第二話 違和感
「おはよぅ~」
自分の部屋から出たあと、一階の両親に挨拶する。おはよう、とほんわか笑顔で答えた両親がいるリビングを素通りし、洗面所まで行き顔を洗う。私の両親は少々ほんわかしており、お人好し。THE.おしどり夫婦である。
「……ん?」
何か、違和感がある気がする。何だろう。じっと鏡を見つめる。……そういえば。
「なんかいつもより目線が低い気が……あと、顔が何か若返ってる……?」
いつもより何か小さいような気がするが、あまりさしたる違いはない。寝ぼけているのだろうともう一度顔を洗った。
★★★★★★★★★
「明日香ちゃん、こんな話聞いたことない?」
「ん?何?」
朝。食卓で朝ご飯を食べているとお母さんが声をかけてきた。ちなみにお姉ちゃんは勿論いない。いつもこうである。朝は弱いらしい。
「乗っ取り幽霊、っていうんだけど。」
「なにーオカルト話?名前からして、ドッペルゲンガー的な感じ?」
「それがねー、ちょっと違うの。乗っ取り幽霊はね……「おっはよー」あら、お姉ちゃん。起きたの。課題は終わったかしら?」
「いんや、途中から飽きて漫画読み始めてたら止まんなくなっていつの間にか寝てた。」
ケラケラと笑うお姉ちゃんにお母さんはもう、と腰に手を当てプリプリしている。相変わらず怒り方が可愛い。
それにしても、乗っ取り幽霊か。聞いたことないな。今日、京子ちゃんと優香ちゃんに聞いてみるか。ちなみに、京子と優香は私の友人二人である。
「ご馳走様でしたー。じゃ、行ってくるね~」
「あっ、明日香ちゃん、ちょっと待って。」
母は机においてあったラッピングされた袋を持ち、私に手渡した。
「これ、夏美ちゃんと雪ちゃんに渡してね。」
「えっ、誰?」
「ん……?明日香ちゃんのお友達二人よ?この前遊びに来てくれたじゃない。あれ、名前違ったかしら?」
「えっ、違うよ。名前は京子と優香。全然違うじゃない。」
母に向かって苦笑いする。人の名前を覚えるのが苦手とはいえ、ここまで間違えるものなのか。誰かと混合して覚えちゃったのかな。
「そうだったかしら……?でも、京子ちゃんと優香ちゃんじゃなかったような……」
「母さんがあってるよ。いっつも夏美ちゃん雪ちゃんって言ってんじゃねえか。」
寝ぼけてるんじゃね?と首を傾げお姉ちゃんが問いかける。それに少し苛立ちが募った。大切な友達を侮辱されたような気がしたのだ。
「何いってるの、私の友達は京子ちゃんと優香ちゃん!からかわないで!」
もう行く!と玄関まで走り、靴を履き替えるのもそこそこにバタン、と扉を閉めた。
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