第19話 反乱軍、壊滅
「ソフィ!」
「勇者様!」
飛び込んでくる魔族二人と男一人。その中には捕縛したはずの男の姿もあった。
私達の配置故か、それとも女だからと舐められているのか、三人全員私とソフィに襲いかかってきた。
まあ、ただの盗賊に毛が生えた程度ならば。
「ハァ!」
「そりゃ!」
相手の飛び込む勢いを利用してソフィと共に回し蹴りを決める。
まんまと飛び込んできた魔族はそれぞれ左右に吹き飛ぶ。
「なっ――」
「やっぱり嘘つきだったんだな、お前」
男が反応する間もなく、瞬時に男の間合いに入る。
「キツいのいくぞ!!」
「はっえっ待っ――」
「おりゃあっ!!!」
「カッヒュッ!!??」
鳩尾に……デストロイ。私の腕を鳩尾に食い込ませながら声の出ない悲鳴を上げた男の顔は、トんでいた。
「ふぅ……爽快、ですね」
「魔王、こっちは終わったぞ」
振り返るとそこには安定した景色が広がっていた。
五人の幹部、とか言ったか。私達が倒した三人と、魔王と騎士長が鷲掴みにしている魔族と男。
まあ多分、コイツらが幹部なんだろう。
事前に情報を聞いていなかったのか。魔王にその傍付き、勇者に騎士長が来ていることを。
それともわかった上で、この程度の奴らで何とかなると本気で思っていたのか。
どちらにしろ、頭の顔には驚愕の二文字を浮かべていた。
「さて……他に誰か、やりますか?」
騎士長が頭に取り巻く盗賊共に聞く。が、非情かな。
「「う、うわぁぁぁ!!」」
蜘蛛の子を散らすように逃げていく魔族に人間。
そして残ったのは、頭と呼ばれていた男一人だった。
「晒し首にする程の奴らではなかったか」
「残虐な行為はなるべくしたくないですし、良かったのでは?」
「それもそうか……」
「ソフィ、お腹減った」
「勇者様、今は違いますよね」
「うん……」
腹減ったなあ。なんか反乱軍も拍子抜けだし、早く魔王とソフィのご飯が食べたい。
……っと、先に終戦宣言か。
ほへーっと突っ立っていると、いつの間にやら魔王と騎士長が頭を捕らえていた。
二人の意向だと晒し首にする程じゃなく、普通に牢にぶち込む予定らしい。
ソフィに手を引かれ、洞窟を出るのだった。
「王。只今戻りました」
「おぉ戻ったか!」
無事、怪我人ゼロで帰ってくることが出来た。
王に事の詳細を話す。
「そうか、そうかそうか。血を流さずに済むならそれに越したことはない。たとえ犯罪者の血だろうとな」
「ちりじりとなった反乱軍の残党もいずれ自然に消滅すると思う」
詳細を話した後、今日は一旦眠ることになった。魔王もソフィも泊まって。
夕食時。王付きのシェフが作ったものだったが、何だか物足りなかった。やはり二人のご飯に舌が慣れてしまったのだろうか。
明日の朝は二人がお礼にと作るらしい。期待して眠ろう。
「ふぅ……明日、終戦か……」
……眠れない。緊張しているのか、私は。
私が宣言するわけでもないのに……。
「喉、渇いたな」
部屋を出て、水を飲みに向かう。
「あ」
「ん」
「魔王か?」
「そういう君は勇者だな?」
キッチンに、魔王。
第19話
反乱軍、壊滅
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