第9話 山登り

「うぇぇぇ……死ぬかと思った」

「最後まで不安定でしたね」

「その……悪かった……」


 無事、二時間の空中に揺られ、山まで着いた。

 少し酔ったか、気持ちが悪い。


「うぇぇぇ……」

「勇者様!酔われたんですね。姿勢を楽にして……はい、私の膝に」

「うい……」


 即席で敷いたシートに寝転がり、ソフィが膝枕をしてくれている。

 どっかの誰かの魔王様のせいで吐きそうだ。


「勇者様、食欲は?」

「むりぃ……」

「すまない……」

「大丈夫だ魔王……落とさなかっただけ御の字だよ……」


 目に見えて落ち込む魔王。

 怒られた子犬のようで、少し可愛い。

 そんな魔王を見ていたら少し、落ち着いた。



「落ち着きましたか?」

「あぁ……お腹減った」

「よし来た」


 待ってましたとばかりに食事の用意を始める魔王。今回のご飯はどんなものだろうか。


「と言っても作って持ってきたものなのだがな」


 そう言って小さめのケースを取り出す。

 中にはサンドウィッチが入っていた。


「おぉ」

「サンドウィッチだ。具は色々あるぞ」


 持ち運び易く、食べ易い。それがサンドウィッチ。

 具はハムチーズにツナマヨ、イチゴジャムまで幅広い。


「いただきます!!」

「勇者様、焦らずともありますから」

「喉に詰まらせるぞ」


 勿論美味しかった。



「ご馳走様」

「お粗末」

「少ししたら出ましょうか」


 満腹、までとはいかないが満足はした。

 特にハムチーズ、ハムチーズが美味しかった。


 暫くして、出発した。

 山は思っていたより緩やかで、私自身見たことはあっても入ったことがなかったため、なんだか新鮮である。


「この山、何かあるんですか?」

「わからん。誰も入ろうとしなかったからな。……まあなんとかなるだろう」

「曖昧……」


 少し不安が積もりつつも、先に進む。

 緩やかなせいか、疲れが感じずらい。気を付けなければ。


「これって山越えないとダメなのか?こう……横から抜けるとか」

「出来たらそうしている。そもそも、横の道は公道だ。人と出会すかもわからん」

「そうなのか……」


 山の周り、一応公道は通っているが殆ど使われていない。が、もしものことを考えて山を越える選択をした。


「まあ限界のようなら私がおぶってやろう。心配するな魔王、落としたりはしない」

「やめてくれ……」

「その時は素直にお世話になりましょうね、魔王様」


 第9話

 山登り

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