第6話 令和のジャンヌ・ダルク

 ラッキースケベというものがある。本人の意図なくして起こる、女の子とのエッチなイベントのことだ。多くの美少女で溢れるライトノベルを筆頭に、最近では少年誌や子供向けのアニメにも使われるようになってきた。青少年の欲望を満たすためだったり、シリアスな本編とはまったく関係のない息抜きのためだったり、エンターテイメントにおいての一種の表現方法だと俺は思っている。


 いや、俺の解釈はどうでもいい。

 要は、そのラッキースケベは小説や漫画の中だけのものか、ということだ。


 答えは否。ラッキースケベは現実にも実際に起こる。

 パンチラから女の子の秘部にダイレクトアタックまで、程度の差で起こり得る可能性に大きく差はあるものの、人が空を飛んだり手から火の玉を出現させることに比べれば、現実的にあり得ないことじゃない。


 ただ『俺は今まで一度も体験したことがないぞ!』という反論は受け付けません。日本全国には、数百万人もの中学生高校生がいるのだ。そのうちの自分ではない何割かの男子どもが、そういったおいしい想いをしているに違いない。


 だがしかし! と、俺はここで大きな声を上げて異を唱えたい。

 ラッキースケベは存在しても、その後の展開は決してあり得ない、と。


 赤面した女の子からの平手打ち? 風呂桶や石鹸などを投擲? それとも罵詈雑言を浴びせられる?


 バカ言っちゃいけない。恥じらう女の子が、そんなアグレッシブな反応をするわけがないのだ。大抵は無視されるか、冷たい目で睨まれるか、小声で愚痴られるか。いや、それでもまだ良い方だろう。


 俺が犯してしまった罪と相手の反応は、最悪の部類だった。


 罪状は覗き。正当性を主張したところで、通じるわけがない。女子の部室で女の子の裸を目撃してしまったのだ。理由はどうあれ、俺に非がある。


 そして千石は泣いていた。俺に恨み言を向けたり牙を剥いたりすることなく、ただただ涙を流し怯えていた。それはやっぱり、か弱い女の子としての当然の反応だった。


 一人の女の子を傷つけてしまった罪悪感と、図らずとも犯罪者になってしまった故に、今まで積み重ねてきた物が瓦解していく恐怖が、己を蝕んでいく。


 今後、俺は周囲からどんな目で見られる? これからずっと軽蔑されるのか? 高校入学してから、まだ二ヶ月も経ってないぞ。残りの三年間、ずっと後ろ指をさされて生きていくのか?


 シュウは? シュウはどうだ? あいつも俺のことを軽蔑するに違いない。だって覗きだもんな。女として、絶対に許しがたい犯罪だもんな。幼馴染がこんな下劣な男だったことを知って、残念に思うかもしれない。


 俺はこれからどうすればいい? どんな顔して登校すればいい? どうやって生きていけばいいんだ? 嫌だぁ、嫌だぁ、うわぁ…………。






「…………」


 という最悪な気分のまま目が覚めた。だからといって、夢オチだったのかと楽観するほど俺はバカじゃない。だったらいいのにとは思ったけど。


 目覚まし時計を確認すると、月曜日の午前七時。俺の休日がどこかへ行ってしまった。具体的に言えば、自己嫌悪の海の中だ。週末が明けなきゃいいのにと思っているうちに、休みが終わってしまった。


「……ひでぇ顔だな」


 鏡の中の俺は、ずいぶんとやつれていた。この二日間、ずっと家に籠っていたからだろう。誰とも会っていないし、スマホすら放置したままだった。故に、金曜の事件がどのように伝達されているのかは何も知らない。


 ま、どのみち学校へ行けば分かること。


「うわぁ……行きたくねぇ」


 顔色も悪いし、このまま仮病で休むか?


 いやいや、ここで逃げ出したら罪を認めたようなものじゃないか。毅然とした態度で事故だったと主張すれば、みんな分かってくれるはずだ。たぶん!!


「となると、やっぱり六花廷で勝つしかねえ」


 千石は間違いなく六花廷に訴えてくるだろう。早くて水曜日、遅くても今週末には俺の処遇が決まるはずだ。もしそこで無罪を勝ち取ることができれば、千石以外のみんなは、何かの勘違いだったと解釈してくれると思う。


 もちろん、勝てればの話だが。


「か、勝てるわけねぇ……」


 そこが一番の問題なんだけどな。


 現在八連敗中で、しかも今回は完全に俺が悪い。無罪を主張したところで、鼻であしらわれるに決まっている。ぶっちゃけ、減刑できるかどうかも怪しいところだ。


「その顔は辛気臭さを極めているね。明日、世界が滅ぶのかい? それとも君の生命が終わるのかい?」

「うおっ!?」


 素直にびっくりした。自分が無意識のまま登校の準備をしていたのも驚きだが、家の前でインテリメガネが待ち伏せしていたことは完全に予想外だった。一緒に登校したことなんてないのに、どうして今日に限って……あぁ、今日だからか。


「君の所業はすでに聞き及んでいるよ。まったく、バカなことをしたものだね」

「うるせえ」


 やっぱり土日だからって関係なかったな。どこをどういった経路で周防が小耳にはさんだのかは知らないが、この分だと大概の人はすでに知っているのかもしれない。特に六花繚乱倶楽部の皆様と、俺を知るクラスメイトは。


「ちなみに、どんな噂で広がってるんだ?」

「六花繚乱倶楽部の部室に忍び込んで、シャワー中の女子を覗き見した奴がいる。相違ないかい?」

「仔細は違うが反論する気にもなれないな」


 どうせ反論しても、千石の裸を見た事実は覆らないんだ。今ここで正す意味はない。


 長年の相棒であるママチャリの籠に鞄を押しこめ、さっさと走り出した。後ろから、マウンテンバイクに跨ったインテリメガネが追いかけてくる。


「つれない態度だなぁ。せっかく心配して来てやったのに」

「どの口が言うんだよ。どうせ落ち込んでる俺を見て、嘲笑いたかったんだろ?」

「バカ言うな。僕たち、友達だろ?」


 友達という響きに、ちょっとだけ感動したのは内緒だ。誰も彼もが俺を蔑んでいると決めてかかっていたので、その反動で感傷しやすくなっているらしい。


「とはいっても、クラスメイトから蔑視されるのは覚悟しておいた方がいいと思うよ」

「だよなぁ」

「そりゃそうさ。かわいい幼馴染がいるだけで嫉妬されるステータスなのに、それを足蹴にしておいて、他の女の子を覗きなんてねぇ」

「かわ……いい?」


 並走してきた周防に顔を向けて、ついつい首を捻ってしまった。

 かわいい? シュウが? 本気で言ってるのか?


 確かに顔の構造そのものは悪くない。むしろ美形の部類に入るだろう。幼馴染の贔屓目や謙遜を除いたとしても、大概の人はそう評価すると思う。


 でもあいつは決してかわいくはない。カッコイイのだ。

 だって八頭身だぜ? 男の俺より背が高いんだぜ? 運動神経抜群なんだぜ?


 昔から、シュウの背中ばかり追いかけていたような気がする。運動全般において、俺があいつに勝ったことなど一度もないのだ。いや運動だけでなく、喧嘩も。泣かされたのだって一度や二度ではないし、完全に俺の方が女々しかった。


 だから俺は一度もあいつに惚れたことはない。

 ただし心の底から尊敬し、憧れてはいる。それは今現在も。


「…………」


 不意にシュウの顔が思い浮かび、走行中にもかかわらず、俺は頭を下げた。


 自分が憧れている人物から軽蔑されるのは、どれほど苦痛なのだろうか。俺はこの先、生きていけるのだろうか。あぁ、できれば顔を合わせたくない。違うクラスなのが不幸中の幸いだ。


「ま、そう気に病むなよ」

「他人事だと思って……」


 それから無言のまま、俺たちは学校へと向かった。


 目的地が近づくにつれて、ペダルに乗せる足が次第に重くなる。徐々に増えてくる六花総合学園の制服が、全員俺のことを軽視しているような錯覚に陥っているようだ。誰かが六花繚乱倶楽部へ覗きに入ったという噂は広がっていても、それが俺だと知っているのはほんの少数であるはずなのに。


 あぁ、なんでこんなことになっちまったんだろうなぁ。


「……そういえば周防、訊かないのか?」

「何をだい?」

「俺が六花繚乱倶楽部へ忍び込んだ理由だよ」


 駐輪場に自転車を置いて教室へ向かう途中、気になったので訊いてみた。


 というか、こいつは俺のクラスまで付き添ってくるつもりなのか。こうも過剰に心配されるのは、感謝の念もあるし鬱陶しくもあるな。


「別に。僕が理由を訊いたところで何かが変わるわけじゃないし、特に知りたいとも思わないな。率直に言っちゃえば、どうでもいい」

「後でいいから、俺の感動を返せ」


 友達という言葉が嘘だとは思わないが、ぶっちゃけすぎだろ。


「じゃ、僕は自分のクラスに行くとするよ。辛くなったら、いつでも会いに来てくれ」

「行かねーよ」


 結局、周防は俺のクラスの前までついてきた。


 今日はけっこうギリギリの時間に家を出たので、もうすぐ始業である。故にもうほとんどの生徒が登校している時間帯なのだが……。


「……なんだろうね?」


 俺のクラスから漏れる異様な騒がしさに、俺たちは顔を見合わせた。

 喧噪、というわけではない。聞こえる声は一つだけだ。


 嫌な予感しかしないが、中を確認せず廊下で立ち往生しているわけにもいかない。俺は恐る恐る教室の扉を開けた。


「みんな、今こそ我らは立ち上がるべきなのよ!」


 長身の、勇ましい姿がそこにあった。その成りはまさに、信者を導くジャンヌ・ダルクのようだ。ただ足りないのは、人を先導するための説得力だろう。彼女の前に集まる男どもの表情は、英雄を崇めるそれではなく、ひどく迷惑したものだった。


 そして演説の主を一目見て、俺は頭を抱えてしまった。

 あいつ、俺のクラスで何やってんだ?


「これに勝利すれば、六花廷のあり方も大きく変わるはず……」


 教壇で声を張り上げていたシュウが、不意にこちらへ視線を寄こした。


 硬直したのも一瞬、俺の存在に気づくやいなや、獲物を発見した肉食獣が如くこちらへ向かって突進してくる。


 正直、マジで食い殺されるかと思った。少なくともボコボコに殴られるだろうと。

 そうだ。シュウ本人を目の前にして、今やっと思い出した。


 シュウは俺を軽蔑なんてしない。ただ悪に制裁を加えるだけだ。正義の鉄槌で俺を再起不能になるまで徹底的にぶちのめし、そして長々と説教を食らわせるだろう。昔からそうだったじゃないか。


 だから俺は覚悟した。一生軽蔑されるよりかはマシだと観念し、形が変わるくらい殴られた自分の顔を想像しながら、俺は歯を食いしばった。


 しかし訪れた衝撃は思いのほか弱く、優しさのあるものだった。


「野村君、よくやった!」

「…………へ?」


 俺の肩を叩いたシュウが、真正面からまっすぐに見つめてくる。鼻先が触れ合いそうなほどの距離だが、今さら恥ずかしがるような間柄ではない。むしろひどく戸惑ってしまった。力のこもるシュウの瞳は、冗談を言っているようには見えないから。


 よくやった? 俺が何をした?


「みんな注目! この男こそが、今回覗きの件で六花廷に訴えられた野村君よ!」

「なっ……おま……」


 何をおっしゃいますか、シュウさん。んなこと、わざわざ公言することでもないでしょうに。ほらほら、あなたが余計なこと言うもんですから、みんなが俺を蔑んだ目で睨んでいるではありませんか!


「なになに、どういうこと?」

「さぁ……」


 背後から周防が不思議そうに耳打ちしてきたが、知らんものは知らん。


 しかし俺のことをじっとりと睨みつけている奴らの方が、明らかに正しい反応だろう。事故だったとはいえ、俺が犯してしまった罪は、決して褒められるようなものではないのだから。


 じゃあシュウは? どうしてこいつは、こんな俺を前にして意気揚々としているんだ?


「単刀直入に言うわ。今度の六花廷、この男を無罪にできるよう、みんなに協力してほしいの」


 一瞬の静寂の後、次に起こったのはブーイングの嵐だった。いや、嵐とまではいかないにしても、露骨に表情を顰めたり、小さな声で愚痴っている奴もいる。反応の違いはあれど、全員がシュウの嘆願に否定的であることは間違いなさそうだ。


 ただこれも当然だ。というか俺だって嫌だ。何が楽しくて、女子の部室に忍び込み、あまつさえクラスメイトの全裸を目撃してしまった馬鹿を擁護せにゃならんのだ。俺が彼らの立場だったら、死を以て償うべし、とか思うかもしれない。


 ……自分で言ってて悲しくなってきた。


「みんな聴いて。今回無罪を勝ち取ることは、みんなにとっても有益だと思うの」


 なんですと?

 ブーイングが一気にざわめきへと変化した。


「先週行われた六花廷の内容、みんなは知ってる? 学級新聞にも載るはずなんだけど」


 反応を見る限り、知っているのは二・三人だけのようだった。


 というか、先週末の六花廷がもうすでに新聞になっているわけがない。つまりシュウは直接新聞部に行って、詳細な情報を調べてきたのだ。こいつのこの異様な行動力と、六花廷に対する熱意は一体なんなんだ?


「知らない人のために、簡潔に話すね。先週末、一人の男子生徒が六花廷で有罪判決を言い渡されました。罪状は女子のパンチラを目撃してしまったこと。罰則は中庭の掃除という軽いものだったけど、みんなもこの判決は理不尽だと思うよね?」


 今度はほとんどの男子が首を縦に振った。


「ここで論点となったのは、パンツを見せた女子に対して気持ち悪い笑みを向けたこと、そして謝罪の言葉がなかったこと。笑ってしまったのは仕方がないとして、問題は謝罪の方。これにより、新しく私的校則がまた一つ増えました。『女子のパンツを目撃した際には、たとえ偶然であったとしても謝罪すること』と」


 私的校則とは、学園側が定めた校則とは別に、生徒自身が作り出した校則である。目安箱に投じられた生徒の意見を生徒会が汲んだり、六花廷の判決に応じて定められる。ある程度の基準を決めておけば、同じ内容で裁判をする必要が無くなるからな。


 というわけで前回の六花廷の結果、今後女子のパンチラを目撃した男子は、必ず謝らなければならないことになってしまった。


「判決によっては、審判内容がそのまま私的校則になる場合もあります。そこで最初の話に戻るけど、覗きをしたのに六花廷で無罪になるということはどういうことか、みんな分かるよね?」


 ん? と、勘の鋭い何人かが、頭上に豆電球を浮かべた。

 未だ察してない人たちのために、シュウが力強く拳を握る。


「つまり女子の部室、覗き放題!!」


 周囲が一気に明るくなった。どうやら全員が理解したようだ。

 にしてもこいつら、露骨すぎだろう。そんなに女子の部室を覗きたいか。


「でも、それだけじゃダメ。覗きなんて、六花廷を通さなくても普通に犯罪だしね」


 心にグサッとくる一言だな。そうか、シュウは俺のこと犯罪者だと思っているわけか。


「そこで利用するのが、前回の判例よ。あれは偶然の事故で、謝罪がなかったことが原因だった。野村君は相手に謝ったよね?」

「あぁ、まあ一応……」


 千石に届いていたかどうかは知らないけどな。


「そう。この事件、野村君はちゃんと謝罪の言葉を述べている。それをクリアしてるってことは、つまりね……」


 まるで物語の核心を語る語り部のように、シュウは声のトーンを落とした。


 それに合わせて、男子たちの間にも緊張が走る。唾を嚥下する音が聞こえそうなほど静まり返った。


「たとえ覗きが見つかったとしても、偶然を装って謝罪すれば、すべてが許される!」

「うおおおおおおおお!!」


 導き出されたシュウの結論が、愚男どもを一気に沸かせた。興奮の混じる雄叫びが教室中に轟く。なんかすげぇ一体感だ。意志が疎通しすぎて、狂気ですらある。背後の周防を一瞥してみたが、俺と同じように完全に引いていた。


「みんな、野村君を無罪にするため、私に協力してくれるね!?」

「うおおおおおおおお!!」


 そしてシュウはジャンヌになった。火あぶりにならなきゃいいんだけど。


 しかし六花総合学園って、確か頭の良い学校だったはずだよな? 俺のクラスだけが特別バカなのか、それとも思春期真っ只中の男子はこうも恥を捨て去ることができるのか。


 もちろん、全員が全員バカであるわけではない。一部の男子は、俺や周防と同様、興味なさげにドン引きしているし、女子たちは気味悪そうに遠巻きから眺めていた。


 だが忘れてはいけない。今回の発端となった千石も、このクラスの一員なのだ。


「ちょっと、ちょっとちょっと」


 双子芸人のようなイントネーションで割り込んできたのは、二つの大きな縦ロールだった。無論、千石である。シュウの演説を後ろの方から見ていたことは知っていたが、さすがに我慢できなくなったのだろう。訴えた張本人でもあるし、目の前で無罪放免運動されたらそりゃ黙っていられないか。


「そこのアンタ! さっきから聴いてれば、一体なんなの? 六花廷で無罪を勝ち取るために人々を先導するなんて、許されると思ってるのかしら?」

「思ってるわよぉ、センセンちゃん」

「なっ……センセン……?」


 シュウの挑発的な物言いに、千石は徐々に顔を赤らめさせていった。俺に裸を見られた時ほどではないにしろ、そこまでカッとなることか? 千石千代子だからセンセン。あり得ないあだ名でもないと思うがなぁ。


「愚民にそんな呼ばれ方をされるなんて、とても屈辱的だわ」

「ぷっ。愚民って……ワロスワロス」


 自尊心の塊のような奴だなぁ、千石は。


 しかし今の発言で、完全に他の生徒からの反感を買った。シュウに先導されていたバカどもだけでなく、遠巻きに眺めていた男子の顔色も変わる。お金持ちのお嬢様なんて今は少数派なんだから、もっと慎ましくしておいた方がいいのに。


 どうやら千石も、自分に向けられている周囲の敵意に気づいたようだ。怖気づいたように、一歩引く。


 その瞬間、ふと俺と目が合った。


 千石の位置はシュウと愚男どもを隔てた向こう側なので、視線を交わしたのもほんの一瞬だったが、彼女は確かに俺のことを見ていた。覗きを犯した大罪人である俺を敵視するのは、当然のことかもしれないが……。


 千石の顔つきは、どこか助けを求めているようにも見えた。


「ま、いいわ。愚民どもが何をやっても、無罪になんかできるはずないものね。誰がどう見たって情状酌量の余地なんてないもの」

「戦う前から勝負が決まってる試合なんて無いよ。諦めない限り、試合は続くんだから」


 偉大な某先生のセリフをアレンジして引用したようだが、それは違うぜシュウ。バスケは時間制なんだから。


 何はともあれ、教壇の前で火花を散らす女子二名の傍ら、俺は深々とため息を吐いた。始業のチャイムが、戦いのゴングに聞こえたのは言うまでもない。


 ……もうどうにでもなれってんだ。

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