第14話 方向性

 ‪”‬終戦宣言はしない‪”‬となったものの、反乱軍の全てを把握するのは骨が折れる。


「人間だけじゃなく魔族側にも反乱軍いる、相当厄介だぞ」

「うむ、全員を捕らえるとなると明らかに時間と労力が足りない。そもそもこの話は国民や一般兵に伝われば混乱を招く」


 いや、本当にめんどくさいな。


「ならば、人道的ではないが一つ、作戦がワシにあるぞ」


 人道的ではない。つまりは非人道的なこと、なんだ?


「見せしめ、か」

「その通り」


 反乱軍の中から、影響力の強い奴を見せしめとして晒しあげると。


「だがそれは恐怖政治みたいなものだろう」

「国民からの印象は良くないだろうな。ワシ、恐怖の王として恐れられてしまったり?」


 これをしたらお前もこうなるぞ、と恐怖で支配するわけだ。いくら反乱軍のような相手でも、良い印象を抱くわけが無い。


 まあだが、意外とアリかもしれない。


「……天秤に掛けて考えれば、私はこの方法、悪くないと思う」

「ん勇者殿、それは何故?」

「反乱軍にとって今が全盛期、ここで影響力のある人間を見せしめにすれば反乱軍の士気は大きく下がるだろう。そこで終戦宣言という形で追い打ちをかける」


 どちらにしろ抑止力として、いずれはしなければならない。なら、やるなら、最高のタイミングでやろうって話だ。


 私の意見を聞いた皆の反応は百人百様だった。


「俺は反対だ。俺の目指すものとはかけ離れている」

「魔王様が反対でしたら、私も」


 魔王とソフィは反対。


「ワシはやっていいと思うぞ。士気が下がるというのはああいう組織にとって大きい。何をするにも見せしめが頭に浮かび、一つの行動でも慎重にならざるおえなくなるからな」


 王は賛成。残るは騎士長のみだが……。


「自分も賛成です。王が賛成なら尚更」


「……割れたな。真っ二つだ」


 まあソフィと騎士長はそれぞれ魔王と王の言う方に肩入れしただろうし、実質一体一か。


「……魔族の王」

「なんだ?」

「目指すもの、と言っていたが、それは?」

「平和だ。手を取り合えるような、そんな世界にしたい」


「それは綺麗事では?」


 ピリッとした空気が漂う。元より魔王に対して好意的ではなかった騎士長だが、思った以上に踏み込む。


「そう……だな」

「血を流さずして戦争を終わらせようなど、手を汚したくない言い訳にしか聞こえない」


「…」

「騎士長様、それ以上は……」


「ああ、騎士長殿の言う通りだ」


 ソフィが止めに入る前に、魔王が言った。


「俺は綺麗事を言っているし、本気でこんな綺麗事を叶えたいと思っている。それには、何かを傷付けたくない、とか、手を汚したくない、なんて思いだって多分、その綺麗事に内包されていると思う」


「だからそうだな。俺も覚悟を決めよう」


「手を汚すのは、これで最後にしよう」


 魔王は賛成した。そして覚悟を決めた。

 その様子に、改めて魔王が彼で良かったと思った。


 第14話

 方向性

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