第12話 エルフちゃんと氷魔法と冷蔵庫

だい12 エルフちゃんとこおり魔法まほう冷蔵れいぞう


 ララちゃんとハルカとソフトクリームをべた。

 いえもどってきて居間いまでくつろぐ。


「ケートくん、あのね」

「なんだ?」

「いやたいしたことじゃないんですけどね。ソフトクリーム美味おいしかったなって」

「うんうん」

「エルフのさとではこの時期じきあたたかいのにこおりなんてそれこそこおり魔法まほうでも使つかわないといけなくて」

「あぁそうだよな。この世界せかいにいると冷暖房れいだんぼうって普及ふきゅうしててなにともおもわないけど」

「そうみたいで不思議ふしぎだったんです。たとえば冷蔵れいぞうとかもずっとえててすごいなっておもいましたぁ」

「だよね。あれもこおりって明治めいじから昭和しょうわ初期しょきまではなかったみたいなんだけどね」

「えっとひゃくねんくらいまえですか?」

「うん、たぶん」


 明治めいじとか昭和しょうわとかもってるのかなララちゃん。

 それならかなりのことを勉強べんきょうしたとえる。

 まったく日本にほん定住ていじゅうするっていうだけでも大変たいへんなのに、馴染なじもうとしてすごい頑張がんばってきたようだ。尊敬そんけいするなあ。


こおり魔法まほうべる氷菓子こおりがしのようなものがあって、シャーベットみたいなものなんですけどね、高級こうきゅうひんなんです」

「あぁぁ、なんとなく想像そうぞうつく」

「それであつとかになると冒険者ぼうけんしゃ魔法使まほうつかいさんがお小遣こづかかせぎとしょうしてこおりつくってくれることがあって、そのときだけやすべられるんです」

「なるほど」

「でもめったにないから、魔法使まほうつかいさんがくるのを毎年まいとしなつになるととってもたのしみにしてたんですよ」

「ほほーん」


 ちいさいララちゃんが冒険者ぼうけんしゃ魔法使まほうつかいさんのれつならんでシャーベットをっているところを想像そうぞうしてしまった。

 なんだかとっても長閑のどかでかわいらしい。

 いやぁちいさいころはめちゃくちゃかわいかったんだろうなぁ。

 いまでもかわいいけど、方向性ほうこうせいがちょっとちがうというか。おねえさんになってきた。

 ちいさいのかわいさはまた別格べっかくだ。


こおりといえばかきごおりもあるよね」

「かきごおりですか。もちろん贅沢ぜいたくひんでしたよ」

いまからべたい? たしたなおくにしまってあるはず」

「やってみたいです。やりたいです」

かった。準備じゅんびする」


 かきごおりしてきてみずあらう。

 冷凍れいとうからこおりをかきこおりうえのところにれてうえからハンドルでさえる。


「ハイ、準備じゅんびオッケー」

「いいんですか? ではまわしますね」


 おれ本体ほんたいさえて、ララちゃんにうえのハンドルをまわしてもらう。


 ガリガリガリガリガリガリ。


 あ、うん。必死ひっしにハンドルをまわすとからだれるので、そのおっぱいもプルンプルンれる。すごい。


「わっわわ、しろゆきみたいなものが」

「そうだね」

「すごい、すごい、かきごおり


 たまにざら位置いち調整ちょうせいしながらやまつくっていく。


「ハイ完成かんせい。えっとシロップも去年きょねんのがあったはず」


 冷蔵れいぞうたらまだ去年きょねんったメロンあじのシロップがあった。


「グリーンです!」

「うん、メロンあじ

「メロンっ」


 シロップをけるとこおりすこけてやまがへこむ。


「いただきます」

「どうぞ」


 ララちゃんがかきごおりべているあいだおれ自分じぶんのをつくる。


美味おいしい……うっ、あたまいたいですぅぅ」

「あはは、それそれ。アイスクリーム頭痛ずつうっていうんだよ」

「アイスクリーム頭痛ずつう、ですか?」

「そそ」


 ララちゃんがあたまをトントンしている。

 上顎うわあごやされるとのうつめたいのをいたいのと勘違かんちがいして頭痛ずつうきる、らしい。


「えへへ、たのしいです。もう一かいやっていいですか?」

「いいよ、こおりはまだのこってるからはいってるの全部ぜんぶ使つかっちゃって」

かりました」


 かきごおりなかのこりのこおりけずっていく。

 またまえでプルンプルンれるがなかったことにするか……。


「かっきごーり~かっきごーり~」


 ララちゃんがご機嫌きげんでかきごおりうごかしていく。

 むかしはよくやったし、去年きょねんもハルカが何回なんかいかやった。

 それでもずいぶん使つか回数かいすうってきた。

 お役御免やくごめんとなりそうなところを命拾いのちびろいをしたようだな、かきごおりくん


美味おいしーです」

「そりゃよかった」

「たのしいでーすぅ」

「よかったよかった」


 こおりそのものはまだ冷蔵れいぞうのこっている。

 夕食ゆうしょく、お風呂ふろはいっててきたララちゃんがパジャマに着替きがえてもどってきた。


「ララちゃん、おみずこおりれる?」

「え、れます、れます」


 水道すいどうすいをコップにそそいで冷凍れいとうからこおりれる。


みずにはくんですよねぇ。すごく不思議ふしぎですぅ」

「そっか、そうわれればそうだな。かんがえたこともなかった」

おおくのものは温度おんどひくいほうがちいさくなっておもくなるんです」

「そうだね、熱膨張ねつぼうちょうだもんな」

「そうです。でもこおりは三一番いちばん体積たいせきちいさくて、こおるとおおきくなるんでしたよね」

「そんなかんじ」

「やっぱり不思議ふしぎですぅ。魔法まほうよりも不思議ふしぎなくらいですぅ」

「あはは」


 おれには魔法まほうのほうが不思議ふしぎだ。

 いもうとのエリカをなおすのにしても、それから本来ほんらい魔法まほう「ヒール」とか「ファイア」とかの魔法まほうも。

 そうそう、おっぱいもこおりみたいにくんだよね、たしか。

 一度いちどてみたいが、一緒いっしょにお風呂ふろにははいらないとめたので、ぐぬぬ。


魔法まほうって使つかえる? たとえばここで」

「はいっ、ファイア」


 そうってゆびてると人差ひとさゆびさきからマッチみたいにともる。


「おおおぉお、すげええええ」

「あはは、こんなの子供こどもだましですよ。全然ぜんぜんすごくないです」

「いや、この世界せかいだと、最強さいきょうきゅうのすごいことなんだけど」

「そうですか、えへへ、められちゃいましたぁ」

わらってるエルフさんでよかった。あぁいかりをったら世界せかい崩壊ほうかいするかもしれない」

「そんなことできたとしても、やらないですよぉ、やだなぁ」

「え、できるの?」

「メテオの魔法まほう何回なんかいって都市とし隕石いんせきあめらせば簡単かんたんですぅ」

「あっ……」


 おれいた。

 世界せかいだれれてくれなかったエルフ。

 各国かっこくたんなる卑怯者ひきょうものだとおもっていたが、魔法まほう使つかえるエルフはつよい。

 いかりをったらどうなるかからないのは事実じじつなのか……。

 おれもあんまりおこらせないようにしよう。


「あのごめんなさい、冗談じょうだんです。さすがに世界せかい崩壊ほうかいしないとおもいます」

「そうなのか、冗談じょうだんでよかった」


 うぉお、どこまで本気ほんきかんないというね。

 まあでもいまわらっているから大丈夫だいじょうぶだろう。

 このがずっと笑顔えがおでいられるようにしたいとこころそこからおもった。


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