第18話 嘘

「まあ、こうなりますよね」

「手応えが無いな」


 手応えが無いのも当然だろう。元来盗賊というのは力が強く、暴力で生きてきた荒くれ者、溢れ者が徒党を組んで集まった者達を指す。

 暴力でねじ伏せ、何でも上手くいくと思っている自信過剰な者が多い。

 何故なら、自分より弱い者を虐げてきたからだ。


 井の中の蛙、大海を知らず。


 そんな者達が、自身より強い者に出会ったら――?



「自分より強い相手との戦い方を知らないんだ、コイツらは」


 だから簡単に制圧出来る。


「さて、貴様ら」

「ぐぅ……なんだ!!」

「この中で一番偉い奴、誰だ」


 魔王が問う。暫く考えた後、一人の男が名を挙げた。


「この中じゃ……俺だ」

「そうか。なら知っていること、全て話してくれ」

「は、はあ?話すわけねぇだ――」


「死にたいか?」


 騎士長が男の首に剣を添える。後は引いてしまえばサックリ、斬れてしまうだろうな。


「くっ……ああわかったよ!話せばいいんだろ!話せば」

「ああそうだ。何から何まで話してもらう」


「耳の穴かっぽじってよ〜く聞いとけよ!……ウチの組織は――」



「結構、良いの持ってましたね」

「目標がより明確になったな。良かった」


 魔王が笑う。曰く、


 ――組織の形は頭が一人、幹部が五人、そして後は歴順に位が決まっている。

 ――幹部はちりじりに、そして頭はここにいるそうだ。

 ――そしてコイツは頭のいる場所まで案内出来るらしい。


「というわけで、変なことしたら即殺斬ですよ」

「わ、わかってる。俺は……案内するだけだ」


 男を先頭に、魔王と騎士長で二列、その後ろに私とソフィが並ぶ形で進んでいる。


「…」


 しかしまあ、この男、なんか胡散臭いような……。


「わかります。勇者様」

「わかってくれるか、ソフィ」

「あの男、何か隠しています」


 ここで問い詰めても話すとは思えないし、様子を伺いつつ少しずつ探っていこう。

 目配せでソフィに伝えると、納得したように頷いた。



 洞窟内は点々と明かりが灯っていて、所々にゴミが散らかっている。

 進めば進む程、それは増えていった。


「あ、あー、もう少しで着く。多分、頭以外にも待ち構えていると思う」

「わかった。ご苦労さま、ここまでの案内」

「一応、縛らせてもらいます」


 抵抗は……しないか。何かするならここだと思っていたんだが。


「じゃ、頑張れよ」


 縛られた男は何を言うでもなく、見送った。

 そして正面の扉、この先に頭がいる。


 私達はゆっくりと、その扉を開いた。



「お前らが侵入者か」

「お前が組織の頭か」


 大広間とでも言えばいいだろうか。そこに十、二十、三十は構成員がワラワラといる。

 奥にふんぞり返っているのが、多分頭だろう。


「何をしに?……まあ聞かなくてもわかってるけどよォ」

「話が早い」

「ああ話は早いぜェ?だってお前らを駆除するだけなんだからなァ!!」


「――行け」


「!」


 なっ。後ろから……人!?

 人数は三人、そして前からも!


「っ!まさか!」


 後ろからの三人の中には――


「幹部がちりじりって話!!嘘だよバ〜カ!!!」


 捕縛したはずの、男の姿があった。


 第18話

 嘘

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