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２５．ポーション作成と魔法詠唱

◆２５．ポーション作成（さくせい）と魔法（まほう）詠唱（えいしょう）

　昨日（きのう）は日（ひ）が暮（く）れてからも森（もり）に行（い）って、二十二時（じ）頃（ごろ）に宿（やど）に戻（もど）ってきて寝（ね）た。

　さすがにクルミとサクラちゃんも作業（さぎょう）をしないで寝（ね）たようだ。

　九日（ここのか）目（め）の朝（あさ）。いつものスープに固（かた）いパンを食（た）べる。

　なんか、そういえば、毎日（まいにち）のように干肉（ほしにく）は作（つく）ってたけど、あまり生産（せいさん）職（しょく）生活（せいかつ）を満喫（まんきつ）してない気（き）がする。

　普通（ふつう）にモンスター狩（か）って、薬草（やくそう）採取（さいしゅ）してフィールドワークに勤（いそ）しんでた。

　ところで、手元（てもと）に薬草（やくそう）が三百四十個（こ）、白（しろ）キノコが八十個（こ）ある。

　昨日（きのう）の夜（よる）にまた増（ふ）えたのだ。

　だから今日（きょう）の午前（ごぜん）中（ちゅう）は、村長（そんちょう）の所（ところ）に入（い）り浸（びた）って、全部（ぜんぶ）ポーションにしてやる。

　計算（けいさん）すると空（あ）き瓶（びん）が四十個（こ）足（た）りない。

　買（か）ってきちゃいましょう。四十個（こ）２０セシルで８００セシル。

　ちなみに、村長（そんちょう）の家（いえ）の作業（さぎょう）部屋（べや）は他（ほか）のユーザーと話（はなし）をする応接（おうせつ）間（ま）とは別（べつ）になっているため、新規（しんき）ユーザーなどが、私（わたし）たちが村長（そんちょう）の家（いえ）にいるときに来（き）ても、気（き）が付（つ）かない構造（こうぞう）になっている。

　囲炉裏（いろり）のある部屋（へや）も別（べつ）にあるのだ。

「そうか、オオオオカミをやっつけたか。お嬢（じょう）さんたちも一人（いちにん）前（まえ）の冒険（ぼうけん）者（しゃ）じゃな。しかし奴（やつ）はまたすぐ復活（ふっかつ）するのじゃ」

　とか言（い）っていた。特（とく）に何（なに）もくれなかった。

　クエストではないんだな。討伐（とうばつ）報酬（ほうしゅう）とか、ちょっと期待（きたい）してたんだけどな。

　私（わたし）は三つを一セットにして、次々（つぎつぎ）ポーションを作成（さくせい）する。

　すりつぶして、お湯（ゆ）を沸（わ）かして、六十度（ど）まで温度（おんど）を下（さ）げて、そして、お湯（ゆ）に薬草（やくそう）を投入（とうにゅう）する。

　それを繰（く）り返（かえ）す。

　夜（よる）の内（うち）に空（あ）き瓶（びん）に泉（いずみ）の美味（おい）しい水（みず）を汲（く）んでおいたので、ランクの高（たか）い水（みず）も使（つか）える。

　普通（ふつう）のゲームなら「六十八回（かい）、作成（さくせい）。材料（ざいりょう）は五個（こ）にお水（みず）」でできるのに、ちょっと面倒（めんどう）だ。

　簡単（かんたん）、作成（さくせい）スキルみたいな便利（べんり）魔法（まほう）はないのだろうか。

　なんというか、大量（たいりょう）作成（さくせい）するには、リアル的（てき）作業（さぎょう）効率（こうりつ）スキルが必要（ひつよう）だ。

　色々（いろいろ）なことを考（かんが）えながら流（なが）れ作業（さぎょう）をする。

　そういえば丸木（まるき）先生（せんせい）は、変（へん）な爆弾（ばくだん）みたいの使（つか）っていたな。

　あれは未（み）発見（はっけん）アイテムじゃないかな。

　でも先生（せんせい）は、半分（はんぶん）ＧＭみたいな立場（たちば）だから、きっと、通常（つうじょう）手段（しゅだん）で入手（にゅうしゅ）したんじゃないんだろうな。

　ヒカリちゃんのヒール。

　詠唱（えいしょう）すると強（つよ）くなる秘密（ひみつ）、結局（けっきょく）まだ聞（き）いてないな。

　お湯（ゆ）を沸（わ）かしている間（あいだ）にメッセージ送（おく）りつけて聞（き）いておこう。

『ミケ：ヒカリちゃん、ヒールが詠唱（えいしょう）で強（つよ）くなる秘密（ひみつ）教（おし）えてください』

　すぐに返事（へんじ）があった。

『ヒカリ：農家（のうか）のおばさんに聞（き）きました。昔（むかし）教会（きょうかい）に居（い）たそうです』

『ヒカリ：なんでも、祈（いの）りを込（こ）めて言葉（ことば）を唱（とな）えると、願（ねが）いが神様（かみさま）に届（とど）くので、それで強（つよ）くなるんだそうです』

『ミケ：ふんふんそれで、祈（いの）りの言葉（ことば）は固定（こてい）なの？』

『ヒカリ：自分（じぶん）で考（かんが）えて決（き）めれば、いいそうです』

『ヒカリ：定型（ていけい）句（く）はありません』

『ミケ：なるほどね。ありがとう』

『ヒカリ：ウサギ帽子（ぼうし）はもうちょっと時間（じかん）が掛（か）かりそうです』

　私（わたし）も何（なに）か決（き）めておこう。

　やはり、名前（なまえ）を名乗（なの）るのが流儀（りゅうぎ）なんだと思（おも）うので、最初（さいしょ）に名乗（なの）ることにする。

　こんなのとか「我（わ）が名（な）はミケ。大（おお）いなる自然（しぜん）。無垢（むく）なる魔力（まりょく）の本流（ほんりゅう）を我（われ）に貸（か）し与（あた）えよ。マジックボール」とかどうだろう。

　無（む）属性（ぞくせい）魔法（まほう）っぽい所（ところ）を取（と）り入（い）れてみた。

　ヒールの方（ほう）は「我（わ）が名（な）はミケ。聖（せい）なる月（つき）女神（めがみ）の癒（いや）しを我（われ）の前（まえ）に示（しめ）し賜（たま）え。ヒール」みたいな感（かん）じかな。

　この世界（せかい）の神様（かみさま）は、太陽（たいよう）神（しん）ウクレレと月（つき）女神（めがみ）アクレレの二人（ふたり）によって、統治（とうち）されているという「設定（せってい）」だから。

　太陽（たいよう）神（しん）は「動（どう）」の力（ちから）。活力（かつりょく）とか攻撃（こうげき）力（りょく）を、月（つき）女神（めがみ）は「静（せい）」の力（ちから）。癒（いや）しの力（ちから）を司（つかさど）っているとかいないとか。

　公式（こうしき）のプロローグみたいなページに書（か）いてあった。

　アイスもあったっけ。

　えっと「我（わ）が名（な）はミケ。万物（ばんぶつ）を戒（いまし）める絶対（ぜったい）零度（れいど）の氷結（ひょうけつ）の力（ちから）を我（われ）に貸（か）し与（あた）え賜（たま）え。アイスブリーズ」でどうだ。

　我（われ）ながら、完（かん）ぺきではないか。これで私（わたし）の攻撃（こうげき）力（りょく）も当社（とうしゃ）比（ひ）二倍（ばい）は確実（かくじつ）だ。

　ホログラムのメモアプリ。というのが付（つ）いているので、それに書（か）き込（こ）んでおいて、暗記（あんき）しよう。

　いざというときに、カンペありとか格好（かっこう）が付（つ）かない。

　５級（きゅう）ポーション(渋（しぶ）み控（ひか）えめ)ｘ６８

　５級（きゅう）ＭＰポーションｘ１６

　が完成（かんせい）した。ランクはいずれも３だった。

　この後（あと）の午後（ごご）は、平原（へいげん）に行（い）って狩（か）りをしたんだけど。

　もちろん、魔法（まほう）詠唱（えいしょう）のテストもした。

「ちょっ、ミケ。中二（ちゅうに）病（びょう）すぐる。ばくしょう～」

「ミケさんはこれでも真剣（しんけん）みたいですわ。笑（わら）ったら失礼（しつれい）ですわよ」

　みたいな、予想（よそう）通（どお）りの反応（はんのう）を示（しめ）していた。

　ちなみに、威力（いりょく）は高（たか）いのだろう。たぶん。

　威力（いりょく）あたりのＭＰ効率（こうりつ）が二倍（ばい）は良（よ）いはずなので、詠唱（えいしょう）が恥（は）ずかしいのと長（なが）いのを除（のぞ）けば、そこまで悪（わる）くない。

　でも最大（さいだい）の問題（もんだい）は、すぐ発動（はつどう）できないのでタイミングが難（むずか）しいのだった。