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３３．半日休暇

◆３３．半日（はんにち）休暇（きゅうか）

　冒険（ぼうけん）者（しゃ）ギルド・デルタ町（まち）中央（ちゅうおう）店（てん）に来（き）ている。

　受付（うけつけ）嬢（じょう）に話（はなし）を伺（うかが）う。

　嬢（じょう）というには、ちょっと。四十歳（さい）ぐらいのヒューマンの「お姉（ねえ）さん」だ。

「こんにちは、ここではクエストを発行（はっこう）するのがお仕事（しごと）ですが、依頼（いらい）は壁（かべ）を見（み）てください。よくゲームだとギルドランクとかあるじゃないですか。ここではそういうものは無（な）く、皆（みな）さんのレベルによって推奨（すいしょう）指定（してい）があります」

　私（わたし）たちは現在（げんざい）レベル８になったよ。

「登録（とうろく）は、冒険（ぼうけん）者（しゃ）なんですから済（す）んでます。記憶（きおく）がない？　記憶（きおく）がなくても登録（とうろく）済（ず）みになっています。そうしないと混（こ）んじゃいますから」

　壁（かべ）を確認（かくにん）しに行（い）くと、推奨（すいしょう）レベル順（じゅん）に場所（ばしょ）を分（わ）けてくれてある。

『レストラン・ブルーリザードの皿洗（さらあら）い。３０分（ぷん）３００セシル。推奨（すいしょう）Ｌｖ１から』

『ウサギ肉串（にくくし）露店（ろてん）の調理（ちょうり）見習（みなら）い。３０分（ぷん）３００セシル。推奨（すいしょう）Ｌｖ１から』

『銅（どう）鉱石（こうせき）納品（のうひん）一つ１００セシル。１日（にち）５０個（こ）まで。推奨（すいしょう）レベル１から』

『トカゲ肉（にく）納品（のうひん）一つ３００セシル。１日（にち）１００個（こ）まで。ソロ推奨（すいしょう）レベル１０から』

　トカゲはソロだとＬｖ１０推奨（すいしょう）か。ふむふむ。まあそんな所（ところ）だろうな。

　どう考（かんが）えても、このゲームはソロだとマゾい。

　一回（かい）攻撃（こうげき）される間（あいだ）に、何回（なんかい）攻撃（こうげき）できるかが全然（ぜんぜん）違（ちが）う。

　私（わたし）たちは一覧（いちらん）を見（み）て、それほど「美味（おい）しくない」と判断（はんだん）。

　とっとと、引（ひ）き返（かえ）す。

　そして、記念（きねん）広場（ひろば）の隅（すみ）に立（た）っていた案内（あんない）板（ばん）を見（み）て、南東（なんとう）の池（いけ）に来（き）ている。

　入（い）り口（ぐち）のおじさんに声（こえ）を掛（か）けられた。

「お嬢（じょう）ちゃんたち冒険（ぼうけん）者（しゃ）かい。こんにちは。ここは釣（つ）り堀（ぼり）だよ。釣（つ）った魚（さかな）は持（も）ち帰（かえ）りオッケイ。九時（じ）から五時（じ）まで一日（いちにち）中（じゅう）いて、５００セシルだ」

「ふーん。それで」

　クルミが気（き）のない返事（へんじ）をする。

「釣（つ）り竿（ざお）、餌（えさ）つきのレンタルもやってるよ。こちらも５００セシルだよ」

「それじゃあいいです。やめます」

「……そ、そんなぁ」

　私（わたし）たちは、今日（きょう）はやめた。

　今（いま）午後（ごご）三時（じ）頃（ごろ）だ。今（いま）からだと時間（じかん）当（あ）たりの料金（りょうきん）がもったいない。

　結局（けっきょく）私（わたし）たちは、今（いま）すぐやらなければいけないことを見（み）つけられなかったのでお茶（ちゃ）にする。

　東村（ひがしむら）にはない、おしゃれな喫茶（きっさ）店（てん）に入（はい）った。

　正面（しょうめん）が全面（ぜんめん）オープンになっていて、外（そと）にもテーブルとイス、パラソルが立（た）っている。

「はー。喫茶（きっさ）店（てん）なんて久（ひさ）しぶり」

「リアルではあんまり行（い）かないよね」

「あら、ワタクシはたまに行（い）っていましたわ」

　メニューを見（み）る。

　・タンポポ茶（ちゃ）　　　　 ４００セシル

　・ウーロン茶（ちゃ）　　　　 ３００セシル

　・ツグミのジュース　 ６００セシル

　・ホットケーキ　　　 ５００セシル

　・ツグミのケーキ　　 ８００セシル

　・タンポポ茶（ちゃ）のケーキ ８００セシル

　・ウサギサンド　　　 ５００セシル

　さあ、どれにしよう。

　ちっちゃい声（こえ）で会話（かいわ）する。

「ねえねえ。なんか高（たか）くない？」

「そのようですわね。今（いま）なら払（はら）えなくはないですけれど」

　いや、今（いま）思（おも）うと、一食（いっしょく）５０セシルで食（た）べられる宿屋（やどや）が激安（げきやす）なのか？

　もしかして、あの宿屋（やどや）赤字（あかじ）なんじゃ……。

「せっかくだから、食（た）べていきましょう。これも社会（しゃかい）勉強（べんきょう）ですわ」

　そういうサクラちゃんに納得（なっとく）して、注文（ちゅうもん）する。

　私（わたし）とサクラちゃんはタンポポ茶（ちゃ）にツグミのケーキ。

　そしてクルミはそれに追加（ついか）でウサギサンド。

　料金（りょうきん）は前払（まえばら）いらしい。

　４，１００セシルで残金（ざんきん）は１９万（まん）セシルぐらい。

　狩（か）りの間（あいだ）は、時間（じかん）があってもあまり無駄（むだ）な会話（かいわ）はしないようにしている。

　皆（みんな）でただおしゃべりをする時間（じかん）は、あまりなかったので、ただ会話（かいわ）するというのもたまには良（よ）い。

　食（た）べ終（お）わった後（あと）、クルミが聞（き）いてきた。

「ねえねえ、満腹（まんぷく）度（ど）の最大（さいだい）値（ち）っていくらになってる？」

「私（わたし）は１００のままだよ」

「ワタクシも１００ですわ」

　ちょっと間（ま）があった。

「わたし、１０６なんだけど」

　いままでも、クルミは私（わたし）たちより多（おお）く食（た）べていた。

　どうやら、それでお腹（なか）が大（おお）きくなったみたいだ。

　そんなところまで成長（せいちょう）パラメータ扱（あつか）いなんだな。

　これは大（だい）事件（じけん）である。

　なぜなら、このゲームではポーションや何（なに）やらを食（た）べてもお腹（なか）が膨（ふく）れる。

　満腹（まんぷく）度（ど）の最大（さいだい）値（ち）が大（おお）きいということは、回復（かいふく）回数（かいすう）の限界（げんかい）値（ね）が高（たか）くなることを意味（いみ）している。

　まあ、私（わたし）たちのパーティーではあまり意味（いみ）ないけど。