいは保つじゃろう。だったら、問題ないの』
「それもそうだな。じゃあ、行くか」
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