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１０．雑貨屋の一番弟子

◆１０．雑貨（ざっか）屋（や）の一番（いちばん）弟子（でし）

　３日（みっか）目（め）。今日（きょう）は何（なに）しよう。

　とりあえず朝食（ちょうしょく）はウサギの干肉（ほしにく）だ。たくさんあるし。

　村長（そんちょう）さんの所（ところ）に、今日（きょう）も御用（ごよう）聞（き）きに行（い）く。

「村長（そんちょう）さん、今日（きょう）はいかがでしょう？」

「うむ、今日（きょう）は特（とく）にないな。最近（さいきん）冒険（ぼうけん）者（しゃ）が増（ふ）えてきたからジェイクが、売（う）り物（もの）が品切（しなぎ）れになったりする、と愚痴（ぐち）を言（い）っていたのじゃ」

「分（わ）かりました。ジェイクさんの所（ところ）に行（い）ってみます」

　雑貨（ざっか）屋（や）のジェイクさんの所（ところ）へ来（き）た。

　例（れい）によって会話（かいわ）担当（たんとう）はパーティーリーダーの私（わたし）だ。

「よく来（き）たな。三日（みっか）前（まえ）から急（きゅう）に冒険（ぼうけん）者（しゃ）が増（ふ）えただろう。それで明日（あした）には補給（ほきゅう）がくるんだが、今日（きょう）はポーションと携帯（けいたい）食（しょく）の在庫（ざいこ）が心（こころ）もとない」

「ポーションなら作（つく）れますよ。材料（ざいりょう）があれば村長（そんちょう）も作（つく）れるけど。携帯（けいたい）食（しょく）はないですが、ウサギの干肉（ほしにく）なら提供（ていきょう）できます」

「ウサギの干肉（ほしにく）か。普通（ふつう）の食（く）い物（もの）は、うちでは扱（あつか）いたくないな。そういうポリシーなもんで」

「そうですか。でも私（わたし）たち露店（ろてん）で目立（めだ）ちたくないんです」

「そうだ。一番（いちばん）弟子（でし）のトラニーを付（つ）けるから、露店（ろてん）の売（う）り子（こ）を頼（たの）めばいい」

　そういうと、ジェイクさんは奥（おく）へ行（い）って、トラニーを連（つ）れてくる。

　トラニーは、猫耳（ねこみみ）族（ぞく）のようで茶（ちゃ）トラ模様（もよう）の九歳（さい）ぐらいの男（おとこ）の子（こ）だった。

「トラニーです。よろしく」

「こちらこそ、よろしくね。トラニー君（くん）」

　クルミとサクラちゃんも挨拶（あいさつ）を交（か）わした。

　ウサギの干肉（ほしにく）五十個（こ）とついでに５級（きゅう）ポーションを六個（こ）渡（わた）しておく。

　干肉（ほしにく）は２００セシル。五級（きゅう）ポーションは４５０セシルでお願（ねが）いした。

「任（まか）せてください。午前（ごぜん）中（ちゅう）で売（う）り切（き）って|みせます。あ、買（か）い取（と）りはどうします？」

「じゃあ、空（あ）き瓶（びん）を１５セシルでお願（ねが）い」

「分（わ）かりました。どんと来（こ）いです」

　手持（ても）ちの干肉（ほしにく）は残（のこ）り七個（こ）だ。

　ついでに何（なに）か生産（せいさん）設備（せつび）的（てき）な物（もの）を買（か）っていこう。

「ジェイクさん。携帯（けいたい）料理（りょうり）器具（きぐ）セットとか置（お）いてありますか？」

「あぁ、初心（しょしん）者（しゃ）携帯（けいたい）料理（りょうり）器具（きぐ）セットならあるぜ。君（きみ）たちは村長（そんちょう）に気（き）に入（い）られてるみたいだし、特別（とくべつ）に売（う）ってもいいぞ」

「ありがとうございます」

「ああ。薪（たきぎ）は道中（どうちゅう）拾（ひろ）うといい」

　料理（りょうり）セットは、魔法（まほう）の火打（ひうち）石（いし）、まな板（いた）、初心（しょしん）者（しゃ）の包丁（ほうちょう）、底（そこ）が平（たい）らなフライパン兼用（けんよう）の鍋（なべ）、鉄（てつ）串（ぐし）だった。

　全部（ぜんぶ）合（あ）わせてお値段（ねだん）１，０００セシルなり。

「塩（しお）と胡椒（こしょう）あと香草（こうそう）、それから竹串（たけぐし）が欲（ほ）しいです」

「塩（しお）胡椒（こしょう）と香草（こうそう）で２５０セシルな。串（くし）はないな。村人（むらびと）は木（き）の枝（えだ）を削（けず）って使（つか）ってる」

「じゃあそうします。ありがとう」

　残金（ざんきん）は１，６５０セシルだ。

　私（わたし）たちはさっそく森（もり）に向（む）かう。

　今日（きょう）も、ウサギ狩（が）りをする。狩（か）りをする。ウサギばっかりだ。

　今日（きょう）はたまに二匹（ひき）同時（どうじ）に出（で）てきたりする。

　そういうときは、一匹（ぴき）をサクラちゃん。もう一匹（ぴき）はクルミが相手（あいて）をする。

　クルミは槍（やり）をうまく使（つか）って、相手（あいて）を近（ちか）づけさせない戦法（せんぽう）だ。

　サクラちゃんは今日（きょう）から盾（たて）を左手（ひだりて）で持（も）ち、右手（みぎて）でナイフを使（つか）っている。

　私（わたし）は、適当（てきとう）に早（はや）く倒（たお）せそうな方（ほう）を狙（ねら）ってマジックボールを使（つか）う。

　クルミはＨＰが減（へ）ってきたため、しぶしぶ初心（しょしん）者（しゃ）ポーションを飲（の）む。

「うー。うげえ。我慢（がまん）できなくないけど渋（しぶ）いわ～」

「しょうがないね。頑張（がんば）って避（よ）けるしかないよ」

「クルミさんファイトですわ」

「ねー。ミケ、白（しろ）魔法（まほう）覚（おぼ）えてよ」

「それなら渋（しぶ）いの飲（の）まなくていいね。でもどこで覚（おぼ）えるの？」

「あー。わっかんねー」

　私（わたし）はまだ初心（しょしん）者（しゃ）ポーションまるまる十個（こ）残（のこ）ってる。

　この初心（しょしん）者（しゃ）シリーズ。すべて使用（しよう）者（しゃ）固定（こてい）属性（ぞくせい）が付（つ）いていて、売（う）っても０セシルなのだ。

　キャラクター再（さい）作成（さくせい）は一時間（じかん）に一回（かい）までと決（き）まっているんだけど、初期（しょき）アイテムを売（う）って儲（もう）けることができないようになっているらしい。

　空（あ）き瓶（びん）は１０セシルだから、十個（こ）で１００セシルにしかならないね。

　今日（きょう）はあまり深（ふか）い所（ところ）まで行（い）かずに薬草（やくそう）を積極（せっきょく）的（てき）に探（さが）すことにする。

　タンポポ草（そう）もたまに生（は）えているので、頑張（がんば）って根（ね）っこごと抜（ぬ）く。

　この森（もり）の土（つち）はフワフワなので、なんとか手（て）でも掘（ほ）りだすことができる。

　私（わたし）は何（なに）か新（しん）発見（はっけん）っぽいアイテムがないか目（め）を光（ひか）らせて歩（ある）いているけれど、ピピンとくるものはあまりなかった。

　とりあえず、枯（か）れ枝（えだ）は拾（ひろ）い集（あつ）めている。

　途中（とちゅう）で小（しょう）休止（きゅうし）をした。真（ま）っすぐな枝（えだ）を選（えら）んで串（くし）にする。

　最初（さいしょ）はサクラちゃんがやっていたが、クルミが面白（おもしろ）そうと言（い）って、ナイフを借（か）りて作業（さぎょう）しだした。

「ふっふふー。わたし木材（もくざい）加工（かこう）、向（む）いてるかも～」

「大（だい）発見（はっけん）ですね。それじゃあ木工（もっこう）はクルミさん担当（たんとう）にしましょうか」

「まっかせておいて」

　枝（えだ）を削（けず）るだけだけど、クルミとサクラちゃんには「木工（もっこう）：Ｌｖ１」が付（つ）いていた。

　私（わたし）も一本（ぽん）だけ作（つく）ったんだけど、付（つ）かなかったんだけど。