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３１．マイケルと紅蓮の杖

◆３１．マイケルと紅蓮（ぐれん）の杖（つえ）

　マイケルは村長（そんちょう）曰（いわ）く、かなり出来（でき）がいい。

　まず注（そそ）いだ魔力（まりょく）がベテランの村長（そんちょう）、攻撃（こうげき）魔法（まほう）系（けい）の私（わたし）、白（しろ）魔法（まほう）系（けい）のヒカリちゃんのもので、魔法（まほう）全般（ぜんぱん）が得意（とくい）な性質（せいしつ）になったようだ。

　ただし問題（もんだい）もある。それはＨＰ回復（かいふく）のヒールとＨＰ／ＭＰポーションが効（き）かないのだ。理（り）不尽（ふじん）である。

　使（つか）い捨（す）てと言（い）う訳（わけ）ではない。

　回復（かいふく）には、時間（じかん）経過（けいか）または主人（しゅじん）の魔力（まりょく）を注（そそ）いでやる必要（ひつよう）がある。

　自動（じどう）人形（にんぎょう）：茶色（ちゃいろ）ウサギのぬいぐるみ

　名前（なまえ）：マイケル

　　一針（ひとはり）一針（ひとはり）頑張（がんば）って縫（ぬ）ったぬいぐるみ。癒（いや）しの力（ちから）が込（こ）められている。錬金（れんきん）術（じゅつ）により自動（じどう）人形（にんぎょう）化（か）。

　　レア度（ど）：５　　ランク：４

　Ｌｖ：１

　ＨＰ：２００／２００

　ＭＰ：２５０／２５０

　主人（しゅじん）：ヒカリ

　　※特殊（とくしゅ）制約（せいやく）：主人（しゅじん）変更（へんこう）不可（ふか）

　装備（そうび）補正（ほせい）(主人（しゅじん）に適用（てきよう）)

　　防御（ぼうぎょ）力（りょく）：１０

　　魔防（まぼう）力（りょく）：１５

　　回復（かいふく）力（りょく）：２０

　装備（そうび）

　　(なし)

　スキル

　　ウサギパンチ：Ｌｖ１

　　ヒール：Ｌｖ３

　　マジックボール：Ｌｖ１

　　アイスブリーズ：Ｌｖ１

　私（わたし）が魔力（まりょく）を注（そそ）いだせいか、マジックボールとアイスブリーズを覚（おぼ）えていた。

　五人（にん）プラス、マイケルで草原（そうげん）にやってきた。

　私（わたし）たちは見学（けんがく）だ。

　まずはウサギ戦（せん）から。

　マイケルのウサギパンチが決（き）まる。

　防御（ぼうぎょ）力（りょく）高（たか）めのマイケルはウサギの攻撃（こうげき）ぐらいではＨＰがほとんど減（へ）らない。

　次（つぎ）はアイスブリーズからのマジックボールとパンチ攻（ぜ）めでウサギをやっつけた。

「マイケルよくやったね」

「ヒカリちゃんありがとう」

　ジャンプはできるけれど、空（そら）を飛（と）んだり浮（う）いたりはできないようだ。

　ウサギをやっつけたマイケルはヒカリちゃんに抱（だ）かれている。

　さらに何回（なんかい）かウサギ、プリン戦（せん）を行（おこな）った。

　ちなみに、召喚（しょうかん）獣（じゅう）やテイムモンスターは良（よ）くパーティー枠（わく）を占領（せんりょう）するというゲームが多（おお）い中（なか）、このＷＶＲＯの自動（じどう）人形（にんぎょう）は主人（しゅじん）の装備（そうび）扱（あつか）いで、人数（にんずう）にカウントされないらしい。

　装備（そうび）なので、外（はず）してストレージに放（ほう）り込（こ）むと消（き）える。

　経験（けいけん）値（ち）は本人（ほんにん）の働（はたら）きで増（ふ）えると言（い）われているそうだ。

　実験（じっけん）したところ、これまた良（よ）く分（わ）からない理屈（りくつ）で、剣（けん）などを装備（そうび）できる。

　ぬいぐるみだったので、指（ゆび）がないけれど、吸（す）い付（つ）いているみたいになっている。

　ヒカリちゃんとおじいさまは、これから用事（ようじ）があるとかで、帰（かえ）って行（い）った。

　私（わたし）たちも一度（いちど）戻（もど）ることにする。

　何（なん）となくの習慣（しゅうかん）として、露店（ろてん）は午前（ごぜん）中（ちゅう）に出（だ）すというのが、東村（ひがしむら）のローカルルールみたいになっている。

　朝（あさ）から売（う）るから、昼（ひる）には売（う）り切（き）れるだけともいう。

　現在（げんざい）の時間（じかん）はまだ９時（じ）を過（す）ぎたころだ。

　露店（ろてん）を見（み）て回（まわ）るとプリン産（さん）の武器（ぶき）が思（おも）いの外（ほか）たくさん売（う）っていた。

　ハンマー、斧（おの）、鎌（かま）、短剣（たんけん）、ナイフ、杖（つえ）、ロザリオがあった。

「杖（つえ）見（み）てってよ。何（なん）と火（ひ）魔法（まほう）を覚（おぼ）えられるレア武器（ぶき）だよ」

　ついに露店（ろてん）にも出（で）たか。

　いくらだろうか。

「１０，０００セシルでどうだい。スキル付（つ）きだから安（やす）いと思（おも）うぜ」

　悩（なや）む。出来（でき）るなら基本（きほん）属性（ぞくせい）ぐらいは揃（そろ）えておきたい。

　しかしデルタ町（まち）までたどり着（つ）けば、いくらでも覚（おぼ）え放題（ほうだい）という噂（うわさ）というか希望（きぼう）みたいなものがある。

「火（ひ）魔法（まほう）の特性（とくせい）は？　何（なに）か利点（りてん）は？」

「お姉（ねえ）さん良（よ）い着眼（ちゃくがん）点（てん）だぜ。火（ひ）魔法（まほう）は火力（かりょく）重視（じゅうし）だ。他（ほか）の魔法（まほう）より攻撃（こうげき）力（りょく）が高（たか）い。防御（ぼうぎょ）が高（たか）い敵（てき）におすすめだぜ」

「クルミ、サクラちゃん、どうしようか」

「ミケがほしいなら、いいよ。お金（かね）結構（けっこう）あるし」

「はい。ワタクシもミケさんが必要（ひつよう）とするなら、構（かま）いませんわ」

「いいこと考（かんが）えた。氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）と交換（こうかん）とかどう？」

「『古（ふる）い氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）』か。どれどれ、なるほど」

　店主（てんしゅ）に氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）を見（み）せて、交換（こうかん）できないか確認（かくにん）する。

　アイスブリーズの氷結（ひょうけつ）効果（こうか）も伝（つた）える。

「ただの交換（こうかん）だと、俺（おれ）の利益（りえき）がないぜ。２，０００セシルと杖（つえ）交換（こうかん）でどうだ？」

「分（わ）かったわ。それでいいよ」

　杖（つえ）はただ使（つか）っただけでは、耐久（たいきゅう）が減（へ）らない。

　ダメージを受（う）けたり、直接（ちょくせつ）殴（なぐ）ったりすると、耐久（たいきゅう）が減（へ）るそうだ。

　だから私（わたし）の杖（つえ）は、ドロップした時（とき）と比（くら）べて耐久（たいきゅう）がほとんど減（へ）っていなかった。

　耐久（たいきゅう）が減（へ）ると評価（ひょうか）額（がく）がある程度（ていど）下（さ）がる。

　私（わたし）は２，０００セシルを出（だ）して、用済（ようず）みの氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）と『古（ふる）い紅蓮（ぐれん）の杖（つえ）』を交換（こうかん）した。

　氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）は、上（うえ）に多（た）角形（かっけい）の氷（こおり）の意匠（いしょう）がついていて、全体（ぜんたい）的（てき）に紺色（こんいろ）だった。

　紅蓮（ぐれん）の杖（つえ）は、てっぺんに炎（ほのお）の形（かたち）の彫刻（ちょうこく）があり、全体（ぜんたい）的（てき）に赤黒（あかぐろ）い色（いろ）をしていた。