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１８．氷結の杖とパーティーボーナス

◆１８．氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）とパーティーボーナス

　私（わたし）はさっそく「古（ふる）い氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）」を装備（そうび）して、アイスブリーズをプリンにぶつけてみる。

　名前（なまえ）の通（とお）り、冷（つめ）たい風（かぜ）がプリンを包（つつ）み、短（たん）時間（じかん）だが、動（うご）きが止（と）まる。

　どうやら「状態（じょうたい）異常（いじょう）：氷結（ひょうけつ）」が発動（はつどう）して、その間（あいだ）は物理（ぶつり）攻撃（こうげき）が普段（ふだん）より有効（ゆうこう）のようだ。

　短（たん）時間（じかん）でやっつけることができた。

　ＭＰ消費（しょうひ）量（りょう）は、マジックボールより多（おお）いことが分（わ）かった。

　威力（いりょく）は良（よ）く分（わ）からない。たぶんそれなりに強（つよ）いだろう。

　敵（てき）ごとに適性（てきせい）の属性（ぞくせい）があるらしい。プリンは火（ひ）魔法（まほう）を使（つか）ってくるから反対（はんたい）の氷（こおり）に弱（よわ）そうだ。

　いつものように、ウサギの毛皮（けがわ）を雑貨（ざっか）屋（や）で売（う）り払（はら）い、村長（そんちょう）の家（うち）にお邪魔（じゃま）する。

　せっかくなので今日（きょう）はウサギ肉（にく）を干肉（ほしにく）(醤油（しょうゆ）)に加工（かこう）する。

　醤油（しょうゆ）は雑貨（ざっか）屋（や）で売（う）っていない。確認（かくにん）済（ず）み。たぶん、食（た）べ物（もの）扱（あつか）いなのだろう。

　塩（しお）胡椒（こしょう）、村長（そんちょう）に分（わ）けてもらった醤油（しょうゆ）を付（つ）けてなじんだら、火（ひ）で炙（あぶ）って乾燥（かんそう）させる。

　試食（ししょく）用（よう）にばらして食（た）べてみる。

　日本（にほん）人（じん）好（ごの）みのビーフジャーキーみたいな感（かん）じになった。私（わたし）はこれが一番（いちばん）好（す）きかな。

「うひょー。ハムっぽさがなくておいしいよ～」

「醤油（しょうゆ）もいいですわね」

　二人（ふたり）にも好評（こうひょう）のようだ。

　試食（ししょく）用（よう）の残（のこ）りは、明日（あした）露店（ろてん）で出（だ）してもらおう。

「ところで村長（そんちょう）さん。他（ほか）の人（ひと）には料理（りょうり）と調薬（ちょうやく）は教（おし）えないのですか？」

「うむ、教（おし）えてもいいのじゃが、そもそも教（おし）えてほしいと言（い）ってくる者（もの）は少（すく）ないのじゃ。それに名乗（なの）らない不届（ふとど）き者（しゃ）には、面倒（めんどう）だから断（ことわ）っておるわい。高圧（こうあつ）的（てき）な態度（たいど）の者（もの）もおる。困（こま）ったものじゃ」

「はい、同業（どうぎょう）者（しゃ）として、すみません。代（か）わりに謝（あやま）っておきます」

「なに、お嬢（じょう）さんたちは気（き）にせんでよい。そういえば言（い）い忘（わす）れていたが、パーティー名（めい）を決（き）めたようじゃな。名前（なまえ）はその者（もの）の本質（ほんしつ）を表（あらわ）す大切（たいせつ）なものじゃ。名前（なまえ）を付（つ）けて、長（なが）く経過（けいか）すると、ボーナスの加護（かご）が付（つ）くと言（い）われておる。野良（のら）パーティーより固定（こてい）パーティーの方（ほう）が優遇（ゆうぐう）されるということじゃ。たまにゲストを増（ふ）やす程度（ていど）は問題（もんだい）ないぞ。覚（おぼ）えておくといい」

「情報（じょうほう）ありがとうございます」

　さらっと有用（ゆうよう）情報（じょうほう）を流（なが）してくる村長（そんちょう）。さすが村長（そんちょう）。これからもよろしく。

　宿屋（やどや）で毎晩（まいばん）同（おな）じメニューのそこそこの味（あじ）のスープと固（かた）いパンを食（た）べる。

　そして、夜（よる）部屋（へや）に戻（もど）って、二人（ふたり）はペンダントづくり、私（わたし）は情報（じょうほう）収集（しゅうしゅう）だ。

　案（あん）の定（じょう）「氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）」の情報（じょうほう）はまだ掲載（けいさい）されていなかった。

　プリンが武器（ぶき）を落（お）とす情報（じょうほう）は、掲載（けいさい）されていた。

　もっとも「初期（しょき）武器（ぶき）より補正（ほせい）の悪（わる）いハズレ装備（そうび）。開始（かいし）早々（そうそう）、職種（しょくしゅ）を転向（てんこう）する人（ひと）向（む）けや、雑貨（ざっか）屋（や）で売（う）れるので、出（で）ないよりはマシだが、レアを狙（ねら）うほどではない」と評価（ひょうか）されていた。

　新（しん）スキルを覚（おぼ）えられると書（か）き込（こ）んだら、プリン狩（が）りが発生（はっせい）するだろうか。

　七日（なのか）目（め）の朝（あさ）。私（わたし）たちは朝（あさ）ご飯（はん）を頂（いただ）く。

　今日（きょう）の朝（あさ）ご飯（はん）は、ウサギ肉（にく）のサンドイッチだった。

「すみません。これ、お昼（ひる）のお弁当（べんとう）用（よう）に購入（こうにゅう）できませんか？」

「あいよ、今朝（けさ）は余（あま）ってるから、欲（ほ）しければ５０セシルで提供（ていきょう）するよ」

　塩（しお）胡椒（こしょう）で焼（や）いたウサギ肉（にく）とレタスのような葉（は）っぱを、薄（うす）く切（き）った固焼（かたや）きパンで挟（はさ）んである。

　ぶっちゃけると、いつもの夜（よる）ご飯（はん）よりおいしいと思（おも）う。

　四人（にん）分（ぶん）２００セシルを払（はら）い、お昼（ひる）として持（も）っていく。

　どうして四人（にん）分（ぶん）かって？　それは、クルミが二人（ふたり）分（ぶん）食（た）べると主張（しゅちょう）したからだ。

　今日（きょう）も露（ろ）店（てん）を出（だ）してもらうために、雑貨（ざっか）屋（や）に寄（よ）りトラニー君（くん）を借（か）りる。

　今日（きょう）の販売（はんばい）品（ひん）は以下（いか）の通（とお）り。

　・星形（ほしがた）の木工（もっこう）ペンダント　　　５，０００セシル　ｘ３

　・ウサギ絵（え）の木（き）のペンダント　４，０００セシル　ｘ４

　・ウサギの干肉（ほしにく）(塩（しお）胡椒（こしょう）)　　　　１５０セシル　ｘ１０

　・ウサギの干肉（ほしにく）(塩（しお）ハーブ)　　　１５０セシル　ｘ１０

　・ウサギの干肉（ほしにく）(醤油（しょうゆ）)　　　　　１５０セシル　ｘ２０

　・ツグミの実（み）　　　　　　　　　１００セシル　ｘ３０

　ツグミの実（み）が残（のこ）っていたのを忘（わす）れていたので、少（すこ）し残（のこ）して売（う）りに出（だ）す。

　一粒（ひとつぶ）１００セシルだから高（たか）いと思（おも）う。売（う）れなくてもいい。おまけだね。

　トラニー君（くん）も、魔法（まほう）のアイテム袋（ぶくろ）に全部（ぜんぶ）収納（しゅうのう）して持（も）っていった。

　だいたいのＮＰＣもアイテム袋（ぶくろ）を持（も）っていて、便利（べんり）に使（つか）っているようだ。

　しかし、収納（しゅうのう）したからといって、時間（じかん）経過（けいか）がないわけではないので、鮮度（せんど）が落（お）ちるものもある。

　今日（きょう）も村長（そんちょう）の所（ところ）へ寄（よ）ろう。

「村長（そんちょう）さん、今日（きょう）はご用（よう）はないですか？」

「そうじゃの、特（とく）にクエストにはならんのじゃが、冒険（ぼうけん）者（しゃ）のために薬草（やくそう）を採取（さいしゅ）してポーションを作（つく）ってほしいのじゃ。薬草（やくそう）の群生（ぐんせい）地（ち）はわしが教（おし）えておくぞ」

「わかりました」

「露店（ろてん）ゴザは持（も）っているかな？　できたポーションは自分（じぶん）たちで露店（ろてん）で販売（はんばい）するといい」

　ホログラムのマップ画面（がめん）に印（しるし）が付（つ）いた。

　村長（そんちょう）、最初（さいしょ）の時（とき）は教（おし）えてくれなかったじゃないですか！　とは言（い）えない。

　まだそこまで私（わたし）たちを信用（しんよう）していなかったのだろう。

　今日（きょう）はまた、森（もり）へ行（い）くことが決定（けってい）した。