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１７．役割交代体験

◆１７．役割（やくわり）交代（こうたい）体験（たいけん）

　六日（むいか）目（め）の朝（あさ）がきた。

　今日（きょう）は、お金（かね）もたまってきたので、宿（やど）で朝食（ちょうしょく）を頂（いただ）いた。

　昼食（ちゅうしょく）も戻（もど）ってきて食（た）べたいくらいだわ。

　ほとんどの冒険（ぼうけん）者（しゃ）は、寝（ね）る時間（じかん）はログイン時間（じかん）制限（せいげん）がもったいないため、ログアウトしていく。

　だから、朝夕（あさゆう）は結構（けっこう）混雑（こんざつ）するけれど、部屋（へや）数（かず）はそこまで多（おお）くない。

　朝食（ちょうしょく）を摂（と）っていたら、メッセージが来（き）た。

　丸木（まるき）先生（せんせい）だった。

『調子（ちょうし）はどうだい。問診（もんしん）するから宿（やど）で待（ま）っててくれ』

　丸木（まるき）先生（せんせい）のエルフさんが宿屋（やどや）にやってきた。

　問診（もんしん）は宿（やど）の個室（こしつ）を借（か）りて一人（ひとり）ずつ行（おこな）われた。

　特（とく）に三人（にん）とも異常（いじょう）はなかった。

　しいて言（い）えば、リアルに戻（もど）った時（とき）にこちらでは不要（ふよう）な動作（どうさ）をするのを忘（わす）れそうな懸念（けねん）がある程度（ていど）だ。

　ほぼ一週間（しゅうかん）も両親（りょうしん）と会（あ）わないとか、ほとんどなかったな。元気（げんき）にしているだろうか。

　あぁ。六倍（ばい）なので、まだリアルは二十四時間（じかん）経過（けいか）していないか。

　現実（げんじつ）のニュースもたまにチェックすることを勧（すす）められた。

　今日（きょう）も草原（そうげん）に行（い）く前（まえ）に、まだ少（すく）ない露店（ろてん）を見学（けんがく）する。

　ウサギの干肉（ほしにく）(塩味（しおあじ）)、ウサギの干肉（ほしにく）(塩（しお）胡椒（こしょう）)、ウサギの干肉（ほしにく）(塩（しお）ハーブ)などが売（う）っていた。

　値段（ねだん）は安（やす）くなっていない。

　携帯（けいたい）食（しょく）と同（おな）じ１８０セシル前後（ぜんご）が相場（そうば）になっているみたいだ。

　ふむ、塩（しお）胡椒（こしょう）とか、考（かんが）えることは皆（みな）同（おな）じか。

　塩（しお）だけだとちょっとハムっぽい。私（わたし）は結構（けっこう）好（す）きだけど。

　店主（てんしゅ）はウサギ肉（にく）を大量（たいりょう）に仕入（しい）れたいが、それを買（か）い入（い）れる資金（しきん）がまだないとぼやいていた。

　また、干（ほ）す時間（じかん）が五時間（じかん）ときついとも言（い）っていた。

　それだけ待（ま）つなら狩（か）りなどをしたいだろう。

　あと、例（れい）のプリンからのレア品（ひん）で「汚（よご）れた木（き）のウォーハンマー」が出（で）ていた。

　攻撃（こうげき）力（りょく）＋８、耐久（たいきゅう）４０／１００だった。値段（ねだん）は未（み）確認（かくにん）だ。

　今日（きょう）は、試（ため）してみることがある。

　それは役割（やくわり）交代（こうたい）だ。

　初期（しょき）装備（そうび）の武器（ぶき）にも利用（りよう）者（しゃ）制限（せいげん）が付（つ）いているけれど、パーティーメンバーに限（かぎ）り、レンタル機能（きのう）で貸（か）し出（だ）すことが可能（かのう）という書（か）き込（こ）みを見（み）たのだ。

　まずは私（わたし）が槍（やり）、サクラちゃんが杖（つえ）、ロザリオ、クルミが盾（たて）・ナイフにしてみた。

　草原（そうげん）で、ウサギやプリンを相手（あいて）に、攻撃（こうげき）を仕掛（しか）ける。

　クルミは危（あぶ）なげなく、盾（たて）を構（かま）えて壁（かべ）をやっている。

　私（わたし）の槍（やり）はかなりへっぽこだ。槍（やり）を突（つ）きいれるのだが、狙（ねら）いが悪（わる）いようで、急所（きゅうしょ）にあったっていないように見（み）える。

　サクラちゃんの魔法（まほう）は、見（み）た目（め）は完璧（かんぺき）である。

　普段（ふだん）より倒（たお）すのにやっぱり時間（じかん）が掛（か）かった。

　それでも皆（みな）、対応（たいおう）したスキルを覚（おぼ）えたからよかった。

　ある程度（ていど）こなしたら、私（わたし）が盾（たて）・ナイフ、サクラちゃんが槍（やり）、クルミが杖（つえ）とロザリオだ。

　クルミはなぜか、魔法（まほう）名（めい）を詠唱（えいしょう）するのが恥（は）ずかしいようだ。

　いつも、しょうもないこと叫（さけ）んだりしてるのに。

　サクラちゃんは、槍（やり）さばきも完璧（かんぺき）だ。どこか様（さま）になっていて、かっこいい。

　私（わたし）の盾（たて）は、やっぱりへっぽこで、クルミ曰（いわ）く、腰（こし）が入（はい）っていない。ローブが悪（わる）いんだよきっと。私（わたし）も重（じゅう）鎧（がい）をきれば、どっしりできるよ。

　そうして、職業（しょくぎょう）体験（たいけん）は終了（しゅうりょう）して、いつもの装備（そうび）に戻（もど）って、狩（か）りを再開（さいかい）した。

　一つ収穫（しゅうかく）がある。それは全員（ぜんいん）がヒールを習得（しゅうとく）したことだった。

　ヒールの回復（かいふく）量（りょう）は、私（わたし）が１０、クルミが７、サクラちゃんが９だ。

　キャラのステータスなどが表示（ひょうじ）されないので、考察（こうさつ）は困難（こんなん）だが、適性（てきせい）みたいなのもあるようだ。

　槍（やり）を使（つか）うだけなら、ＭＰは消費（しょうひ）しない。スキル「槍術（そうじゅつ）」というのがあるけれど、基礎（きそ）スキルのようで、別段（べつだん）「槍術（そうじゅつ）」と唱（とな）えても何（なに）も起（お）きない。

　だからクルミはＭＰが私（わたし）たちより余（あま）り気味（ぎみ）で、ヒールにＭＰを使（つか）いまわせる。

　もちろん、ロザリオなしでヒールを使（つか）うと回復（かいふく）量（りょう）が５とかなんだけど、ないよりいいだろう。

　プリンは武器（ぶき）を落（お）とすので、見（み）つけたら優先（ゆうせん）して狩（か）りをする。

　他（ほか）の大（だい）多数（たすう）のユーザーは、プリンを苦手（にがて）とするため、結構（けっこう）残（のこ）っているのだ。

　その結果（けっか）、プリンの欠片（かけら）を沢山（たくさん）と、レアアイテムを手（て）に入（はい）れた。

　それは氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）だった。

　●古（ふる）い氷結（ひょうけつ）の杖（つえ）

　　氷（こおり）魔法（まほう）の力（ちから）が秘（ひ）められてる杖（つえ）。プリンに食（た）べられて傷（いた）んでいる。まだ使（つか）える。

　　種別（しゅべつ）：武器（ぶき）(杖（つえ）)

　　レア度（ど）：３　　ランク：２

　　攻撃（こうげき）力（りょく）：５

　　魔攻（まこう）力（りょく）：８

　　耐久（たいきゅう）：４０／１００

　　特殊（とくしゅ）効果（こうか）：アイスブリーズ習得（しゅうとく）可能（かのう）

　これはなんか、事件（じけん）ですぞ。お宝（たから）ですぞ。

　武器（ぶき）の種類（しゅるい）で基礎（きそ）スキルを覚（おぼ）えるのは知（し）ってるけど、ドロップ装備（そうび）で他（ほか）の魔法（まほう）を覚（おぼ）えるなんて聞（き）いていない。