第三話 ゛明日香゛
「もう、やんなっちゃう。」
通学中、朝のことをでむかむかしながら歩く。お姉ちゃんはいたずらはあってもあんな、私を本気で怒らせるような嘘は今までつかなかったのに。お母さんもお母さんだ。何であんな嘘に乗っかったのか。
「……でも、ちょっとあれは怒りすぎたかな。」
もしかしたら、ただお姉ちゃんが寝ぼけてお母さんの発言に違和感を持たずにああ言ったのかも、お母さんあんな器用な嘘つけないし、と考える。そうだ、少し考えればわかるだろう、そんなこと。
「あーあ、帰ったら謝んないと。」
自分の勘違いに思いっきり反省する。どう謝ろうかとまた考え込んでるときだった。
「おっはよー明日香!」
「お、おはよう、明日香ちゃん。今日も早いね。」
「ねえー明日香。あんたどーせ宿題おわってんでしょー?移させてよー。あたし終わってないんだよねー。」
「も、もう。夏美ちゃん、あんまり明日香ちゃんに頼っちゃダメだよ。そ、そもそも課題テストはどうするの。」
「あっはっは。雪はかったいなー!そんなの赤点にするに決まってんでしょー。」
「も、もう。そんなんじゃ留年させられちゃうよ。」
「だいじょーぶだいじょーぶ!」
唖然とする私を尻目に二人は会話をしている。まるで、それがいつものこと、いつもの日常であるように。なんだ、なんなんだ、一体。何が起こってるの?
「……あなたたち、誰?」
「は?」「えっ?」二人がぎょっとしたようにこちらを見る。そ、そんな心底驚いたような顔でこちらを見られても。
「あの、誰かと間違えてるんじゃない、ですか……?あなたたち確か一年生、だよね。私は二年生、だし、あなたたちと会ったことないし……」
彼女、夏美さんなら私も知ってる。たしかどこかの大会で優勝し、その柔道の腕が評価されうちに来たんだったはず。この前、部活の様子を見たが、自分より大きい高校生の男の先輩を一本背負いしていたのを覚えてる。もう一人の子は、ちょっとわかんない。私は後輩とは交流ほとんどないから。
「……何言ってんの、明日香。えっ、ホンキでいってんの?ねえ、雪。もしかしてマジのマジで明日香のそっくりさんの先輩なんじゃ……」
「そ、そんなことない、と思うけど……で、でも、世の中広いし、そんなことも、あったり……?それに、まだ入学して数か月だから、ま、まだ会ったことないだけかも……」
「たしかにね。あたしも先輩とは親しい人多いけど、全員は把握してないし。……ねえ、明日香。ほーんとうに、あんた明日香じゃないの。冗談とかじゃなくて?」
「う、うん。」
「……すんませんでしたー!!!」「ご、ごめんなさいっ!」
二人の少女は頭を思いっきり下げたあとに、何処かへ走っていった。
「私そっくりで同じ゛明日香゛という名前の後輩、か。」
本当にそんな事があるのだろうか。そんな話は聞いたことないが、もしかしたらあるのかも。あの子たち嘘を付くような子には見えなかったし。
「って、学校遅れちゃう!」
さっきのことが可也気になったまま、学校まで走っていった。
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