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３８．ポーション味比べ

◆３８．ポーション味（あじ）比（くら）べ

　そのうち、一般（いっぱん）プレイヤーも大挙（たいきょ）して、デルタ町（まち）に押（お）し寄（よ）せてくると思（おも）われる。

　その時（とき）のために、ポーションを量産（りょうさん）しておきたい。

　今（いま）は十五日（にち）目（め）の午前（ごぜん）十一時（じ）だ。

　先（さき）ほど、ヒカリちゃんから、警（けい）ら隊（たい）と一緒（いっしょ）にトカゲを突破（とっぱ）し、無事（ぶじ）にデルタ町（まち）に到着（とうちゃく）したと連絡（れんらく）があった。

　私（わたし）はおじいさんの家（いえ）の場所（ばしょ）を画像（がぞう）で送信（そうしん）しておいたので、もうじき来（く）るだろう。

　玄関（げんかん）にピンポンはないので、ベルが付（つ）いていた。

　チリンチリンと高（たか）い鐘（かね）の音（ね）がなった。

「はろーはろー。ヒカリちゃん」

　真（ま）っ先（さき）にクルミが迎（むか）えに行（い）った。

「えっとクルミお姉（ねえ）さんこんにちは。ミケさんとサクラさんも、こんにちはです」

「えー。いっつもわたしの名前（なまえ）だけ、思（おも）い出（だ）すときの『間（ま）』があるよね！」

「すみません。なぜかすぐ出（で）てこないんです」

　おじいさんとおばあさんは奥（おく）の応接（おうせつ）間（ま）で、昼食（ちゅうしょく）を用意（ようい）して待（ま）っていた。

　ヒカリちゃんは、茶（ちゃ）ウサギのマイケルを抱（だ）いていた。

「僕（ぼく）もいるよ。みなさま、こんにちは」

　マイケルも挨拶（あいさつ）してくれる。

　続（つづ）いて、メイドのコマチさんとリアルおじいちゃんのイナホさんが入（はい）ってきて、挨拶（あいさつ）をする。

　体（からだ）の大（おお）きい警（けい）ら隊（たい）も入（はい）ってきたので、私（わたし）が護衛（ごえい）任務（にんむ）をねぎらう。

「護衛（ごえい）のお勤（つと）めご苦労（くろう）様（さま）」

「仕事（しごと）ですから当然（とうぜん）です！」

「「「仕事（しごと）ですから当然（とうぜん）です！」」」

　びしっと整列（せいれつ）して敬礼（けいれい）をしてくる。すこし、いや、だいぶ暑苦（あつくる）しい。

　それにしても、もはや仕事（しごと）なんだ。実（じつ）は雇（やと）われているとか？　まあいいや。

　揃（そろ）いのウサギとオオカミの帽子（ぼうし）が可愛（かわい）らしい。

　ちなみに、おじいさんもオオカミさん帽子（ぼうし）だった。

　全員（ぜんいん）で、応接（おうせつ）間（ま）で昼食（ちゅうしょく）会（かい）となった。

　さすがに２＋３＋３＋４で十二人（にん）だと狭（せま）い。

　全員（ぜんいん）は座（すわ）れないので、立（た）ったまま、テーブルにあるサンドイッチを手（て）に持（も）って食（た）べる。

　ヒカリちゃんは、道中（どうちゅう）の冒険（ぼうけん）談（だん）を話（はな）してくれた。

　リーダーのアルクはタコに盾（たて）を取（と）られたうえ、触手（しょくしゅ）攻（ぜ）めにされ、電撃（でんげき）も食（く）らって涙目（なみだめ）になっていた。

　他（ほか）の人（ひと）たちが必死（ひっし）に攻撃（こうげき）して、なんとか倒（たお）したものの、リーダーは盾（たて）役（やく）の自信（じしん）がなくなった。

　その後（あと）もタコ戦（せん）のときは、後方（こうほう）から見（み）てるだけという情（なさ）けないリーダーだった。

　トカゲ戦（せん）では見事（みごと）に復活（ふっかつ）し、盾（たて）を構（かま）えて果敢（かかん）に攻撃（こうげき）を受（う）け止（と）めて、威厳（いげん）を示（しめ）す。

　マイケルは後方（こうほう）から杖（つえ）なしで、アイスブリーズを短縮（たんしゅく）詠唱（えいしょう）で攻撃（こうげき）して、敵（てき）を硬直（こうちょく）させて活躍（かつやく）。

　魔法（まほう）使（つか）いのシロガネはマイケルと張（は）り合（あ）う。

　Ｌｖからいくと、マイケルの方（ほう）が弱（よわ）そうだけど、どちらも同（おな）じぐらいだったようだ。

　食後（しょくご）に、ポーションの試飲（しいん）会（かい）を開（ひら）いた。

　量産（りょうさん）するにあたって、どれが売（う）れるか調査（ちょうさ）したい。

　まず最初（さいしょ）にリーダーのアルクに聞（き）いてみた。

「俺（おれ）はブドウ味（あじ）が好（この）みかな」

　次（つぎ）はヒカリちゃんに聞（き）いてみる。

「私（わたし）はやっぱりツグミ味（あじ）が好（この）みだよ」

　警（けい）ら隊（たい）の三人（にん）にも聞（き）いてみた。

「「「もちろんツグミ味（あじ）です」」」

　案（あん）の定（じょう）ヒカリちゃんの意見（いけん）優先（ゆうせん）だった。

　コマチさんに聞（き）いてみたところ以下（いか）の通（とお）り。

「私（わたし）はどれも、それなりに好（す）きです」

　イナホおじいさんは自分（じぶん）の意見（いけん）を言（い）った。

「わしはそうだな、日本（にほん）茶（ちゃ）に近（ちか）いから渋（しぶ）み控（ひか）えめかな」

　意見（いけん）が分（わ）かれたので、どれも同（おな）じぐらいの数（かず）用意（ようい）しよう。

　そもそも、ここに集（あつ）まったメンバーはＨＰ用（よう）ポーションを必要（ひつよう）としてなかった。

　優秀（ゆうしゅう）な白（しろ）魔法（まほう）使（つか）いのヒカリちゃんがいる。

　警（けい）ら隊（たい）はショップへ薬草（やくそう）と瓶（びん）を買（か）い出（だ）しに行（い）ってくれた。

　ヒカリちゃんはお昼寝（ひるね）だそうだ。サクラちゃんの部屋（へや）で今（いま）は寝（ね）ている。

　空（あ）き時間（じかん）に私（わたし）たちとコマチさんとイナホおじいさんとで、革（かわ）なめしの講習（こうしゅう）を受（う）けていた。

　トカゲとウサギの毛皮（けがわ）(茶色（ちゃいろ）)が少（すこ）し残（のこ）っていたので利用（りよう）する。

　事前（じぜん）に現実（げんじつ）の皮（かわ）なめしのサイトなども参考（さんこう）に確認（かくにん）したけれど、ものによってはグロ注意（ちゅうい）なので、気（き）を付（つ）けてください。

　私（わたし）はちゃんと注意（ちゅうい）しましたからね。知（し）りませんよ。

　皮（かわ）なめしは皮（かわ）の主（しゅ）成分（せいぶん）であるコラーゲンに油（あぶら）やクロム、タンニンをしみこませることで、コラーゲンの物質（ぶっしつ）が変化（へんか）し、皮（かわ）が腐（くさ）らなくなって、皮（かわ）を柔（やわ）らかくしたりもできる。

　柔（やわ）らかいかどうかは、薬品（やくひん）によって違（ちが）っていて、靴（くつ）や鞄（かばん）で使（つか）う革（かわ）は硬（かた）いほうがいいみたいだ。

　まずゲームの材料（ざいりょう）の皮（かわ）は、湿（しめ）っている感（かん）じの皮（かわ）で、なぜかすでに四角（しかく）い形（かたち）をしていて、動物（どうぶつ）だった痕跡（こんせき）は皮（かわ）の表面（ひょうめん）に毛（け）が生（は）えているという程度（ていど）だった。

　それでゲームの皮（かわ）なめしはというと単純（たんじゅん）化（か）されていて、薬品（やくひん）を塗（ぬ）って、乾（かわ）かしておしまい。

　最初（さいしょ）に皮（かわ）の表面（ひょうめん）を削（けず）ったりする作業（さぎょう）が皮（かわ）なめしのイメージだと思（おも）うけれど、そこは大幅（おおはば）に省略（しょうりゃく）されている。

　薬品（やくひん）は「皮（かわ）なめし薬（やく）」なるものが売（う）っていて、それを使（つか）う。

　中身（なかみ）不明（ふめい）。説明（せつめい）にも書（か）いてない。

　きっとこのゲームの事（こと）だから、製造（せいぞう）方法（ほうほう）自体（じたい）はどこかに存在（そんざい）するだろう。

　そんな感（かん）じで、まんべんなく薬（くすり）を塗（ぬ）って、待（ま）ち時間（じかん）を消化（しょうか）した。