[総ルビ]私たちだけ24時間オンライン生産生活

３２．火魔法とトカゲ

◆３２．火（ひ）魔法（まほう）とトカゲ

　私（わたし）たちは、露店（ろてん）を後（あと）にして平原（へいげん）のタコ地帯（ちたい）の先（さき）に来（き）ていた。

　出会（であ）ったタコは、適当（てきとう）にやっつけている。

　まさにタコをタコ殴（なぐ）りだ。

　いえ、なんでもありません。ちょっと言（い）ってみたかったんです。

　タコは気持（きも）ち悪（わる）いということで、なるべくスルーした。

　タコ地帯（ちたい）の先（さき）には、トカゲ地帯（ちたい）が待（ま）っていた。

　モンスター「カナヘビ」。トカゲって呼（よ）んでるけど、カナヘビなんだそうだ。

　トカゲとカナヘビと、ヤモリとイモリの違（ちが）いが良（よ）く分（わ）からない。

　体長（たいちょう）はコモドオオトカゲぐらいある。すなわち１メートル５０センチぐらいある。

　サクラちゃんが盾（たて）装備（そうび）に戻（もど）っていて、それでトカゲと対峙（たいじ）している。

　トカゲは、突撃（とつげき）攻撃（こうげき）もしてくるけど、脅威（きょうい）なのは尻尾（しっぽ）振（ぶ）りのほうだった。

　重（じゅう）装備（そうび）のサクラちゃんが、尻尾（しっぽ）攻撃（こうげき）でノックバックするくらいだ。

　それでも懸命（けんめい）に耐（た）えて、三人（にん）で総（そう）攻撃（こうげき）して、やっつけること自体（じたい）は可能（かのう）だった。

　弱点（じゃくてん）はと言（い）うと、掲示（けいじ）板（ばん）情報（じょうほう）でも、実感（じっかん）としても特（とく）にないらしい。

　今（いま）までのモンスターと比（くら）べて明（あき）らかに固（かた）い。

　魔法（まほう）も物理（ぶつり）攻撃（こうげき）にも平気（へいき）な顔（かお）をしている。

　火（ひ）魔法（まほう）「ファイアショット」が当（あ）たった時（とき）だけは、目（め）をつぶったりして、痛（いた）そうな表情（ひょうじょう）をする。

　しかし、若干（じゃっかん）効（き）いてる程度（ていど）みたいだ。

　普通（ふつう）のゲームならＨＰバーの減（へ）りで、有効（ゆうこう）、無効（むこう）を判断（はんだん）するけど、このゲームでは、相手（あいて）の動（うご）き、表情（ひょうじょう）から読（よ）み取（と）るしかない。

　なかなかにハードである。

　ボスなんか、何割（なんわり）減（へ）ったか分（わ）からないと、きついだろう。

　撤退（てったい）か、続行（ぞっこう）かの判断（はんだん）が付（つ）かないのではないか。

　また、テイマー職（しょく）があるなら、敵（てき）のＨＰが減（へ）ったら捕（つか）まえやすいのが定番（ていばん）なのに分（わ）からないから、殺（ころ）しちゃったりするだろう。

　いつものドロップアイテム情報（じょうほう）。

　・トカゲの肉（にく）

　・トカゲの皮（かわ）

　名前（なまえ）だけ変（か）えただけじゃね？　って思（おも）うでしょ。私（わたし）もそう思（おも）う。

　とりあえず、トカゲを倒（たお）しながらデルタ町（まち）方面（ほうめん）へと進（すす）んでいった。

　するとどうでしょう。

　トカゲ地帯（ちたい）が終（お）わり、またウサギ地帯（ちたい）になり、畑（はたけ）地帯（ちたい）になった。

　日（ひ）が高（たか）いうちに、デルタ町（まち）に到着（とうちゃく）です。

　一番（いちばん）乗（の）り？　違（ちが）うのかな？　ちょっと分（わ）かんない。

　この町（まち）は、立派（りっぱ）な石（いし）の塀（へい）があり、こちら側（がわ）には門（もん）が付（つ）いている。

　門（もん）には門番（もんばん）が四人（にん）ほど常駐（じょうちゅう）している。

「門番（もんばん）さん。ここを通（とお）った神（かみ）の使（つか）いの冒険（ぼうけん）者（しゃ）は何人（なんにん）ぐらいですか？」

「東口（ひがしぐち）は、初（はじ）めてじゃないかな。南口（みなみぐち）はすでに通（とお）った連中（れんちゅう）がいるって聞（き）いたよ」

　門番（もんばん）にお礼（れい）を言（い）って、入門（にゅうもん）チェックをされて、通（とお）してもらった。

　門（もん）を抜（ぬ）けたところは、広場（ひろば）になっている。

　そこには、露店（ろてん）がいくつかあり、トマトジュース店（てん）の前（まえ）に水色（みずいろ）髪（がみ）のどこかでみたエルフが買（か）い物（もの）をしていた。

「やあ、皆（みな）。久（ひさ）しぶり。また会（あ）ったね」

「リアル換算（かんさん）では毎日（まいにち）会（あ）ってると思（おも）いますよ」

「それもそうだね」

　リング・ウッドこと丸木（まるき）先生（せんせい）だ。

「また運営（うんえい）から、デルタ町（まち）に『君（きみ）の女（おんな）の子（こ）たち』がもうじき着（つ）くって連絡（れんらく）が来（き）てね」

「はあ。監視（かんし）してるんですね」

「そりゃね。ところでトマトジュース飲（の）む？」

「それ酸（す）っぱいですよ。いらないです」

「そう。この町（まち）には俺（おれ）の診療（しんりょう）所（じょ）が建（た）ってるから、何（なに）かあったら寄（よ）ってね」

「分（わ）かりました。ではさようなら」

　町（まち）を散策（さんさく）しよう。

　人通（ひとどお）りはそこまで多（おお）くない。土曜（どよう）の真（まっ）昼間（ぴるま）ということもある。

　東西（とうざい）南北（なんぼく）に門（もん）があり、そこから中央（ちゅうおう）記念（きねん）広場（ひろば）まで広（ひろ）い一本（いっぽん）道（みち）が続（つづ）いている。

　とりあえず、記念（きねん）広場（ひろば）まで行（い）ってみよう。

　町（まち）の道（みち）は石畳（いしだたみ）で、貧（まず）しい家（いえ）は木造（もくぞう）、立派（りっぱ）な家（いえ）は石（いし）の壁（かべ）のようだ。

　特（とく）に何（なに）もなく記念（きねん）広場（ひろば）に到着（とうちゃく）した。

　ＮＰＣの屋台（やたい）と露店（ろてん）がいくつかあり、掲示（けいじ）板（ばん）もあった。

　掲示（けいじ）板（ばん）を覗（のぞ）いてみる。

『俺（おれ）たちが一番（いちばん）乗（の）りだぜ。皆（みな）よろしく。――チョコ、クッキー、ワタアメ、チーム「おやつ」一同（いちどう）』

　なんだこれ。確（たし）かにおやつだな。

　しかも、リアルか他（ほか）のゲームからの知（し）り合（あ）い連中（れんちゅう）みたいだね。

　名前（なまえ）を決（き）めた段階（だんかい）で、統一（とういつ）感（かん）を出（だ）すには、事前（じぜん）に打（う）ち合（あ）わせをしないといけないから。

　他（ほか）にはまだ張（は）り紙（がみ）はない。張（は）り合（あ）っても仕方（しかた）がない。

『空（あ）き瓶（びん）、薬草（やくそう）、白（しろ）キノコ、ツグミの実（み）など買（か）い取（と）るので露店（ろてん）で売（う）ってください。――匿名（とくめい）希望（きぼう）』

　とりあえず、買（か）い取（と）り依頼（いらい）を出（だ）しておく。

　冒険（ぼうけん）者（しゃ）ギルド・デルタ町（まち）中央（ちゅうおう）店（てん）は、中央（ちゅうおう）広場（ひろば）横（よこ）に構（かま）えているでっかい所（ところ）だった。