第13話 謁見
「ゆゆゆ勇者!?何故ここに!?」
「そのことについてお話が、王」
動揺が隠せていない王に、内心呆れ、変わらないなと思いながら頭を下げる。
後ろには魔王とソフィも同じように頭を下げている。
魔王がそんな簡単に頭を下げていいのかと問われると、正直王であるのだからそんなに軽くないと思う。まあでも今は正体隠してるわけで。
「重要な話故、別室での対応でお願いしたいのですが」
「その方らのもか?」
「えぇ。信用ならないというのなら、近衛騎士長でも付けてください」
「ま、まずは面を見てからだ。二人、面を上げよ」
ここじゃ不味い。騒ぎになる。フードを捲らせる訳にはいかない。
「王。それも踏まえて別室での説明をしたいと思っています」
「だが……」
「心配ですか?私は勇者です。この二人ではなく私を信用してください」
「うぅむ……」
「私の実力が信頼できないと?それは心外ですね。勇者として選定された時にお披露目した力が偽物だと?」
「そ、そうは言っておらん!」
優柔不断。良く言えば慎重。王としては不合格。まあ血筋というのは王の素質よりも優先されるってだけだろう。こんなんでよく統一できたなと思うところもあるが。
幸い家臣には恵まれているしな。優秀だし。
「王、失礼ですが一つ」
「おぉ、騎士長!なんだ、言ってみろ」
「話が進まないので別室に移りましょう。私と勇者殿が居れば死ぬことは無いでしょうし」
「あ……」
「勇者殿とお二人を別室にお連れしろ」
な?優秀だろう?
別室に移された私達は、テーブルを挟んで正面、王とその後ろで立っている騎士長の計五人のみで話を始める。
「単刀直入に言う。魔王と和解した」
「なっ」
「……それを信用できるという根拠は?」
「それはここにある」
合図をすると魔王とソフィはフードを取る。
「あーっ。……魔王ライベルトだ。敵意は無い」
「側近のメイド、ソフィです」
「待て、騎士長。剣を下げてくれ」
「ならない。王を害する可能性があるのなら自分は排除しなければならない」
「それじゃ話し合いにならない。それに敵意が無いのはわかるだろう?」
剣を取る騎士長を諌める。騎士長の言うことは最もであるが、それをしていたらいつまで経っても人間と魔族の話し合いなんて出来やしない。
最悪力技でも、話し合いに持っていかなければならない。
「……何か企んでいるようなら、直ぐに斬り伏せます」
「感謝する」
とりあえずは剣を下げてくれた。割り切りが良い。
「先程勇者が言った通り、和解をしたいと考えている」
「わ、和解?戦争を終わらせるというのか!?」
「そうだ。既に前線の人間と魔族は停戦状態にしてある」
とはいえ長く続くとは思えないが。
「ワシに何をしろと?」
「共に終戦宣言をして欲しい。魔族の王と人間の王が言うのなら、少なくとも表向きは終戦に至れるはずだ」
細かい復旧、そしてソフィの言っていた魔族側の裏切り者の可能性、問題は山積みだが、戦争の終結という大きい目標は達成される。
これはモチベーションにも繋がる大事な事だ。
「うぅむ……何代にも亘り続いた戦争。首都はともかく周りの地域からは貧困の声が来ている。ワシとしても終戦は歓迎だが……」
「なら王。魔王と共に……!」
「だが、戦争を続けようと画策する者もおる」
「やっぱり……人間側にもいますよね」
「火事場泥棒のように戦争を理由に強奪の限りを尽くす奴や、単純に魔族や人間、生命を奪うことに快感を得ている奴もいる。勿論、見つけ次第捕まえ、牢に入れているが」
「反乱軍、ということか」
魔族側だけ、なんてことは有り得ないか。
だとすると終戦宣言をした場合、反乱軍の敵は私勇者、魔王と王に着く者全員が敵になるということ。
つまり反乱軍と私達の新たな戦争になってしまう。
「だから簡単には表を向いて発表は出来ん」
「ふむ……それはそうだな」
「だが先も言った通りワシは終戦は賛成だ。反乱軍をどうにかし次第直ぐにでも発表したい」
この場にいる全員の意見は終戦宣言はしない。という結果になった。
次の方針は、反乱軍の撃破及び拘束。
武力行使の、楽な仕事だ。
第13話
謁見
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