第15話 根城

「と、いうわけで」


 人間側と魔族側、両方に反乱軍がいる。

 効率を考えて、二手に別れることとなった。


「勇者、お前は最高戦力だ。人間側に行ってやれ」

「了解した。そっちはソフィだけで大丈夫か?」

「俺とソフィなら過剰戦力とも言える。だろう?」

「言えてるな」


 魔族側は魔王とソフィ、人間側は私と騎士長及び数名の兵で行く編成となった。



「捕らえよう。となったが、具体的な場所は掴めているのか?」

「勿論です。前線付近の村の近くに根城がたり、根城ごと潰せば丁度いいでしょう?」


 また前線に赴くのか……。

 ともあれ分かっているなら話は早い。経路は任せよう。


 武器やら何やら準備しているようで、何だか手持ち無沙汰。早く出発したいのだか。

 魔王とソフィも既に出てしまっていて、とにかく暇。


「なあ、まだ出発しないのか?」

「待ってください。勇者殿は強いからいいですけど、一般兵は武具を準備したりと色々あるんです」

「剣一本で何とかなるだろ」

「なりません」


 暇。



「勇者は大丈夫だろうか……」

「大丈夫ですよ魔王様。私達は私達のことをしましょう」


 魔族の領地に向かう途中、ふと心配になった。

 飛べないだろうし、移動は大丈夫だろうか?

 食料、食料は大丈夫だろうか?


「母親ですか魔王様は」

「いや、何かと心配になって……」

「だ〜い〜じょーぶですよ。勇者様、強いですし」

「う〜む」

「勇者様のことより反乱軍です。魔族側の反乱軍の位置は掴めているんですか?」


 実を言うと掴めていない。

 そもそも勇者が来るまでそういった話は流れてこなかったからな。


 居そうな所を片っ端から当たっていくしかないか?

 とにかく、行ってみないとわからない。


「心当たりとかあるか?」

「そう、ですね。前線の方なら……どうでしょう」

「ふむ……とりあえず前線付近まで戻ってみるか」


 直ぐに見つかればいいのだが……。



「さて、どうしたものか」


 停戦状態の戦場。一旦指揮官の元まで行くか。


「魔王様、お待ちください」

「ん?」

「あの者……怪しいです」


 ソフィが指を指すその先、三人程が集まり、周囲を警戒していた。

 明らかに怪しい。限りなく黒に近い灰色だ。

 言わずもがな、追うことにした。


「あっ動き始めました!……人間側の領地に向かって……?」

「そうだな……嫌な予感がするぞ……」


 杞憂に終わることを願い、進む。



「歩くのはなんか新鮮だ……」

「?どういうことです?」

「魔王とソフィは飛べるからな。背負ってもらって一緒に飛んできた」

「はぁ……」

「死ぬかと思ったぞ」

「はぁ……?」


 退屈な時間が終わり、暫く歩く。これはこれで退屈なんだけど、まあいい。


「にしてもまぁ、あれだけ時間を取っておいて、騎士長」

「なんです?」

「なんで騎士長はそんなに軽装備なんだ??」


 鎧はどこいった?


「動きやすさ重視です」

「そうなのか……」


 特に異変もなく、順調に進んだ。



 数時間。既に山を通り過ぎ、前線近くまで進んでいた。


「……流石だな。体力が無い奴魔王がいないとここまで早いか」

「?」

「いや、こっちの話だ」


 やはり前線は血なまぐさいな。息苦しい。

 だが停戦状態、これ以上臭くなることもないだろう。


 例えばほら、反乱軍でもいない限り――


「勇者殿、止まってください!」

「んあ!?」

「あの者、いやあの者達、魔族とどこかに行っています!」


 急展開。や、しかし根城に突撃する前に見つけ出せて良かった。それに魔族付きとな。


「追います。大人数は不味いので、自分と、勇者殿で」

「了解!行こう」


 まあ、少し嫌な予感がするが、うん。進もう。



「あそこの洞窟に入っていったようですね……」

「どうする?下がって兵を連れるか?」

「そうですね……」


 追った先の洞窟。前情報で聞いた根城の大まかな位置とも合っている。ここで間違いないだろう。


「それじゃあ――」


「勇者か?」


「えっ」

「勇者様!」


 なんで合流してしまってるんだ。私達は。


 第15話

 根城

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