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３７．薬師のレッスン

◆３７．薬師（くすし）のレッスン

　畑（はたけ）からの帰（かえ）り道（みち）に、城門（じょうもん）すぐ外側（そとがわ）の林（はやし）になっている場所（ばしょ）を散策（さんさく）した。

「これが落雷（らくらい）草（そう）。麻痺（まひ）解除（かいじょ）薬（やく）になる。こちらがマヒル草（そう）。毒消（どくけ）しポーションになる」

　おじいさんは、林（はやし）に生（は）えている草（くさ）を次々（つぎつぎ）名前（なまえ）を言（い）っては、用途（ようと）を教（おし）えてくれた。

　私（わたし）たちはメモを取（と）る。と見（み）せかけて、知識（ちしき）システムが自動（じどう）で記録（きろく）してくれる。

　このゲームでは、一度（いちど）教（おそ）わったことは、自動（じどう）で知識（ちしき）システムに内容（ないよう）が記載（きさい）される。

　項目（こうもく）別（べつ）になっていて、とても見（み）やすく、絵（え）というか写真（しゃしん）なども掲載（けいさい）されていて分（わ）かりやすい。

　そのかわり、採取（さいしゅ）ポイントへ行（い）っても、マーカーが出（で）たり光（ひか）ったりしないので、採取（さいしゅ）する前（まえ）に、その草（くさ）を自分（じぶん）で識別（しきべつ）する必要（ひつよう）があった。

　間違（まちが）った知識（ちしき）を教（おし）えられた場合（ばあい）どうなるかは、まだわからない。

　公式（こうしき）掲示（けいじ）板（ばん）やｗｉｋｉで読（よ）んだ内容（ないよう）も、脳波（のうは）スキャンされているらしく、ある程度（ていど）記載（きさい）されていた。

　ここは領主（りょうしゅ）様（さま）の林（はやし）で、勝手（かって）にとってもいいものの、取（と）りすぎると怒（おこ）られるとか。

　自分（じぶん）で消費（しょうひ）する分（ぶん）にはばれないが、大量（たいりょう）にギルドに持（も）ち込（こ）めばすぐばれる。

　薬草（やくそう）類（るい）とキノコを採取（さいしゅ）して、町（まち）へ戻（もど）った。

　農業（のうぎょう）ギルドへ行（い）って、トマトとジャガイモの代金（だいきん）を受（う）け取（と）った。

　収入（しゅうにゅう）を得（え）て、ニコライド夫婦（ふうふ）の生活（せいかつ）は少（すこ）しは良（よ）くなるだろう。

　もう夕方（ゆうがた）になってしまったので、薬草（やくそう）類（るい）で、乾燥（かんそう）させるものは陰干（かげぼ）しだけする。

　美味（おい）しい夕（ゆう）ご飯（はん）を頂（いただ）いて、各自（かくじ）部屋（へや）へ戻（もど）った。

　クルミとサクラちゃんは、今日（きょう）も部屋（へや）でペンダントを作（つく）っている。

　今日（きょう）は工夫（くふう）をするのだとか、違（ちが）うものを作（つく）るとか言（い）っていた。

　私（わたし）は掲示（けいじ）板（ばん）とｗｉｋｉをざっと眺（なが）めてから、数学（すうがく）の勉強（べんきょう）をして過（す）ごした。

　リアルで私（わたし）は浪人（ろうにん）生（せい）だった。

　こうして毎日（まいにち）少（すこ）しずつでも忘（わす）れないように勉強（べんきょう）もしている。

　六倍速（ばいそく）で勉強（べんきょう）したら、ものすごいたくさん勉強（べんきょう）できるね。

　二人（ふたり）も勉強（べんきょう）はしているらしい。全然（ぜんぜん）そんな気（き）みせないけれど。

　家族（かぞく）や友人（ゆうじん）と直接（ちょくせつ）通話（つうわ）は、六倍速（ばいそく）の関係（かんけい）上（じょう）無理（むり）だけど、テキストチャット系（けい）ソフトがあるので、問題（もんだい）なかった。

　お母（かあ）さんも始（はじ）めようかしら。とか言（い）っているが、今（いま）からでは入手（にゅうしゅ）不（ふ）可能（かのう）だろうし、結構（けっこう）なお値段（ねだん）なので、つらいと思（おも）う。

　十五日（にち）目（め）。

　今日（きょう）も美味（おい）しい朝（あさ）ご飯（はん）、ジャガイモのポタージュとパンとサラダだ。

　私（わたし）は朝（あさ）から、薬草（やくそう）類（るい）から作（つく）る各種（かくしゅ）耐性（たいせい）ポーションや耐性（たいせい）薬（やく）を作（つく）る。

　空（あ）き瓶（びん）はおじいさんに頂（いただ）いた。

　おじいさんは意外（いがい）と指導（しどう）は厳（きび）しくする主義（しゅぎ）らしく、ビシバシ指導（しどう）された。

「擦（す）り方（かた）がなってない。もっとこう、均一（きんいつ）になるように心（こころ）がけて外（そと）と中側（なかがわ）を交互（こうご）に回（まわ）すんだ」

　各種（かくしゅ）ポーションはどれもランク３だった。

　最後（さいご）に５級（きゅう）ポーション(渋（しぶ）み控（ひか）えめ)を作（つく）ることになった。

「なるほど、六十度（ど）で淹（い）れるのか。ポーションは熱湯（ねっとう）で作（つく）るのが常識（じょうしき）だったから、盲点（もうてん）だったな」

　私（わたし）は、おじいさんにオリジナルレシピを見（み）せて、認（みと）められたようだ。

　●５級（きゅう）ポーション(渋（しぶ）み控（ひか）えめ)

　　ＨＰが回復（かいふく）する。通常（つうじょう）より渋（しぶ）みが抑（おさ）えられていて、飲（の）みやすくなった。

　　種別（しゅべつ）：ポーション、飲（の）み物（もの）

　　レア度（ど）：２　　ランク：４

　　ＨＰ回復（かいふく）：１分（ぷん）で７０上昇（じょうしょう）

　　満腹（まんぷく）度（ど）(水分（すいぶん）)：４上昇（じょうしょう）

　はじめて、ランクが４になった。一連（いちれん）の調合（ちょうごう）作業（さぎょう）でスキル薬師（くすし）もＬｖ５になった。

　おじいさんの指導（しどう）の賜物（たまもの）ですね。

　成果（せいか）が目（め）に見（み）えるって本当（ほんとう）に素晴（すば）らしい。やりがいがある。

　一口（ひとくち）飲（の）んでみるおじいさん。

「渋（しぶ）み控（ひか）えめ、というか渋（しぶ）みはほとんど感（かん）じないな。むしろほのかな甘（あま）みがある。不（ふ）思議（しぎ）なもんだ」

「そうでしょう。私（わたし）頑張（がんば）ったよ。アイディアはサクラちゃんだけど」

　ポーションは、あまりＮＰＣには需要（じゅよう）がない。

　もちろん冒険（ぼうけん）者（しゃ）をしているＮＰＣも存在（そんざい）していて、そういうキャラには需要（じゅよう）があるはずなんだけど、人口（じんこう）比（ひ）でいえば、そこまで多（おお）くない。

　レシピは秘密（ひみつ）にして、商品（しょうひん）だけ卸（おろ）すようにすると良（よ）いと指導（しどう）された。

　それが職人（しょくにん）の世界（せかい）の常識（じょうしき）だそうだ。

　ついでに、調子（ちょうし）に乗（の）って、違（ちが）うポーションも作（つく）る。

　●５級（きゅう）ポーション(ツグミ味（あじ）)

　　ＨＰが回復（かいふく）する。ツグミ味（あじ）で飲（の）んでもおいしい。

　　種別（しゅべつ）：ポーション、飲（の）み物（もの）

　　レア度（ど）：３　　ランク：４

　　ＨＰ回復（かいふく）：１分（ぷん）で７０上昇（じょうしょう）

　　満腹（まんぷく）度（ど）(水分（すいぶん）)：４上昇（じょうしょう）

　●５級（きゅう）ポーション(ブドウ味（あじ）)

　　ＨＰが回復（かいふく）する。ブドウ味（あじ）で飲（の）んでもおいしい。

　　種別（しゅべつ）：ポーション、飲（の）み物（もの）

　　レア度（ど）：３　　ランク：４

　　ＨＰ回復（かいふく）：１分（ぷん）で７０上昇（じょうしょう）

　　満腹（まんぷく）度（ど）(水分（すいぶん）)：４上昇（じょうしょう）

　ツグミはストレージに残（のこ）っていたのを利用（りよう）。

　ブドウ味（あじ）には、おばあさん作成（さくせい）のブドウジャムを入（い）れた。

「なかなかやるじゃないか」

「私（わたし）頑張（がんば）ったよ。やっぱりアイディアはサクラちゃんだけど」