第8話 首都を目指して
「さて、お気持ちどうあれ兵を引かせることには成功したが……」
「魔王様の方はどうでしょうか」
(大丈夫だ。こちらも完了した)
別れた場所で合流することとなり、それぞれ成果を告げる。
人間と魔族の兵は互いに引く運びとなった。
(これで停戦状態に出来た。この期間を利用して人間の首都を目指す)
「待て、このまま放置でいいのか?」
(あぁ、あくまで今回の目的は停戦状態にすることだ。終戦じゃない)
この場だけで終戦したところでな話ではあるか。
「それで、同じように飛んでいくのか?」
無事合流を果たした私達は、次の目的地、首都までの経路をどのようにするのか、考えることとなった。
「出来ればそうしたいんだが……如何せん目立ち過ぎる」
「空に魔王と勇者が浮かんでたら、そうなりますねぇ……」
「恐ろしいな、それは」
撃ち落とされかねん。別の方法を模索しよう。
「いや、どちらにしろ歩いているようじゃ時間が掛かりすぎる。途中までは飛んでいくしかないだろう」
「やはりそうなるか……」
「無難に目立たない範囲で、というのはどうでしょう」
「それなら首都近くに山がある。そこまで飛んでいくのはどうだろうか?」
首都から徒歩で4km程に結構な大きさの山がある。
4km歩くことになるが、まぁ許容範囲だろう。一時間程だろうか。
「そうだな、そこまで飛んでいこう。勇者、案内頼めるか?」
「任せろ」
「では勇者様、失礼します」
ひょいっと持ち上げられる。そんなに軽いのか、私は。
「途中で食事を挟もう、山までどれくらい掛かる?」
「飛んでいくなら……ふむ、三時間くらいか。さっきのペースで考えたらな」
「なら山に着き次第食事をしよう。腹が減ってはなんとやらだ」
「かしこまりました」
ふわっと浮いて、動き出す。
さあ出発だ。
ざっと、一時間程度、飛んでいた。
「ソフィ、俺が勇者を持とう」
「私は疲れていませんよ?」
「いや、もしもの事がある。余裕があるうちに代わっておこう」
「それもそうだな。ありがとうソフィ、魔王に代わってもらおう」
「かしこまりました」
空中での受け渡し。一旦地上に降りるのかと思っていたが、まさかの空中。
流石の勇者でも高所から落下すれば死に……いや死にはしないな。酷くて骨折程度か。
まぁでもちょっぴり怖い。
「ほら、勇者。手を取ってくれ」
「あ、あぁ」
「大丈夫です。私が支えてますから」
魔王が私の脇を掴み、ソフィが私の腰を掴む。
なんとも不安定な状態。私は魔王に抱きついた。
「ほら、早くしてくれ……」
「魔王様、どのような持ち方をなさるつもりで?」
「ん?勇者をこう……丸太を持つような」
「やめてください」
「流石に嫌だ」
なんつー持ち方するつもりだ。
「ほら魔王、優しく抱き抱えてくれよ?」
「なぁ、ほんとに横抱きじゃないとダメか?」
「ここまで来て何を迷うことがあるんですか。それとお姫様抱っこです」
「は、はぁ」
困惑する魔王。ソフィに散々言われ、仕方なしとお姫様抱っこする魔王。
「おぉ……」
安定感が凄い。
ソフィも勿論良かったが、やはり筋肉質の方が安定感は上だな。
がっしりすっぽり腕の中にハマっている。
「よろしく頼むぞ、魔王」
「あ、あぁ、任せろ」
「あぁ〜魔王様、落とさないか不安ですか?震えてますよ」
「え怖」
「大丈夫だ!」
山まで後二時間。生きて着くことができるのだろうか。
第8話
首都を目指して
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