2. 初めての剣術、森探索

●2. はじめての剣術けんじゅつもり探索たんさく


 翌日よくじつあさはんべたあとおれはピーテとって、けん上手じょうずなおっさんのところった。この世界せかい危険きけんものがいっぱいいるという。なにをするにもまず自衛じえいのために戦闘せんとう訓練くんれん必要ひつようだとのことだ。ほかにすることもないし。


「よう、ひとぞく坊主ぼうずきたえたいのかい」


 猫耳ねこみみはかわいいが、半袖はんそでふくからはみ筋肉きんにくがムキムキだ。おっちゃんのこうがわでは、ちいさい子供こどもたちがななにんぐらい木刀ぼくとう素振すぶりをしている。


けんやり、ナイフ、弓矢ゆみや、なにがいい? おれはなんでもできるが、けん初心者しょしんしゃにおすすめだぞ」

やりがかっこいいかな」

やり初心者しょしんしゃにはむずかしいぞ。けんがおすすめだぞ」


 弓矢ゆみやむずかしそうだ。ナイフはよわそうだ。おすすめどお剣術けんじゅつにしよう。というか、おっちゃんけん以外いがいおしえるなさそうだし。


けんでおねがいします」

「うむ、素晴すばらしい選択せんたくだ」


 おっちゃんから木刀ぼくとうり、まずにぎかた簡単かんたんかたおそわる。ピーテもなぜか一緒いっしょになって木刀ぼくとうっている。


素振すぶひゃっぽんだ。いち鍛練たんれん鍛練たんれん三四さんしがなくて、鍛練たんれんだ」


 木刀ぼくとうでも、結構けっこうきつい。だんだんうでがらなくなってくる。子供こどもたちのチラチラした視線しせんかんじて、なんだかずかしいし集中しゅうちゅうできない。

 となりのピーテはすずしいかお木刀ぼくとうっている。地味じみくやしい。ピーテのおっぱいは、あるにはあるがつつましやかで、派手はでれたりしない。残念ざんねん


「ホクトさん、頑張がんばって」

「ホクトさん、もうすこしです」


 おれがおっぱいのことをかんがえているともおもわず、ピーテは無邪気むじゃき応援おうえんをしてくれた。かわいいこえびかけてくれるって、すごくイイね。まれてはじめてだよ。彼女かのじょいないれきイコール年齢ねんれいだし。

 その応援おうえん甲斐かいあって、なんとかこなすことができた。美少女びしょうじょ万歳ばんざい


つかれた。もっとらく攻撃こうげき手段しゅだんってないですかね。たとえば、魔法まほうとか」

「ありますけど、このへんでは使つかえるひと一人ひとりもいませんね」

「どうやったら、魔法まほう使つかえるかな」

「さあ、わたしりません。ごめんなさい」


 おっちゃんがはなしいていたようで、ちかづいてくる。


魔法まほうもとからってる魔力まりょく素養そようとイメージりょくだ。できるやつはすぐできるらしいぞ。できないやつはいつまでもできないがな、おれみたいに。でもけんもいいだろ。がっはっは」


 魔法まほうあるんだ。さすが猫耳ねこみみワールド。けん魔法まほう世界せかい。ビバ異世界いせかい

 あと、おっちゃんけん大好だいすきだな。

 うでいたい。もうはたらきたくないでござる。布団ふとんはいってゴロゴロしてネットしたいでござる。


はじめは、やりぎてもいかん。今日きょうはこれでわりだ。また明日あしたおいで」


 おっちゃんはおれこころこえいたようで、つらい訓練くんれんから解放かいほうしてくれた。木刀ぼくとうかえして、ピーテのいえかえる。


つぎもり今日きょうのごはんりにきましょう」

「お、おう」


 ピーテが昨日きのうったときおな格好かっこうをして、二人ふたりもりかう。


なにるんだ?」

「サラダのっぱと、あればキノコです。おにくもいたらりましょう」


 おれ丸腰まるごしである。長袖ながそでながズボン、シューズを装備そうびしているが、武器ぶきとかはっていない。カゴもピーテがっている。


「おにくってつよい? 大丈夫だいじょうぶ?」

れているので平気へいきです。いまのところちかくにはいないようです」

「ちなみに、おにくってなにのおにく?」

色々いろいろですよ。色々いろいろ


 おれは『おにく』がてこないことをいのりながら、ピーテのあと雛鳥ひなどりのようについてあるく。なさけないが、もし表示ひょうじシステムとかあれば確実かくじつに『ホクト Lv1 HP100 MP10 スキルなし』とかである。


たてとか使つかわないの?」

「はい。けたほうが確実かくじつなので。かるわたしたてだとばされるかもしれないですしおすし」

おれけられそうにないよ」

戦闘せんとうになったら、ちょっとはなれてててください」

「はあ」


 『ですしおすし』とかこっちでは現役げんえきなんだな。まあそれはいい。初日しょにち一人ひとりもりあるまわ程度ていどにはピーテはベテランなんだろう。大丈夫だいじょうぶそうだ。


 ピーテはそのへんくさを「サラダのっぱです」とか、「キノコべられます」とかって収穫しゅうかくしていく。おれもピーテが見逃みのがしたキノコを発見はっけんした。


「キノコつけたぞ」

「それはどくキノコです。べられません」


 ピーテは見逃みのがしたのではなく、べられないから無視むししただけだった。おれ活躍かつやく機会きかい全然ぜんぜんなかった。もりやまではなく平地へいちなので、多少たしょうあるきにくいのをのぞけば、普通ふつうならあるくのは大変たいへんではない。

 したにドングリにているたねがいっぱいちていた。これは保存ほぞんしょく商人しょうにんるのであつめるらしい。やっとおれ活躍かつやくばんだ。二人ふたりでたくさんちているドングリふうたねあつつづける。しかしおれはニートで体力たいりょくがあまりないらしく、そこそこつかれた。


つかれてきた」

「そうですか。それなら食材しょくざい最低限さいていげんあつまったので、むらかえります」

「そうしてくれるとたすかる」

「でも、なにちかくにいます。おにくです」


 しかしお約束やくそくである。てきさん登場とうじょうのようだ。


複数ふくすういるみたいです。このへんではめずらしいです。こっちのほうへます」


 こうもこっちをつけているようだ。あいだから五十ごじゅっセンチくらいのリスがひきあらわれた。


「ビックリスです」

おれもびっくりするよ」


 おれまって、ピーテがまえさんメートルほどる。すでにこしけんいて、かまえている。


「ビックリスは素早すばやいので、だとけられやすいのでけんです」


 こんなことなら、おれけんってくればよかった。ないよりはましだろう。


 左側ひだりがわのリスがピーテにびかかるが、けんでいなされる。リスはけんをぎりぎりでけたようでダメージはない。なかなか俊敏しゅんびんだ。ピーテとリスがにらみう。

 それをながめていたら、いつのまにかもう一匹いっぴきのリスがおれまえまでていた。すぐにびかかってくる。

 おれうしろにたおれる。リスはおれったまま「キュー。キュー」とく。


おれ、ちょっとピンチ」


 おれうえにいたリスはいったんはなれると、またびかかってくる。おれはなんとかよこころがってそれを回避かいひする。


「キュー」


 ピーテのほうのリスのひときわおおきいごえこえ、そっちをると、リスがしてたおれていた。


「ホクトさんいまたすけます」


 ピーテがおれちかくまでて、リスを牽制けんせいしてくれる。おれはそのあいだになんとかがった。

 三度さんどリスがびかかってくるが、距離きょり若干じゃっかんありたかさがひくい。おれはここぞとばかりげた。リスはおれまえばされて地面じめんでぐったりしている。

 ピーテがあわててちかづいてきて急所きゅうしょ一突ひとつきにした。


「やりました。新手あらてはいません」

たすけてくれてありがとう」

「いえ、どういたしまして。てへ」


 おれとピーテは、あかちゃんのおんぶひものようなもので、それぞれリスを一匹いっぴきずつふくろれて背負せおってかえる。リスはおかえピーテのにより、毛皮けがわとおにく、そのほか解体かいたいされた。おにくはピーテ一家いっかぶん以外いがいをご近所きんじょさんにおすそけする。


ひとぞく青年せいねん、なかなかやるね。ありがとう」

「いえいえ、ピーテのおかげですよ」

「ピーテはいおよめさんになれるぞ」

「そんな、えへへ。わたしやりました」


 というような会話かいわ近所きんじょひととかわした。なお、普段ふだんむら周辺しゅうへん魔法まほうてき結界けっかいまもられており、動物どうぶつるいはあまり近寄ちかよってこないらしい。なんでもむら中心ちゅうしんにある長老ちょうろういえ結界石けっかいせきなるものが設置せっちされていて、それによるちからだとかなんとか。


 今日きょうばんはんはリスの塩焼しおやきにサラダ、キノコスープである。基本きほん塩味しおあじしかないのが残念ざんねんなところだが、リスもまあまあうまい。

 ちなみにトイレは一家いっかひとつあり、しきだ。しかしなかに『魔法まほう猫砂ねこすな』がかれていて、においはまったくしない。それだけでもたすかる。ねこひとぞくだけに猫砂ねこすな素晴すばらしい。この猫砂ねこすな汚物おぶつわさってしばらく経つと肥料ひりょうになるそうな。なおむらでは猫砂ねこすな輸入ゆにゅうひんなので製法せいほう材料ざいりょうなどは不明ふめいとのこと。

 異世界いせかい生活せいかつ二日ふつかはこうして終了しゅうりょうした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る