第17話 手を組む悪
「ひっ……話す!話すよ!だから助けてくれ!!」
「最初からその言葉が聞きたかったんだ」
気絶した魔族を置いて、人間の男から話を聞く。有益な情報を持っていればいいのだが。
「言っとくけど、俺は下っ端だ。大した情報なんか持ってないからな!」
「大した情報かどうかは俺達が決める」
コイツの仲間が増援を呼びに行っている。来る前に聞くことを聞かなければ。
「俺は友達が稼げる仕事があるってここを紹介された」
「気軽過ぎないか?」
「俺が行った時はまだ人数も少ないし魔族だっていなかった」
なのにまだ下っ端なのか。
「ある時期を境に魔族と上の連中が絡み始めた」
「ある時期とは?」
「勇者が魔族の領地に入ってからだ」
私が?
視線が私に集まる。とりあえず前に、男の前に出てみる。
「なに……ってお、お前勇者じゃねぇか!?」
「そうだけど」
「最初から勝ち目はゼロだったってことか……」
「私がいなくても変わらんだろう」
「それは……そうかもだけど!」
クソォと呟く男。いや当たり前だろう。
話が変わったと、仕切り直して話し始めた。
「それで魔族とつるみ始めてから少しして、稼ぎが増えだしたんだ」
「それは……」
「魔族の領地にも手を出し始めた、ということか」
「正しくは元からやっていた魔族と手を組む形で動き始めたから、だな」
それぞれの領地で好き勝手していた奴らが手を組み、勢力が大きくなって更に犠牲者が出ていたというわけか。
面倒臭くなったと頭を抱える。最早ソフィは考えるのも面倒なのかぼーっとしてしまっている。
「いや、いいじゃないか」
「というと?」
「まとまっているんだろう?なら探す手間が省けた」
そうか。ここに全員集まっているのなら、ここを叩けば全て丸く収まるわけか。
例え他に拠点があるとしても、芋ずる式に見つかっていくのも時間の問題だろう。
なら何としてもここで反乱軍の主要人物達は捕えるか、位置を常に捉えていたい。
所詮下っ端、これ以上詳しいことは知らないようだった。
縛り魔族の男と一緒に眠らせて先に進む。
「思った以上に来るのが遅いんだな」
「先に奥まで着いちゃうかもしれませんね」
変わらぬ景色、光すら見えてこない。
しかしまあ、なんて言うか。
「若干、傾斜気味じゃないか?下に」
「確かに……直線ならとっくに山を貫通しているはずだしな」
地下に大帝国でも作り上げられていたら何罪に問えばいいんだ?
「国家勝手に創っちゃった罪……?」
「何を言ってるんですか勇者殿。行きますよ」
「あっすまん」
斬ってしまえば関係ないか。うん。
「あ」
奥から声が聞こえる。一……二……三……。
「……五六人いるぞ。警戒してくれ」
「わかった」
遂にか、という感じ。あのお仲間さん呼ぶの遅くない?
「次の奴らにゃ後どれ位で群れに着くのか教えてもらわないとな」
「それなら意外と近いかもしれませんよ」
歩く先に明かりが、人数は六人。
そしてその後ろにまた明かりが。
「門番、みたいなものでしょうか」
「向かい出るわけではなく、待ち構える、というわけか」
「背水の陣ですかね?」
なら、後一押しだ。頑張ろう。基本は魔王と騎士長が前に出て事足りるから見守るだけだけど。
「よし!リーダー格の奴生け捕りで持って帰るぞ!!」
「言い方が盗賊っぽいぞ、魔王」
「やはりここで……」
「騎士長様、魔王様はテンションが上がっているだけなんです」
ビシッと決まらないなあ。
第17話
手を組む悪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます