第12話 城壁都市

「見えてきたぞ」

「あれか」


聳え立つ大きな壁。城壁都市とも呼ばれる首都は、既に目と鼻の先だった。


「ほら、通行証を出しておいてくれ。私が先行する」

「顔忘れられてたりしてな」

「そうなったら壁ぶち破って侵入しよう」

「無茶言わないでください……」


まずは私が話に行く。

近寄ると、門番がきちんと警備している。槍を持ち、二人組で立っていた。


「何者だ!……って、勇者様じゃないですか」

「通行証とか必要か?」

「いえ、勇者様でしたら!お通りください!」


顔パスというのは本当らしい。

適当なことを言い、門番から離れる。


「魔王、ソフィ。フードを被って、多分行けるぞ」

「顔パスだったか?」

「勿論」


ふふんっ、と鼻を鳴らす。そこはかとなく感じるVIP感、これは堪らない。


「入ったら一直線に王の所まで行ってしまおう。悪目立ちは避けたいからな」


二人を連れて門に行く。



「勇者様、そちらは?」

「旅の途中で出会った仲間だ。王へ至急伝えなければならない事がある。済まないが通してくれ」

「では御二方には通行証を」


ふむ、きっちりしている。悪くいえば柔軟性に欠けるが、門番として定められた事柄を守るというのは、即ち都市を守るのと同意義だからな。


「これでいいか?」

「こちらに」


「……はい、大丈夫です。お通りください」

「ありがとう」


門番はしっかりと仕事を果たし、私達を通した。


「入れたな。それで、ここからどこに向かえばいい?」

「あのデカい建物があるだろう?あそこだ」

「都市一番の大きさですね」


都市の内部、その中で一際目立つあのお城。あれが王の住まう城、王城だ。

心做しか初めての場所にソワソワしている二人を連れて先に進む。


「ゆ、勇者様。あの色とりどりの綿飴は一体……」

「おい勇者!あれもこれも魔族の領土では取れないものばかりだ……!買っていこう!」

「待て待て待て、自由に動くんじゃない」


目移りが多すぎる……!

子供か?


「ほら、行くぞ〜」

「ああ、待ってください……」

「料理したくなってきたな……」



王城までは、中央通りを真っ直ぐ歩いて行けば着くから迷う心配はない。

ただ、中央通りには露店が出ていたり、様々な店があったりと、今の二人にはあまりにも魅力的過ぎる道となっている。


「ん」

「わぷっ」


余所見歩きをしていたソフィに何かがぶつかった。


「まあ、すいません。大丈夫ですか?」

「わ、わ、こちらこそ、ごめんなさいっ」

「コラソフィ、余所見して歩いちゃダメだぞ」


七歳程の男の子だった。

歳の割には珍しく、礼儀正しく、頭を勢い良く下げ、謝罪していた。


「失礼、お詫びにこちらをどうぞ」

「へっ?」


するとソフィは男の子に目線を合わせ、飴ちゃんを渡した。


「わぁ……お姉さん、綺麗……!」

「!……ありがとうございます。貴方は口説き上手ですね」

「未来の女たらしか……」

「止めんか魔王」


飴ちゃんを受け取った男の子は、少し顔を赤らめ、走り去ってしまった。


「……どの種族、生物でも、子供は可愛いものですね」

「そうだな。魔族の子供も可愛かったぞ」


可愛いは正義と誰かが言っていたのを思い出した。


「さ、急ごう」

「なら余所見しないでくれ」

「……すまん」

「……すいません」


第12話

城壁都市

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