第16話 合流
「おいおいおい……」
「嫌な予感が当たってしまったか……」
ばったり遭遇、魔王とソフィ。魔族の領地に行ったはずでは?という疑問が頭に浮かび、しかし大声は出せず、悶々とする。
「なんでここにいるんだっ!?」
あくまでも小さな声で、魔王を問い詰める。
「怪しい挙動をしていた魔族を追ってきたら……ここに……」
「なっ……私達もだ……」
「つまり……」
同じ状況、同じ目的でここに辿り着いたということは。
「手、組んでいますね。反乱軍」
しまった。まさかまさかの私達より先に魔族と人間が手を取り合ってしまった。
これには魔王も頭を抱え、騎士長は胃を摩る。
頭痛薬と胃腸薬は欠かせないかもしれないな。
「先越されたな。どうする?魔王」
「壊滅させる」
「んうむ。言うと思った」
許されるわけないだろう。私達よりも早い和解など。
それが犯罪組織なら尚更。
「行くぞ!」
「まっ準備とか……!」
「あぁ、魔王ったら先走って……」
まあ準備もクソも無いのだが。
兵を連れることなく、私達は洞窟に入った。
「暗いな……それに人もいない……」
「こういうのは見張りがいるものじゃないのか?」
「自分が対処したものの中では、そうですね。いました」
洞窟内を歩く。明かりなどは無く、暗い。それに見張りなどはおらず、ひたすらに奥に進んでいく。
「あ、勇者様。もう少し先で生命反応が」
「ん、わかるのか?ソフィ」
「そうですね……生命反応というより血の気配?のようなものが」
そういえば吸血種だった。ソフィ。私の中ではサキュバ――
「ヴァンパイアですが、何か」
ヴァンパイアだった。
「勇者殿、ふざけてる場合ではないかもしれなせんよ」
「どうやら俺達は、歓迎されてないらしいな」
洞窟の奥から明かりを持った人間……それに魔族が、剣やナイフを持って近付いて来ていた。
人数は三人。魔族一人に人間二人。
既に騎士長と魔王は臨戦態勢に入っており、遅れながら私とソフィも姿勢をとる。
「……おい!何者だ!」
「人間と……魔王!?!?」
流石は魔王。名が知れている。反乱軍の魔族は魔王と知り驚くが、直ぐに覚悟を決めたように武器を構えた。
「お前ら、何をしていた!」
「何故こんな所に人間と魔族が一緒にいる!」
騎士長と魔王が並んで問うが、相手は答えない。
「まさか……共謀し何か企んでいるのか!」
答えない。
「無言は肯定と見なす。戦闘開始だ」
早い早い。早計が過ぎる……が、いいだろう。
ここまで事前情報が揃っている。真っ黒けだ。
「おい!仲間を呼んでこい!」
「は、はい!」
魔族が叫ぶ。人間の一人が言われた通りに奥へと下がって行く。
「ここは通さねぇぞ!」
「魔王と言えど……容赦はしない」
「容赦など結構。すぐ終わる」
これ、私出る幕ないな。
「うぅ……」
「ちくしょう……」
まさに即落ち。勇敢にもたった二人で魔王と人間の中では屈指の実力を誇る騎士長に挑んで行った二人は、モノの数秒で一切の抵抗が不可能なように縛られてしまった。
「私達の出番は無かったな、ソフィ」
「魔王様一人でも過剰戦力なのに、騎士長様までいては最早可哀想ですよね」
「それな」
「さて、答えてもらおうか」
私達を蚊帳の外に、魔王と騎士長は縛り上げた反乱軍の二人に詰問する。
「い、言うわけねぇだろ――」
「そういえば」
「”見せしめ”探しているんですよねぇ……」
「戦争に乗じて好き勝手している奴らに見せつける為の”見せしめ”が……ね?」
出会って数時間と思えない連携で反乱軍の二人を追い詰めていく。
既に人間の方は戦意喪失のようで、後は魔族の方のみ。
「お、俺はそんなでまかせに騙されねぇぞ……!」
「嘘だと思うのか?この俺を見て?」
「なぁ」
「嘘だと思うのか??」
「答えてくれよ」
「なぁ……なぁ!!??」
「あ」
ぶくぶくと泡を吹いて気絶した魔族。やりすぎた魔王。
「加減、わかる?」
「やりすぎた……」
「人間の方に聞きましょうか。ね?」
「ひっ……はい。わかりました……話します……」
やるからには本気だな、魔王。
第16話
合流
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