27. イノシシと帝都

●27. イノシシと帝都ていと


 イノシシレースの二回にかいせん。もうだいぶれたものである。


与太郎よたろう二回にかいせん頑張がんばるぞ」

「ブーブー」


 いいいいおれはイノシシの与太郎よたろうでてやる。

 今回こんかい対戦たいせん相手あいて普通ふつうのおねえさんと冒険者ぼうけんしゃふうのおじさんだった。

 今回こんかいは、特筆とくひつすべきことはなく、三人さんにんとも普通ふつうかんじですす僅差きんさ一着いっちゃくになった。


にいさん、なかなかやるじゃねえか」

「あの異国いこく冒険者ぼうけんしゃ油断ゆだんならねえ」


「ホクトさん、カニまであと一勝いっしょうです。頑張がんばってください」

「ケガしない程度ていどに、ぼちぼち頑張がんばってね」


 ソティとピーテも応援おうえんしてくれた。


三位さんいまでは決定けっていですね。さすが見込みこんだだけのことはあります」


 おれをスカウトしたウェコエがこえけてくれる。

 けとかの準備じゅんびために、決勝けっしょうせんまで若干じゃっかん時間じかんがあった。


 おれたちは休憩きゅうけいで、イノシシスープというものんでいた。

 トマトとイノシシのにくはいったミネストローネみたいなやつだった。

 そこそこうまい。

 でも与太郎よたろうまえでイノシシスープというはまずいもしないでもない。


 こえのでかいのが司会しかい進行しんこうひと発言はつげんする。


「いよいよ決勝けっしょうせんです。参加者さんかしゃ準備じゅんびをおねがいします」


 おれ与太郎よたろうれてってスタート地点ちてんでスタンバイする。


 今回こんかいみぎからおれ二〇にじゅっさいちょっとぐらいの青年せいねんアデル、左側ひだりがわ一六じゅうろくさいくらいおんなデイジーだった。

 おれ以外いがいはこのむら住人じゅうにんみたいだ。

 アデルはなんかちょうというかつきがわるい。

 一方いっぽうのデイジーは笑顔えがお可愛かわいい、あかるいのようだ。


「よーい。スタート」


 三人さんにんとも同時どうじにスタートした。

 アデルはいきなり左側ひだりがわ進路しんろって、デイジーを妨害ぼうがいはじめた。

 そのままデイジーのイノシシをばしてしまう。

 デイジーはなんとかっているけれど、おくれてしまう。


 つぎのターゲットはおれみたいだ。

 アデルは今度こんど右側みぎがわってきて、おればそうとする。

 しかしひだりみぎへと移動いどうしたので、若干じゃっかんおれほうはやかった。

 おれはそれを無視むしして、ひたすらすすむ。まえまえへ。


 そのまま障害物しょうがいぶつジャンプになり、おれはひたすらアデルを無視むししてまえすすむ。

 アデルは障害物しょうがいぶつがあるためうまくおれ邪魔じゃまできずにいた。

 結局けっきょくそのままゴールまですすみ、おれ優勝ゆうしょうわった。


 すぐに表彰ひょうしょうしきになった。


「では、優勝ゆうしょう冒険者ぼうけんしゃのホクト。副賞ふくしょうだいりくガニ一匹いっぴきまるごとだ。おめでとう」


 こえおおきい司会しかいひとおれ優勝ゆうしょうげて、大会たいかい終了しゅうりょうした。


「「優勝ゆうしょうおめでとうホクト(さん)」」

「カニありがとうございます」


 若干じゃっかん一名いちめい、なんかちがうが、みないわってくれた。


 今日きょう晩御飯ばんごはん宿屋やどやでおねがいしてだいりくガニを料理りょうりしてもらう。

 まずは、新鮮しんせんなのでなまガニのしおで、グラタン、パスタなどをつくってもらった。

 ウェコエもごはんにはばれて、四人よにんむすめおれとで食卓しょくたくかこむ。


今回こんかい特別とくべつだよ、さあさあみんなべ」


 宿屋やどやのおばちゃんがすすめてくる。

 うす塩味しおあじとカニの甘味あまみ大変たいへん美味おいしい。

 カニは大量たいりょうだったので、おな食堂しょくどう居合いあわせたひとたちにもおすそけをした。


「カニ、カッニッ、カニカニカニ」


 ソティはいつものカニのうたみたいなのをっていた。もうこのうた一生いっしょうわすれないんだろう。


「ソティさんはカニ大好だいすきなんですね」


 ウェコエがソティのカニ大好だいすきなのをよく理解りかいしたようだ。

 こうして一ばん副賞ふくしょうのカニをべつくした。


 翌朝よくあさ宿やど馬車ばしゃ出発しゅっぱつする。


「そんじゃ、そろそろ出発しゅっぱつするよ」


 街道かいどう沿いははたけ延々えんえんつづいている。

 たまにはやしなどもある。


 アリスは相変あいかわらず、ポコジャーキーばかり合間あいまべていた。


ひまですね。ホクトさん」

「なに平和へいわ一番いちばんさ」


 いくつかまち経由けいゆして、海沿うみぞいに街道かいどうてきた。


て! すごい。うみだよ。うみ。ウミ、ウミ、ウミ」


 めずらしくピーテがはしゃいでいる。いつもは冷静れいせいなほうなのに。


「すごいですにゃ。うみといえば、カニ。カニとえば、うみなんですにゃ」


 ソティは相変あいかわらずだ。


うみならってるウサ。おおきなかわがもっとひろくなっただけウサ」

「アリス、うみはしょっぱいんだぞ。塩味しおあじなんだ」

ってるウサ!」


「フルは?」

わたしは、まえたことがあるから」

「そうなんだ。物知ものしりなんだな」

わたしえらいのですっ。えっへん」


 みちうみちかくまできていて、かぜつよい。

 そして、しおにおいがしてくる。


「なんか、へんなにおいがするウサ」

「それがしおにおいだな。うみにおいだ」

うみ、ウミ~。ウミ~。へんなにおぃ~」


 ピーテのテンションがたかい。なんかうたうみたいに「うみ」とっていた。

 馬車ばしゃ今日きょう快調かいちょうだった。


 かわわたり、はたけながめて、どんどんすすんでいく。

 そしてついに、帝都ていとミャーモニーに到着とうちゃくした。


 帝都ていと海沿うみぞいに沿って出来できている。ここは河口かこうになっていてかわまちまわりをかこんでいて、その中州なかすまちがあるのだ。

 なんっても帝都ていとなのででかい。

 かわのこちらがわにも、まずしいいえならんでいた。


 おれたちの馬車ばしゃは、かわかるはし検問けんもんで、順番じゅんばんちのれつ昼過ひるすぎからならんでいた。

 だいぶ時間じかんかってなんとか検問けんもんとおばんになった。


つぎ


 門番もんばん兵士へいしおれたちをぶ。


黒髪くろかみに、ねこいぬ、ウサギの獣人じゅうじん忠誠ちゅうせい奴隷どれい。そしてエルフの美女びじょ。おまえがホクトだな」

「なんでおれ名前なまえを……」

皇帝こうていはなんでもお見通みとおしだ。おまえたちがるのも伝令でんれいっていたのだ」

「それはありがたいです」

「で、どのがおりなんだ。みんな可愛かわいいじゃないか。もうヤッたんだろ」

「いえ、まだしてませんが」

「おまえそれでもたまいてるのかよ。おれはウサギちゃんがいいな。一晩ひとばんしてくれよ」

「いくらまれても、それは無理むりですね」

「そうか。まあいい。宿やどめたら皇宮こうぐうくように。はい。ってよし」


 アリスは、両手りょうてむねいだいて、かおにしてふるえていた。

 一晩ひとばんしてほしいとかわれて、想像そうぞうしてしまったみたいだ。


わたしされるなんていやウサっ」

「ウサギちゃんはウブなんだな。可愛かわいいな」


 門番もんばんたちはからかってニヤニヤわらいをかべて見送みおくってくる。

 おれたちはかれらにられながら通過つうかしていった。


 はしわたったさきは、どのいえ二階建にかいだ以上いじょうで、赤茶あかちゃのレンガのいえおおい。

 まちひとたちはあかるいかおおおくて、みんな、それなりの格好かっこうをしていた。

 カラフルなふくおおくて、きたななりのひとすくないようだ。


 帝国ていこく帝都ていとはそれなりの善政ぜんせいでにぎわっているようだ。

 宿やどはどうしようか。

 適当てきとうみちすすんで、宿屋やどやさがす。門番もんばんのおじさんにけばよかった。


 おかねはたくさんあるにはあるけど、いつなにがあるかからない。

 だから、表通おもてどおりのたかそうな宿やど遠慮えんりょする。


 すこすすんで適当てきとうみち馬車ばしゃめて、露店ろてんでフルーツをう。


「リンゴをえっと人数にんずうぶんください」

「はいよ、毎度まいどあり」


 みせのおばちゃんは、麻袋あさぶくろにいれてリンゴをくれる。


馬車ばしゃめられて、奴隷どれい一緒いっしょまれるやす宿やどさがしてるんだけど」

「なるほどね。それならあっちのみせがいいよ」


 おばちゃんに大体だいたい場所ばしょ名前なまえいた。

 うむ。なるほどからん。

 おばちゃんの子供こどものまだはちさいぐらいのおんながいたので、案内あんないしてくれることになった。


「おじさん、つぎみちみぎだよ」

「おおぅ。おれはおじさんなんだな」

「そうだよ。おじさんじゃないの? おばさんだった?」

「いや、おじさんだな」


 なんとかみち間違まちがえずに、たどりけた。

 おんなには、ミルクあめふたつあげておく。


「おじさん、ありがとう」

「おう。ミルクアメっていうんだ。アルバーンでってたんだぞ」

「アルバーンってどこ?」

「えっとデコア王国おうこく首都しゅとだよ」

「デコアってどこ? 首都しゅとってなに?」

「うん。えっと、とおとなりくにだよ」

「そうなんだ」

一人ひとりかえれる? 大丈夫だいじょうぶ?」

「うん。これぐらい平気へいきだよ」


 ちょっと不安ふあんだけど、おんなかえっていった。

 これが治安ちあんわるまちでは、ひとさらいにあったり奴隷どれいにされたりする危険きけんがある。

 このくにはそのへん安心あんしんできるようだ。


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